第47話:【朗報】「時の番人」が時間を戻そうとしたので,時間軸を『物理』で固定してみたw 過去に戻るのがめんどくさいので,今を全力で殴りつけるお嬢様www
焦げた全知と怒れる神
「全知の書」を焚き火の薪にして優雅にお茶を淹れていたアリシアの前に,空間が時計の歯車のように歪み,一人の老人が姿を現した.彼は世界の時間を司る「時の番人」であり,その顔は怒りで真っ赤に染まっていた.
「……おのれ,不遜なる令嬢め! 世界の知恵の結晶を燃やすとは何事か! もはや許さぬ.今の出来事を無かったことにするため,この世界の時間を一時間前まで巻き戻してくれようぞ!」
番人が巨大な砂時計を掲げると,周囲の景色が逆再生のビデオのようにブレ始めた.崩れた塔が修復され,燃えた本が元通りになろうとする.
「…….…….お姉ちゃん,大変だよ! 時間が戻ってる! このままだと,せっかく食べたスパイスの味も,塔を壊した爽快感も,全部リセットされちゃうよ!」
少女が自分の体が透けていくのを感じて叫ぶ.しかし,アリシアはティーカップを置くと,冷ややかな視線を番人に向けた.
「…….…….巻き戻し? まぁ,最近の若者(太古の神)は,どうしてこうも同じことを繰り返させるのが好きなのかしら.二度手間は淑女の敵ですわよ」
アリシアは考えるのをやめていた.彼女にとって過去に戻ることは,読み終わった退屈な本を無理やり最初から読まされるような,極めて不愉快な「理不尽」であった.
施工開始:時間軸への「釘打ち」
「くははは! 悔いても遅い! 時間の流れには逆らえぬ.さあ,一時間前の絶望に戻るが良い!」
「……長い.三行で言いなさいな.あと,その砂時計.うるさいので『固定』して差し上げますわ」
アリシアは右拳を,実体のない「時間の流れ」そのものに向けて構えた.彼女の周囲だけが,あまりの質量圧によって時間の逆行を拒絶し,現在に留まり続けている.
「お,お姉ちゃん,まさか時間を殴るつもりなの!? それは流石に無理だよ!」
「いいえ.流れているから戻されるのですわ.流れないように,わたくしが『固めて』しまえばよろしいだけですわね」
アリシアは,逆回転を始めた世界の歯車に向けて,渾身の正拳突きを叩き込んだ.
ドォォォォォォォォォォォォンッ!!
それは物理的な衝撃ではなく,今という瞬間を未来へ押し進める「圧倒的な前進の意志(暴力)」であった.アリシアの拳が空を打った瞬間,逆流していた時間はその衝撃に耐えきれず,悲鳴を上げて停止した.
決済:現在の確定
「な,な……バカな!? 時間が動かぬ……! 砂時計の砂が,空気中で静止しているだと……!? 物理的な圧力で,概念である時間軸をねじ伏せたというのか……ッ!!」
番人が驚愕する中,アリシアは動かなくなった砂時計を指先で軽く「ピンッ」と弾いた.すると,砂時計は粉々に砕け散り,世界は再び正しい順序で動き出した.ただし,「一時間前」ではなく「現在の続き」としてである.
「……ふぅ.ようやく静かになりましたわ.時間は巻き戻すものではなく,拳で切り拓くものですのよ」
「……あ.お姉ちゃん,時間が『壊れちゃった』みたいだけど,なんとか今に戻ってこれたみたい.全知の書は……うん,やっぱり炭のままだね」
暴力は善. アリシアの理不尽なまでの前進の拳は,ついには過去への退行すらも許さず,世界を強引に「現在」へと固定してしまったのである.
「さて,番人さん.お喋りの時間は終わりですわ.わたくしを退屈させた罪,その身で購いなさいな」
アリシアは怯える時の番人を「砂時計の代わり」として逆さまに地面に埋めると,再び優雅にお茶の続きを楽しみ始めた.




