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第10話:【朗報】マッマの言葉、ガチの教育だった件w 「暴力は善」とかいう最高のアドバイスwww

【宿屋:強欲の対価】


同時刻。アリシアが泊まっていた宿屋の奥まった一室。 主人は、奪い取った数枚の銅貨を、薄汚れたテーブルの上に並べて鼻で笑った。


「見ろよ、あの女。これっぽっちしか持ってやがらねえ。しょっぺぇったらありゃしねえな」


だが、それを聞いた妻は、血の気が引いた顔で夫を睨みつけた。


「……アンタ、なんてことをしたのよ!!」


「あぁ!? なんだよ、たかが浮浪者一人の金じゃねえか」


主人が逆上して怒鳴り散らすが、妻の震えは止まらない。彼女は夫の腕を掴み、窓の外へと連れて行った。そこに見えるのは、アリシアがこの宿に辿り着くまでに通ってきた一本道であった。


【路地裏:静寂の惨状】


同じく同時刻、街の路地裏。 そこには、先ほどまで女を犯そうと息巻いていた野盗たちの無惨な姿があった。 ある者は白目を剥いて気絶し、ある者は壁のレンガに深く突き刺さり、折れた骨が奇妙な方向に曲がっている。


「……死ぬかと、思った……」


辛うじて意識のある一人が、ガチガチと歯を鳴らしながら呟いた。


【境界の森:本能の警告】


同じく同時刻、森の中。 一匹のゴブリンが、草むらの中でガタガタと震えていた。後から来た仲間が、その様子を見て馬鹿にするように笑い声を上げる。 だが、震えるゴブリンは、虚ろな目で仲間を見返した。


「.........お前は、何も知らないんだな……。」


【母の遺した真実】


七歳の検定後、絶望の淵にいたアリシアの枕元で、母は穏やかに、しかし重い事実を告げた。


「……いい、アリシア。貴女には魔力が一切ないけれど、その分、ちからが強く生まれすぎてしまったみたいね」


母の細い手が、アリシアの小さな拳を包み込む。


「暴力は、決して褒められたことではないわ。でもね、本当に何かを守りたいとき、そのための暴力は――『善』なのよ」


その言葉が、霧が晴れるようにアリシアの脳裏に鮮明に蘇った。 母は知っていたのだ。アリシアに宿る、魔力という器に収まりきらなかった「異常な膂力」の正体を。


【化け物の証明】


宿屋の主人が、妻に見せられた破壊の痕跡に腰を抜かし、手の中の銅貨を震え落とし。 路地裏で壁に埋まった野盗が、二度と戻らぬ安寧を思って恐怖に涙を流し。 森のゴブリンが、死の気配を察知して仲間に向かって悲痛な警告を発する。


その声は重なり、一つの結論を導き出した。


「「「あの女は――化け物だ」」」


【溝の底:極悪の目覚め】


ダンジョンの溝の底。 アリシアはゆっくりと立ち上がった。迫りくる魔獣の群れを前に、彼女の口角は吊り上がり、これ以上ないほど屈託の無い、純粋な笑顔が浮かぶ。


「……思い出しましたわ、お母様」


アリシアは最短距離で踏み込み、先頭の魔獣の頭蓋に、泥まみれの拳を真っ向から叩き込んだ。 魔獣の頭は完熟した果実のように破裂し、中身が岩壁を赤く染める。


「暴力は、善なんですわね」


返り血を浴びながら、彼女は楽しげに笑う。 殴殺。ただそれだけの行為を繰り返しながら、彼女は自分を追い詰めたはずの「餌」たちを、一匹残らず肉片へと変えていく。 そこには令嬢の気品も、無能の悲哀もない。 ただ、母の教えを忠実に守り、自分いのちを守るために暴力を振るう、「最強」の怪物が誕生した瞬間であった。

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