第28話:【悲報】パッパの正論が「物理」に負けた件w 「対話」を求めてるのに、周りがドン引きしてるのは何故かしら?www
【王宮:冷え切った玉座の間】
玉座に座る国王――エングラム王は、足元に散らばった金貨を見下ろし、鼻で笑った。その瞳には、実の娘に対する愛情など欠片もなく、ただ「無能な装置」を見るような冷酷な軽蔑だけが宿っている。
「……アリシア。貴様、本気で言っているのか? 金貨一万枚でこの国を買うだと?」
国王は組んでいた脚を組み替え、傲慢な態度で言葉を継いだ。
「いいか、よく聞け。このエングラム王国の年間予算、そして近隣諸国との貿易規模、さらには騎士団の維持費……。金貨一万枚など、地方の一都市を数ヶ月維持するのが関の山だ。ましてや、魔力も持たぬ、政治のいろはも知らぬ『女』の貴様に、国を動かす道理など一ミリも存在せぬ。算数すらできぬとは、やはり無能はどこまで行っても無能だな」
それは、あまりにも正論であった。 経済的にも、政治的にも、一万枚で国を買うなどという話は、子供の寝言ですらない。国王の言葉は、冷徹な「事実」として広間に響き渡った。
【対話の断絶:暴力という名の新算術】
アリシアは、国王の「正論」を最後まで黙って聞いていた。 かつての彼女であれば、その言葉の重みに膝をつき、自分の無知を恥じたかもしれない。だが、今の彼女は違う。
――アリシアは、考えるのをやめていた。
「……お父様。貴方のおっしゃることは、とても正しいですわ。ええ、ぐうの音も出ないほどの正論です」
アリシアは、穏やかに微笑んだ。だが、その瞳には知性の光ではなく、どろりとした「暴力という名の真理」だけが淀んでいる。
「ですが、お父様。貴方の『言葉』は、あまりにも情報量が少なすぎますわ。わたくしたち、もっと――濃密な対話をすべきですわよね?」
【強制対話:わたくしの正論】
「対話……? 貴様に、この論理的な矛盾を解消する術があるとでも――」
国王が言い切るより先に、アリシアの右拳が「対話(物理)」を開始した。
ドォォォォォォォォンッ!!
衝撃波が玉座の間を貫き、国王の耳元をかすめて背後の巨大な壁に、直径五メートルの風穴を穿った。 王宮全体が地震のような揺れに襲われ、高官たちは悲鳴を上げて床に這いつくばる。
「……あら、お父様。今、私の拳から『国を想う熱量』が伝わりませんでしたか? これこそが、最高に効率的で、嘘のない、究極のコミュニケーションですわ」
アリシアは不思議そうに首を傾げた。彼女の脳内では、すでに「殴打=深い相互理解」という数式が完成している。
「な、何を……何を言っている!? 狂ったかアリシア! 壁を壊して何が対話だ、これはただの破壊だ!」
国王が絶叫する。しかし、アリシアは心底驚いたような顔をした。
「破壊? 心外ですわ。わたくし、こんなに『誠実』に語りかけていますのに……。お父様、もしかして、少しコミュニケーション能力が欠けていらっしゃるのかしら? 周りの皆様も、なぜそんなに震えていらっしゃるの? 恥ずかしがり屋さんですわね」
【断絶:まともな人々vs脳筋令嬢】
周囲は地獄絵図であった。 粉砕された壁から吹き込む風、血の気の引いた高官たちの嗚咽。少女すら、銀の箱を抱えたまま引きつった笑顔で固まっている。 アリシアだけが、その惨状の中で一人、ティータイムのような優雅さを保っていた。
「さあ、お父様。わたくしの『暴力という名の正論』に対し、何か反論はありますこと? 黙っているのは、わたくしの意見に100%同意してくださった証拠ですわよね?」
「ち、違う! 物理的に喋れないだけだ! 殺気で喉が――」
「あら、また冗談を。お父様って、意外とお茶目ですのね」
アリシアは考えるのをやめているため、国王の「恐怖による沈黙」を、すべて「納得の沈黙」へとポジティブに変換していた。 彼女は、ガタガタと震える国王の襟首を掴み上げ、床に優しく(石床が砕ける程度の力で)叩きつけた。
「……あ。お姉ちゃん、おじさん白目向いてるよ? 対話、終わっちゃったんじゃないかな……?」
「いいえ。これは『深い沈思黙考』に入られただけですわ。……ねえ、皆様もそう思いますわよね?」
アリシアが周囲を見渡すと、高官たちは一斉に「その通りです!」「女王陛下の対話は完璧です!」と、命惜しさに正気を捨てて叫んだ。
「……ふふ、嬉しいですわ。ようやく、この国に『理解し合える仲間』が増えましたのね。やっぱり、暴力は善――いえ、最高の言語ですわ!!」




