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第12話:【悲報】ダンジョンボスが魔法も使うハイブリッド種だった件w 物理で語り合おうとしたらボコボコにされたwww

【最深部:魔の玉座】


アリシアは、血と脂にまみれた手で、禍々しい巨大な扉を押し開けた。 きしんだ金属音が鳴り響き、封印されていた最深部の空気が解き放たれる。そこは、これまでの階層とは比較にならないほど濃密な、紫色の魔力霧が渦巻く空間であった。


その中心。魔力の奔流が渦を巻く玉座に、それは鎮座していた。 ゴブリンの突然変異種、あるいは魔界の尖兵――オーガ。 だが、通常の生態系に存在するそれとは決定的に異なっていた。このダンジョンの異常な魔力を全身に浴び続けた結果、その肉体は通常の三倍以上に膨れ上がり、岩のような筋肉の下では血管の代わりに魔力光が脈動している。 単なる物理的な脅威ではない。魔導の力さえも併せ持つ、迷宮の王。


オーガは、侵入者が泥と血にまみれた小さな人間の雌であることに気づくと、退屈そうに鼻を鳴らした。 その眼差しは、アリシアを敵として見ていない。これから踏み潰す虫けらを見る目であった。


「……良い面構えですわね」


アリシアは、オーガの圧倒的な威圧感を前にしても、口角を吊り上げたままであった。 彼女にとって、相手が強大であることは絶望の理由にはならない。自分の「暴力」を試すための、最高の試金石でしかないのだ。


【対話の拒絶:魔法という理不尽】


アリシアは地面を蹴った。 泥を爆ぜさせ、一直線にオーガの懐へと飛び込む。狙うは鳩尾。渾身の右拳を叩き込む。


―刹那、世界から音が消失し、ただ重厚な「質量」の衝突のみが空間を支配した。 肉が拉げ、骨が軋み、大気が断末魔の叫びを上げるような、臓腑の奥底を直接揺さぶる重圧。音節を持たぬその衝撃は、地脈を震わせ、オーガの巨体を内側から粉砕せんとする物理的暴力の結晶であった。


だが、オーガは数歩後退しただけであった。 インパクトの瞬間、オーガの皮膚が岩石のように硬質化し、物理的な衝撃の大半を無効化したのである。土属性の硬化魔法。


オーガは、自分の腹を殴ったアリシアを鬱陶しそうに見下ろすと、丸太のような腕を無造作に振り下ろした。 アリシアは腕を交差させて防御するが、その衝撃は人間の規格を遥かに超えていた。


「ガッ、ハ……ッ!?」


アリシアの身体がボールのように吹き飛び、石壁に激突する。背骨がきしむ音が体内で響いた。 息つく暇もなく、オーガが掌を向ける。そこから放たれたのは、圧縮された火炎弾であった。 回避は間に合わない。直撃を受けたアリシアの身体が紅蓮の炎に包まれる。


物理的な膂力と、理不尽な魔法のコンビネーション。 魔力を持たぬ者が、決して超えられない壁がそこにあった。


【不屈の証明:拳で語れ】


だが。 炎が晴れた後、そこにはまだ立っているアリシアの姿があった。 軍服は焼け焦げ、肌はただれ、口の端からは大量の血が流れ出ている。常人ならば五回は死んでいるであろうダメージ。


それでも、彼女の瞳から光は消えていなかった。


「……ふふっ。痛いですわね。ええ、とても痛い」


彼女は血を吐き捨て、ふらつく足取りで再びオーガへと歩み寄る。 オーガの表情に、初めて焦燥の色が浮かんだ。なぜ死なない。なぜ心が折れない。


「魔法……? そんな、触れることもできない光遊びで、私と対話した気になっているのですか?」


アリシアは、自らの拳を握りしめた。骨が砕けているのか、握り込むだけで激痛が走る。だが、そんなことはどうでもいい。


「対話というのは、こういうことですのよ……ッ!!」


【野獣の流儀:なりふり構わず】


再びの突撃。オーガが迎撃の雷撃魔法を放つが、アリシアはそれを肉体で受け止めながら、強引に距離を詰めた。 拳を振るう力は、もう残っていないかもしれない。 ならば、どうするか。


アリシアは、オーガの太い腕にしがみついた。


「拳で語れぬというのなら――ッ!」


彼女は躊躇なく、自らの額を、オーガの硬化した顔面へと叩きつけた。


――骨が砕け散る鈍い衝撃。アリシア自身の額が裂け、鮮血が視界を赤く塗り潰す。だが、その激痛さえもが今の彼女にとっては、己が存在を証明する唯一の熱量であった。


アリシア自身の額が割れ、鮮血が視界を覆う。だが、オーガも予期せぬ原始的な攻撃にたたらを踏んだ。 ひるんだ隙を見逃さない。


「使えるもの、全てを使って、分からせて差し上げますわ!!」


アリシアは、淑女の仮面どころか、人間としての矜持さえもかなぐり捨てた。 彼女は大きく口を開けると、オーガの首筋――魔力が脈動する太い血管へと、その歯を食い込ませたのである。


硬質な皮膚が悲鳴を上げ、牙が強靭な筋肉の繊維を一つずつ、無慈悲に断ち切っていく。生暖かい、鉄の臭いと魔力の熱を孕んだドロりとした血液が、彼女の口内に奔流となって溢れ出した。


「――ッ!!!」


オーガは、恐怖に近い衝撃に全身を硬直させた。 首筋に刻まれたのは、ただの傷ではない。魔力が脈動する大血管が、野蛮な咀嚼によって無残に引き裂かれ、そこから迷宮の加護が鮮血と共に噴き出していく。


ブチブチ、ブチリッ!と、肉と神経が引き千切られる濡れた音が静寂の最深部に響き渡る。アリシアは溢れ出す「王の血」を飲み込みながら、さらに深く、骨に届かんとする勢いで顎に力を込めた。


「ギィ、アアアアアアアッ!?!?」


迷宮の王の絶叫が、最深部に木霊した。 それは、魔力なき者が、魔力を持つ者へ突きつけた、最も野蛮で、最も純粋な「暴力」の宣戦布告であった。

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