第46話:【朗報】食後の運動に「天空の塔」を登ってみたw 階段が長すぎるので、塔ごと「ダルマ落とし」にして頂上を引き寄せたお嬢様www
天を衝くバベルの塔
地底で地球をシェイクし,至高のスパイスを手に入れたアリシアたちは,食後の腹ごなしとして世界の中心にそびえ立つ伝説の「天空の塔」へと辿り着いた.九千九百九十九階を誇るその塔は,頂上に至れば「世界の全知」を得られるとされる聖地である.
「…….…….お姉ちゃん,ここが伝説の塔だよ.でも,設計図によると頂上まで行くには一段ずつ階段を登らなきゃいけなくて,普通の人間だと一生かかっても辿り着けないんだって」
少女が塔の入り口に刻まれた気の遠くなるような「登頂規則」を読み上げ,絶望的な溜息をつく.しかし,アリシアは見上げるのも億劫なその高層建築物を,不快そうに睨みつけた.
「…….…….階段? エレベーターもエスカレーターもないのですか? 最近の若者(神話時代の建築家)は,客人の足腰にかかる負担というものを全く考えておりませんわね」
アリシアは考えるのをやめていた.彼女にとって「高い場所にある目的地」とは,単に「重力に甘えている生意気な存在」に過ぎなかった.
守護者:階層の門番
「止まれ,不遜なる令嬢よ! 我はこの塔の一階を守護する鋼鉄の騎士.頂上を目指すならば,九千九百九十九の試練を一つずつ乗り越え,己の魂を磨くが――」
「長い.三行で言いなさいな.あと,わたくし,上まで行くのがめんどくさくなりましたわ」
アリシアは門番の言葉を遮り,塔の土台部分を品定めするように軽く叩いた.
「な……!? 試練をめんどくさいだと!? 貴様,この塔の神聖なる歴史を――」
「教育が必要ですわね.歴史とは,常に『短縮』されるためにあるものですのよ」
施工開始:物理による「ダルマ落とし」
アリシアは塔の二階部分に右拳を構えた.彼女の狙いは,一段ずつ登ることではなく,邪魔な階層を全て「排除」することであった.
「お,お姉ちゃん,何をするつもり!? その構え,まさか……!」
「ええ.一段ずつ登るのが面倒なら,頂上の方からわたくしの元へ『降りて』来ればよろしいのですわ」
アリシアの全身から,大気を歪ませるほどの質量圧が放たれる.
「淑女を歩かせる罪,その身で購いなさいな.……一気に参りますわよ! **『極悪流・高速ダルマ落とし』**ですわ!!」
ドォォォォォォォォォォォォンッ!!
アリシアの放った超音速の水平打ちが,塔の二階部分を一瞬で木っ端微塵に粉砕し,地平線の彼方へと吹き飛ばした.そのままの勢いで,彼女は三階,四階,五階……と,目にも止まらぬ連続攻撃で「下の階」だけを次々と抜き取っていく.
決済:頂上との対面
「ひぃぃぃぃっ!? 塔が……塔がどんどん沈んでいくよぉぉぉっ!!」
少女が叫ぶ中,天空の塔は一段叩き出されるたびに「ズドン! ズドン!」と重厚な音を立てて垂直に落下し続けた.数万の魔物や仕掛けが詰まっていたはずの階層は,戦う間もなくアリシアの拳によって「不要な余白」として処理され,大気の塵へと変わっていく.
わずか数分後. かつて天を衝いていた塔は影も形もなく,地面には九千九百九十九階だったはずの「頂上の間」だけが,まるでもともとそこにあったかのように鎮座していた.
「……ふぅ.ほら,一段も登らずに到着いたしましたわ.なんて効率的な登山かしら」
アリシアは,衝撃で腰を抜かしている頂上の守護者(全知の賢者)の頭を優雅に踏みつけ,祭壇に置かれた「世界の全知」という名の古文書を手に取った.
「……あ.お姉ちゃん,神様が一生懸命作った塔が,ただの『平屋』になっちゃったよ……」
「あら,お掃除の手間が省けてよろしいではありませんこと.暴力は善――やはり,高いところにあるものは,叩いて降ろすのが一番ですわね」
アリシアは全知の書を一瞥したが,「文字が多い」という理由で即座に薪代わりに火に投げ込み,優雅にティータイムの準備を始めた. 極悪令嬢の辞書に「努力」という文字はない.ただ「物理による結果」だけが,彼女の歩む道を更地へと変えていくのである.




