第35話:【朗報】海を渡るのに船は不要w 巨大海獣を「水上タクシー」に任命して、最短ルートで進撃してみたwww
港町:船出の交渉(物理)
女王の座を投げ捨て、身軽なプー太郎となったアリシア。彼女が次なる目的地として定めたのは、未知の資源と「分からせがい」のある強者がひしめくと噂の新大陸でした。 しかし、港に辿り着いた彼女を待っていたのは、絶望に暮れる船乗りたちの嘆きでした。
「お、お嬢さん、悪いことは言わねぇ。今は船を出せねぇんだ。近海に伝説の巨大海獣『リヴァイアサン』が現れて、近づく船を片っ端から海の藻屑にしちまってるんだよ」
船乗りたちの言葉は、海に生きる者としての切実な警告でした。至極真っ当な、生存のための判断です。 しかし、アリシアは考えるのをやめていました。
「……伝説の海獣? あら、それは素敵。わざわざ船をチャーターする手間が省けましたわ」
「は? 何を言って……おい、お嬢さん! どこへ行くんだ!」
アリシアは静止する声を無視し、ドレスの裾を優雅に持ち上げると、そのまま海面へと向かって歩き出しました。
海上:巨大タクシーとの遭遇
「……。……。お姉ちゃん、海の上、歩いてるよ? これ、魔法だよね? 浮遊魔法だよね?」
少女が銀の箱を抱えながら、物理法則の崩壊に必死の解釈を試みます。しかし、アリシアにそんな高等な技術はありません。ただ、彼女の放つ威圧感に気圧された海水が、沈むことすら忘れて彼女を支えているだけでした。
すると、海面が大きく盛り上がり、山のような巨体を持つ漆黒の海獣が姿を現しました。数千の牙を並べ、一吠えで嵐を呼ぶとされる、海の支配者。
「グオォォォォォォォンッ!!」
リヴァイアサンが、ちっぽけな人間を飲み込もうと巨大な口を開きます。しかし、アリシアは驚くどころか、感心したように頷きました。
「あら。最近の若者(数千歳)は、自分からお迎えに来てくださるなんて、とっても教育が行き届いていますのね」
教育:海の王への「乗り方」指導
「お、お姉ちゃん! 食べられちゃうよ! 逃げようよ!」
「逃げる? いいえ、これは『試乗会』ですわ」
アリシアは、リヴァイアサンの鼻先に向けて、音速を超えた右掌底を叩き込みました。
ドォォォォォォォォンッ!!
衝撃波で周囲の海面が数キロにわたって陥没し、海の支配者と呼ばれた巨獣の意識が、一瞬で彼方へと飛び去りました。
「……。……。全く。挨拶の途中で口を開けるなんて、礼儀がなっていませんわ。もっと淑女を敬う姿勢を、その脳髄に刻み込みなさいな」
アリシアは、気絶してプカプカと浮き上がったリヴァイアサンの背中に、優雅に飛び乗りました。そして、その巨大な角を「ハンドル」代わりに握りしめます。
「さて、新大陸はあちらかしら? ……あら、まだ寝ぼけていらっしゃるの? ならば、もう少し『刺激』が必要かしらね」
アリシアがリヴァイアサンの背中を軽く(地殻が揺れる程度に)蹴り上げると、海獣は恐怖のあまり覚醒。本能的に「この女に逆らえば死ぬ」と理解し、凄まじい速度で新大陸の方角へと泳ぎ始めました。
到着:新大陸の衝撃
「お姉ちゃん……。リヴァイアサン、泣きながら泳いでるよ。時速三百キロくらい出てるよ……」
「ふふ、心地よい潮風ですわね。暴力は善――乗り物との『相互理解』も、やはり拳一つで解決するものですのね」
数時間後。本来なら数ヶ月かかる航路を、アリシアは半日で踏破しました。 前方に広がる未開の原生林と、巨大なピラミッドが立ち並ぶ新大陸。
浜辺では、上陸しようとする巨大な怪物を迎え撃とうと、新大陸の戦士たちが槍を構えて待ち構えていました。
「な、なんだあの怪物は! 伝説の神が怒っておられるのか!?」
「いいえ。わたくし、ただの通りすがりの『観光客(買収担当)』ですわ」
アリシアは、乗り捨てたリヴァイアサンを海へと(蹴りで)帰してあげると、返り血の代わりに海水で少し湿ったドレスを整え、新大陸の土を踏みしめました。
「さあ、最近の若者(新大陸の住民)の皆様。わたくしの『ご挨拶』、誰から受けてくださるかしら?」
極悪令嬢の「お買い物旅行」、舞台はついに新世界へ。




