第15話:【朗報】拾った幼女を「運び屋」に任命w 思考停止した令嬢、宝箱(ガワ)を担いで堂々の帰還www
【目覚め:深淵からの問いかけ】
黄金の宝箱の中で、少女がゆっくりと瞼を持ち上げた。その瞳は夜空のように深く、一点の曇りもない。彼女は目の前に立つ、血まみれで泥だらけの「怪物」――アリシアを見上げ、鈴を転がすような声で問いかけた。
「……貴女が、私を呼んだの? この世界は、まだ悲しみに満ちているのかしら。真理とは、救いとは……どこにあるの?」
あまりに哲学的で、あまりに重苦しい問い。かつてのアリシアであれば、王立図書館の文献を引用して高説を垂れたかもしれない。だが、今の彼女は違う。
【真理の終着:考えるのをやめた】
アリシアは、返り血を拭いもせずに少女を見下ろした。その瞳には知性の光が宿っているようでいて、その実、深淵よりも深い「空虚」が横たわっている。
「……真理? 救い? ああ、そんなものは拳の中にしかありませんわ。理屈をこねてもお腹は膨れませんし、裏切りは止まりませんもの。殴る。壊す。それが唯一の正解。それ以外、考える必要なんてなくてよ」
アリシアの脳細胞は、もはや「暴力」という単一の演算回路に特化していた。 複雑な政治も、倫理も、母の愛さえも、すべては「正義の暴力」という結論に集束する。
――アリシアは考えるのをやめた。
宇宙の真理も、少女の正体も、明日の献立も、もはやどうでもいい。ただ「目の前にある高そうな箱を持ち帰り、金に換える」という本能的な欲求のみが、彼女を突き動かしていた。
【脱出の準備:実利的な役割分担】
アリシアは、混乱する少女の返答を待たず、幾何学模様の刻まれた脱出用台座を見つけ出した。
「さあ、帰りますわよ。モタモタしていては、箱の相場が下がってしまいますわ」
彼女は、少女が寝ていた巨大な黄金の宝箱を、異常な膂力でヒョイと肩に担ぎ上げた。そして、地面に転がっていたもう一方の「紙切れ入りの銀の宝箱」を顎で指す。
「貴女、それを持って歩きなさい。私の獲物にタダ乗りは許しませんわよ。ほら、手招きしていますわ。早く来なさいな」
少女は唖然としながらも、自分より一回り大きい銀の箱を小さな腕で抱え、アリシアの後を追った。血まみれの元令嬢と、宝箱を抱えた幼女。シュール極まりない二人組が、光り輝く台座の上に並び立つ。
【帰還:伝説の幕開け】
台座が激しい魔力光を放ち、二人の身体を包み込む。 暗かった視界が一気に開け、懐かしい(といっても数日ぶりだが)外の空気が肺を満たした。
その瞬間、アリシアの脳内――あるいは、この世界のシステムそのものに、場違いなほど巨大な文字が浮かび上がった。
ダンジョンクリア
それは、一人の無能と蔑まれた令嬢が、暴力という名の真理を掴み取り、世界を再定義し始めた狼煙であった。
アリシアは、肩に担いだ黄金の箱の重みを感じながら、夕日に照らされた荒野を、満面の笑みで歩き出した。




