Angelblood 第2章中編【試飲会】
コルヴは、デプラが活動を手伝う合間に、模擬戦や訓練を行い短く指導する。
「お前の投擲は優秀だが、目的のために他者を傷付ける覚悟が必要だ」
コルヴはデプラに、幅の広い革製のベルトを渡す。
「これは?」
デプラがベルトを広げると、小ぶりなナイフが複数本、収められている。
「外套の裏、腰や腿に巻いて使うものだ。最初は重く感じるだろうが、静音性は高い」
「精確に投げれば、急所を避けて行動不能にできる。正面からの直接戦闘よりも、先手で有利に運ばせることを意識しろ」
デプラはナイフを取り出す。
持ち手の部分は、デプラの手に合うよう削られているようだ。
デプラはナイフを置き、ペンダントを握る。
応えるように、小瓶の液体が淡く光る。
〈ファルム……必ず君を救い出す〉
屋敷では、試飲会が開かれていた。
客人たちは互いに持ち寄った天使を試飲し、色や香り、味や舌触りについて品評し合っている。
壁には天使の翼が装飾のように並べられ、広い部屋には等間隔に、容れ物が配置されている。
「これは絶品だ……」
「素晴らしい……」
「ドラヴィエル公。お招きいただき光栄でございます」
「公爵の天使はやはり格が違う」
「最近は門の発見も少なくなってきている」
「うちには今日持って来れなかった天使がいまして、今度是非いらして下さい」
「これまで以上に、天使の価値は上がっていくでしょうな」
客人達が、その青白い口を開き音を出す。
部屋の奥、ドラヴィエルのそばに配された容れ物。
——ファルムが座っている。
彼女の背中には切り落とされた翼の跡が残り、身体には管が繋がれている。
管は注ぎ口へと伸び、青い液体が中を流れている。
グラスが満たされ、客人の青く濡れた口元に運ばれる。
彼女は目を閉じる。
瞼の裏に、白い花々の咲く森と、少年の笑顔が浮かぶ。
客人たちの声は消え、少年が彼女の名を呼ぶ声が聴こえる。まだ高い、純粋な彼の心地よい声。
〈デプラ……あなたに会いたい〉




