第51話:【朗報】三大怪物の先鋒、ただの「鉄屑」だったので時価で買い叩いてみた件
次元の歪みと鉄の足音
世界の境界線を粉砕し,次元管理局の旗艦を別荘へと作り替えたアリシアの前に,大地を揺らす重厚な足音が響いた。全大陸連合軍の先鋒として現れたのは,教皇国が誇る最強の守護者「鉄血の枢機卿」であった。
彼は数千の重装歩兵を引き連れ,地平線を埋め尽くす鉄の壁となってアリシアの行く手を阻む。
「……理不尽の化身よ。我が名は枢機卿。神の秩序を乱すバグを排除するため,この命を鉄の盾と化して汝を討つ」
枢機卿がその巨大な盾を地面に突き立てると,周囲の空間が物理的に固定され,アリシアの移動を制限する絶対の領域が展開された。
伏線:鉄血の枢機卿の暗い過去
枢機卿がこれほどまでに強固な「秩序」に執着するのには理由があった。
彼はかつて,貧困にあえぐ教皇国のスラムで生まれた。両親は一切れのパンのために彼を教会へ売り飛ばし,彼は地下の実験場で「生体金属化」の被検体となった。 神経の一本一本にまで冷たい鉄を流し込まれ,痛みを感じる心さえも鋼鉄で塗り潰された少年。
彼にとって,世界とは常に弱者を踏みにじる混沌であり,それを止めるには誰にも壊されない「絶対的な硬度」が必要だった。 自分を捨てた親も,自分を改造した教会も,全てを鉄の中に閉じ込めることで,彼はようやく呼吸ができるようになったのである。
「秩序なき自由はただの害悪だ。汝のような理不尽を許せば,世界は再びあの泥濘へと戻る。ゆえに我は,汝というバグをこの鉄の檻に封印する」
枢機卿の声は,冷たい金属の擦れる音に似ていた。
物理的交渉:在庫処分の開始
アリシアは,目の前にそびえ立つ「鉄の壁」を退屈そうに眺めていた。
「……。…….長い。三行で言いなさいな。あと,そのお体。随分と錆びついているようですわね。中古のスクラップとしても,少々メンテナンス不足ですわ」
アリシアは考えるのをやめていた。彼女にとって,悲劇の過去を持つ守護者も,神の盾も,ただの「場所を取る不良在庫」に過ぎなかった。
「な……!? 我が魂の決意を,スクラップだと……!?」
「教育が必要ですわね。固執しすぎた鉄は,脆くなるのが理というものですのよ」
アリシアは右拳を無造作に突き出した。
ドォォォォォォォォォォォォンッ!!
それは,枢機卿が積み上げてきた絶望と鉄の信念を,原子レベルで粉砕する一撃であった。 絶対に壊れないはずの鉄血の装甲は,アリシアの放った圧倒的な質量圧の前に,ただの薄いアルミ箔のようにひしゃげ,地平線の彼方へと吹き飛ばされた。
決済:先鋒の買収完了
「ガ,ハッ……。バカな……。我の……我の秩序が……物理で,上書き……された……」
「……ふぅ。ようやく道が開けましたわ。お姉ちゃん(仮),あの鉄屑の塊,後で溶かして新しい『ティーセット』の材料にでもしましょうか?」
「お,お姉ちゃん……。教皇国の誇りが,一瞬で資源ゴミになっちゃったよ。設計図の『第一の敵対者』のページが,リサイクル完了って表示されてる……」
暴力は善である。 アリシアの理不尽な拳は,枢機卿の暗い過去ごと「鉄の盾」を粉砕し,大戦争の第一戦を強引に勝利(買収)で締めくくった。
だが,戦場には次なる影が忍び寄る。 空が不自然なほどに赤く染まり,大気が熱膨張で悲鳴を上げ始めた。
「あら。次は『暖房器具』の出番かしら?」
極悪令嬢の視線の先,紅蓮の炎を纏った「魔女」が,かつてない殺意を抱いて降臨しようとしていた。




