表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GateFragments  作者: 悠蛹
第1巻 Angelblood―血の支配―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/26

Angelblood 第3章後編【門】

Angelblood完結記念コンテスト開催!

2025.12.15〜2026.01.31


Xのポストにて詳細をご確認ください。

悠蛹(@snghrk2414)

「ファルム、後ろに下がって」

 デプラはファルムを庇うように、追手——ミレルの前に立つ。

「いや……!」

 ファルムの顔からは血の気が引き、怯えるように肩を抱き尻餅をついた。

 彼らは皆、人の姿をしているが、話が通じる様子ではない。

 影が動き出し、素早く二人に近づく。

 デプラはナイフを構え、複数体へ投げる。

 命中——しかし、動きが鈍ることはなく、距離を詰められる。

「痛みを感じないのか?!」

 デプラは、さらにナイフを撃ち込む。刃が刺さった箇所からは、紫色に濁った体液が流れている。

 デプラがベルトを確認すると、ナイフが底をつこうとしていた。

 布を纏った集団は、動きの止まった彼をすり抜け、ファルムを狙う。

 デプラは急いでナイフを投げるが、追手の腕がファルムの肩に触れる。


「デプラ!」

 男の声——それと同時に、ファルムに触れていたミレルの腕が飛ぶ。


「コルヴ!」

 白髪を無造作に頭の後ろでまとめ、外套で全身を覆った男。

 コルヴは、デプラとの活動中には使用していなかった大振りの剣を携えている。

 斬られた者の周りに、ミレルの一人が近づく。懐から取り出した針を、切断された腕に躊躇なく刺した。

 持ち手は筒状になっており、青い液体が波打ちながら注ぎ込まれていく。

 刺された男の腕の断面が青黒く泡立ち、見る間に腕が元通りに生える。


「なんだあれは!」

 デプラが声を上げる。

「ミレル」

 コルヴの低い声が静かに響く。

「ドラヴィエル公爵の命令で天使狩りをする部隊」

 コルヴはミレルと呼んだ集団から目を逸らさず、デプラに話す。

「天使の血と洗脳によって、ドラヴィエルの命令のまま天使を襲い、奪う」

 コルヴは剣を握る手に力を込める。


「……こうなる前から、俺たちは化け物だったがな」


 ミレルが一斉に動き出す。

 コルヴが次々と襲い来るミレルを斬り伏せながら話す。

「こいつらは完全に単独では行動しない。俺が抑えるから、お前らは逃げろ!」

「俺も戦う!」

 デプラは残り僅かとなったナイフで、コルヴを援護しながら叫ぶ。


「これは俺の戦いだ……それに、お前には殺させない!」

 コルヴは一瞬、デプラの目を見る。


「お前の目的を果たせ!」

 複数のミレルがコルヴに襲いかかる。

 コルヴは一体の首を切り離すが、即座に別のミレルが首元に血を打つ。

 切断面から血が蔦のように伸び、首と胴体を繋ぎ止める。

 デプラはファルムを促し、森の奥へと走り出す。

 コルヴはデプラを一瞥し、ミレルへ向き直る。


「俺たちの過ちを……ここで終わらせよう」

 コルヴは再び青黒い刃を振るい、金色の軌跡が伸びる。

 

 ***


 二人は走った。

 息を切らしながら辿り着いた先は、柔らかな光が降り注ぐ花畑だった。

 かつて、ファルムとデプラが出会った場所に似た、神聖さと不気味さを孕む白い花々。

「この森にもこんな場所が——」

 

 空気が揺らぐ。

 空間が裂け、世界に穴が開く。


「門……」

 二人は門へと近づいていく。

 闇——門の輪郭は光を帯び、周囲へその輝きを拡散させている。それなのに、門の先は何も見えず、何も無い。

「ファルム……」

 デプラはファルムの瞳を見つめる。

 ファルムは不安そうにデプラを見つめ返す。


「……帰るんだ」

 デプラは穏やかに言う。彼はもう、迷ってはいなかった。

 ファルムを門の先へ送る。

 それが自分の望みであり、ファルムにとって最善の選択だと信じていた。

〈門の先が見えずとも、この世界——天使が人間の欲望に晒され、奪われるだけの場所に……彼女は居るべきじゃない〉

 

 ファルムは、デプラを見つめる。

 彼女の唇が動き、音を放つ。

「いこう」


 彼女の小さな手が彼の頬に触れる。


 デプラは息を呑む。

 ファルムの瞳から目が離せない。動くことも。

 彼女に支配されているような、苦しくも、心地良い感覚。

〈ファルム……〉

 二人の唇が重なる。


〈——!〉

 デプラの唇に鋭い痛みが走った。

 

 ファルムがデプラから顔を離すと、彼女の口元には——赤い鮮血が滲んでいた。


〈「ファルム…この子は普通の天使とは違う」〉

 レムナラの言葉。


 この世界では、天使は人間の永遠を求める欲望に晒され、消費される。


 ファルム――

 彼女は天使でありながら、人間であるデプラに強い欲望を抱いた。



〈あなたを私のものにしたい〉



 ファルムはデプラの両腕を掴み、軽く引く。

「……」

 デプラの身体は、彼女へ倒れ込むように引き寄せられる。

 

 ファルムがデプラを抱き止め、二人は門へと落ちていく。


 二人の影が、門の闇へと、吸い込まれていく。

 ペンダントの淡い光が、門へと呑み込まれ見えなくなる。


 白い花びらが舞い、森には静寂だけが残った。



 ***


 森――

 彼は息を整え、懐から煙草を取り出す。


「……行ったか、坊主」

 

 ミレルたちは、もう動くことはない。

「……婆さん、俺たちにもまだ、やれる事がありそうだ」


 箱に葉と火を入れ、煙が立つ。

 煙は空へ溶け、淡く青い光を放った。



 ――門に導かれ、二人の物語は続く。


『GateFragments』第一巻『Angelblood』——完——

Angelblood完!

ここまで読んでくださった方!あなた!本当にありがとうございます!


Angelbloodラスト、どうでしたか?

このラストが本当に書きたくて、、、

めっちゃ好きなので。もし感想なんか頂けたら…。

いや、そもそもここまで読んでくださって本当に感謝です!

面白くても、そうでもなくても、お付き合いいただき本当にありがとうございました。


もし読み返していただく機会があれば、以下のことを考えながら読むと、別の解釈を得られるかもしれません。

『第1章のペンダントがファルムの所有欲求の表れだとしたら?』


次回『Calamity Gate』


挿絵(By みてみん)

Falm

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ