第33話:「理不尽」を全て買い叩いた結果w 世界が静か(平和)になりすぎて、もう殴るものがない件www
【新・世界都:玉座の間】
大陸全土を「決済(物理)」し、文字通り世界を手中に収めたアリシア。 彼女は今、かつて自分を裏切った十数人の王や教皇を縦横に積み重ねて作った「究極の多目的人間ソファ」に深く腰掛け、退屈そうに空を眺めていた。
「……ねえ、お姉ちゃん。もう、世界中どこに行っても戦いがないよ。お姉ちゃんが『理不尽なお店』や『意地悪な役所』を全部更地にしちゃったから」
銀の箱――今や金貨一万枚どころか、世界の全財産が詰まった宝箱を抱えた少女が、不思議そうに呟いた。 そう、アリシアは考えるのをやめていたがゆえに、自覚がない。 彼女が「気に入らない」と殴り飛ばしてきたのは、常に弱者を虐げる特権階級であり、不透明な重税であり、差別的な慣習であった。
彼女が「買い物(侵攻)」をするたびに、その地域の汚職は根絶され、独裁者は「椅子」へと再就職し、民衆には「静寂(平和)」が訪れたのだ。
【最後の対話:世界の理へ】
「……。……。退屈ですわ。最近の若者(世界そのもの)は、少しわたくしが『教育』しただけで、すぐに大人しくなってしまいますのね」
アリシアが立ち上がると、足元の「王様ソファ」が悲鳴を上げて震えた。 彼女は、窓の外に広がる広大な空を見据えた。そこには、まだ一つだけ、彼女の気に入らない「理不尽」が残っていた。
それは、運命だの、天命だの、神だのと称される、この世を縛る「見えないルール(理)」。
「お姉ちゃん……空を見て、何をしようとしてるの?」
「……お喋りですわ。わたくしを『無能』と設定し、母を奪い、世界に悲劇を撒き散らした……その『作者』とやらを、一度しっかりと分からせてあげなければなりませんもの」
【究極の一撃:無意識の神殺し】
神などいない。天の使いも、奇跡の代行者も。 ただそこにあるのは、強者が弱者を喰らい、不条理がまかり通る酷い「世界のシステム」だけ。
アリシアは、その空に向かって、全財産(一万枚の金貨)の重みを乗せた右拳を、静かに引き絞った。 もはや、そこに怒りはない。ただの「お掃除」だ。
「……理不尽は、わたくしが全て買い叩きましたわ。お釣りは――その身で受け取りなさいな!!」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!
世界が白く染まった。 魔力も、神の奇跡も介さない、純粋な「質量と殺意」の爆発。 その衝撃波は雲を裂き、大気を割り、概念的な「世界の壁」さえも粉砕した。 不治の病をもたらす瘴気が消え、大地を枯らす呪いが解け、理不尽な天災さえもがアリシアの拳に恐怖して雲散霧消していった。
【エピローグ:暴力の後の、穏やかな朝】
数日後。 エングラム王国の王都(現在はアリシアの別荘)の庭園で、アリシアは穏やかに紅茶を啜っていた。 彼女の足元には、すっかり丸くなった「元国王(父)」が足置きとして静かに控えている。
「お姉ちゃん、見て! お花がすっごく綺麗に咲いてるよ。もう、変な魔物も出ないし、みんな笑ってる」
「……ふふ。当然ですわ。わたくしが『高いお買い物』をしたのですもの。品質管理は徹底させなくてはなりませんわね」
アリシアは、返り血一つない純白のドレスを揺らしながら微笑んだ。 彼女が救世主と呼ばれようが、破壊神と恐れられようが、彼女自身にはどうでもいいことだった。
ただ、気に入らないものを殴り、欲しいものを買い叩く。 その結果として、世界から「理不尽」が絶滅し、誰もが彼女の顔色を伺って(=平和に)暮らすようになっただけ。
「暴力は、やはり『善』でしたわね。お母様」
彼女は空を見上げ、満足げに目を細めた。 そこにはもう、彼女を縛る運命も、無能と蔑む声も、何一つ存在しなかった。 ただ、どこまでも青く、静かな「彼女の私物」となった世界が広がっているだけだった。




