表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
GateFragments  作者: 悠蛹
第1巻 Angelblood―血の支配―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/26

Angelblood 第3章前編【薬】

Angelblood完結記念コンテスト開催!

2025.12.15〜2026.01.31


Xのポストにて詳細をご確認ください。

悠蛹(@snghrk2414)

 デプラは、包帯を巻かれた体で目を覚ます。

〈ここは? 家?〉

 ——部屋には薬草の匂い。

 傍らには、寝台にもたれファルムが眠っている。デプラの腕の上には、彼女の小さな手が重なっていた。

 デプラが身じろぎすると、ファルムは目を覚ます。

「…よかった! 気がついた」

 彼女は安心したように目を細め、デプラを見つめる。

「ここは…?」

「ここはね——」

 ファルムの言葉の途中で、部屋の入り口から老婆が現れる。


「まだ横になっていなさい。血が戻りきっていない。」

 老婆は二人の様子を見ると、すぐ部屋の外へ戻り、戸から見える炉の前に立つ。

 煎じ薬の湯気が立ち上り、空気に青い香草の匂いが混じる。

 老婆は背が低く、色の異なる布を複数重ねた服を着ている。

 作業を続けながら、彼女は口を開く。

「街に移る人間は多いが、出てくる者は少ない」

「皆、あの街で血に溺れる」

 ファルムは老婆のそばへ行き、何かを手伝っている。すっかり懐いた様子だ。

「助けてくれて、ありがとう」

 デプラは感謝と、二人の名前を伝える。


 彼女は煎じ薬をデプラへ差し出し、レムナラ(Remnara)と名乗った。



 ***


 夜――

 ファルムは布に体を包まれ、静かに寝息を立てている。

 デプラは、火のそばで薬草を編むレムナラに近づく。

「明日にでも発った方がいい。今は眠りなさい」

 レムナラの言葉に頷きつつも、デプラは彼女の近くに座る。


 ——少しして、デプラは口を開く。

「ファルムは、この世界にいる限り……これからも逃げ続けなきゃいけないのかな」

 彼は火を見つめる。

「彼女と初めて会った時、自分の意思でこの世界に来たようには、見えなかった」

 老婆は無言で先を促す。

「もし元の世界に返す方法があるなら、この世界から逃したほうがいいのかもしれない」


 レムナラは手を止めず、答える。

「門は謎が多い。発生する場所も、時間も法則がなく、あの先に彼ら——天使の世界があるのかも分からない」


「けれど、一度だけ。こちらの世界から、門へ天使が落ちるのを見たことがある」

 デプラは驚き、レムナラを見つめる。

 彼女は一度、自嘲気味に鼻を鳴らすと、話を続ける。

「昔、研究者だった頃さ」

「天使——彼らのことを知りたかった。理解して、共に生きたかった」

 レムナラは目を伏せる。


「けれど、私の研究は結果的に彼らへの悪意——欲望に加担してしまった」

「協力してくれた天使たちは、皆自由を奪われてしまった」

 老婆は手を止める。

「私が逃せたのは一人だけ……彼女は私にとって友人であり、他の天使や人間よりも特別な存在だった」

 レムナラは遠い過去を見つめる。

「逃げる最中、偶然目の前に、門が現れた」

「……結局、救えたのかどうかは分からないままだけれど」

 レムナラは息をつく。


 デプラは何も言えず、ただ彼女を見つめた。

 レムナラは静かに立ち上がると、編み終えた薬草を壁へ吊るし、ファルムのそばへ座る。


「ファルム、この子は普通の天使とは違う」

「いいえ……この子が正常なのかもしれない」

「私があなた達を見つけた時、この子は私に頼み込んできたの。……あんなふうに、天使から助けを求められたのは初めてだった」

 レムナラはファルムを見つめながら話す。


「天使はこの世界に落ちてすぐ、人間の欲望に晒され、捕まってしまう」

「何かを望むことを……最初に奪われてしまう」

 デプラはレムナラの言葉に、屋敷で囚われていた他の天使達を思い出し、拳を握る。


「この子が光を失わなかったのは、最初に出会ったのが、あなただったからかもしれない」

 老婆は静かにファルムの髪を撫でる。

 ――まるで過去の友人を見ているように。


 ***


 翌朝――

 レムナラはファルムに服を着せる。

「ほおら、これで少しは走りやすいだろう」

 ドラヴィエルのもとから逃げてきた服は、とても動きやすいとは言えなかった。

 レムナラはデプラに向き直る。

「この森の先に、昨日話した天使が門に落ちた場所がある。目的地が無いよりはマシだろうさ」

 新しい服に喜ぶファルムを、二人は見つめる。

「追われているんだろう? はやく行きな」


「「ありがとう」」

 二人は礼を言い、森の奥を目指して小屋を後にする。


 ***


 風がざわめき、湿った空気が肌にまとわりつく。

 木々の間から、いくつも蠢く影が現れた。

 デプラがファルムと影の間に立つ。

「人……なのか?」


 人影——拘束衣のような布は全身に巻かれ、顔を覆い、彼らの細い肉を締め付けている。

 口からは涎を垂らし、隙間から覗く黒い目は、血に濡れたような光を宿していた。

読んでくださってありがとうございます!


今回はだいぶ説明回になってしまいました…

テンポは本当に大事にしてる部分なので、説明もし過ぎない、けれど必要な情報はしっかりと。

うまくやって行きたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ