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GateFragments  作者: 悠蛹
第0巻 願いの器―永遠の少女―

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25/26

願いの器 終章【門】

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2025.12.15〜2026.01.31


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悠蛹(@snghrk2414)

「これまで、永遠の一部を抽出することには成功していました。ならば、完全に永遠を分離することが出来れば、テセラ様は元の人間へ戻れるはずです」

 ナイカーはこれまでの研究内容から、ある装置の開発をガルトに提案する。


 ナイカーはガルトと協力し、テセラを永遠の力から解放する【Core《コア》】の作成を開始した。


 カヴォルは戦場から戻らなくなった――

 休息を取らず、教団領へ侵入する者を屠り続けた。

 黄金の大剣を振るう彼の腕には、騎士の誓いと、人間への憎悪が宿っていた。

 いつしか、彼の肉体に無傷の箇所はほとんど存在せず、より一層黄金の輝きを纏うようになった。


 ***


 リラエムは、ラヴィラドの取引が最も多かった国へ潜入していた。商品の中には、青い液体だけではなく、テセラに永遠を与えられた植物や動物も含まれていた。

 国内の施設では、ガルトとナイカーによる抽出技術を真似た模造品が生産されていた。

 施設が稼働していない時間に、リラエムは内部を探索する。

〈ラヴィラドを殺しても、もう止まらない……〉


 静まり返っていた施設内――

 リラエムの前に、複数の人影が現れる。

〈情報を得てはいた――〉


〈永遠の残滓で半不死の存在となった兵士たち〉


「――ミレル」


 彼らは虚な目を侵入者――リラエムへと向け、青みがかった肌を黒い布で覆っている。 

 その中に、テセラと変わらない年頃の子供が混じっていた。

〈……!〉

 その姿に、一瞬リラエムは動きを止めてしまう。

 それは致命的な隙を生み、ミレルたちは永遠を持つリラエムへ絡みつき行動不能にする。


 ***


「……」

 吊るされたリラエムが意識を取り戻す。


「はあ、ようやく目が覚めた」

 施設の管理者――ラヴィラドの取引相手であり、リラエムは面識があった。


「この子たちは、私の最高傑作たちでね」

 女の横にはミレルたちが行儀良く並んでいる。

「あなたのご主人との取引は非常に有意義なものだった」

 女がミレルたちの顔を指でなぞる。

「契約を反故にしたのはそちら……それに、こちらで生産できる体制も整ったから」

 女の指が、テセラと変わらないほどの少年へ伸びる。

「――!」

 リラエムが身じろぎすると、女は愉悦を浮かべ、少年を包む布の隙間へ手を差し込む。

 少年は動かない。

「不思議よね、あの液体を使用した人間は程なく理性を失う」

「けれど、聖女様くらいの子なら、なぜか使用出来る期間が長いのよね」

 女は吐息を漏らしながら、指を少年の肌に這わせる。

「私のためにあるような力だわ」

 女の手が少年から離れる。


 リラエムの刺すような視線を、女は覗き込む。

「その瞳……綺麗ね。とっても欲しいわ」

 女は、先ほどまで少年の肌に這わせていた指で、リラエムの瞳に触れる。


 指先が眼球と粘膜の隙間に沈み、黄金の円環を湛えた宝石が取り出される。

 耐え難い痛みと熱に、リラエムの声が漏れる。

「あら? やっぱり取り出すと青みがかってしまうのね。まあ、これはこれで美しいし、何度でも収穫出来るからいいわ」

 ――再生した瞳で、リラエムは女の赤く濡れた手を見る。

〈……テセラ様〉


 ***


 リラエムが戻らない中で、コア作成が佳境となる。

「それでは、開始します」

 目指した効果が得られるかどうか、サウラ同席のもと、ガルトとナイカーによる実験が行われていた。

 ナイカーが設計し、ガルトが作成した装置が試検体へ取り付けられ、その中央へ黄色のランプが灯る。

「……」

 二人は互いに頷き、ガルトが装置を取り外す。


 検体からは、永遠の輝きが消えていた。

「成功だ!!」「成功です……!」


「この装置を、テセラ様が永遠を与えた他の生物にも使用していきましょう!」

 ナイカーの興奮した様子に、ガルトも喜びを表す。

「ああ!試行を重ねて確実なものをテセラ様へ渡そう」


 だが、サウラは懸念を示した。

「もし、この装置でテセラ様の永遠が失われたとして、そうなった時、協力してくれていた信者たちが暴徒と化す最悪の事態になるかも」

「むう……たしかに」

 ガルトが唸るなか、ナイカーは静かにコアの調整を続けていた。


 ***


 サウラは、ガルトとナイカーの不在中に、研究室へ入る。

 テセラへの装置使用に同意できず、決断を保留にしていた。

〈ナイカー様の態度、テセラ様よりもコアの完成を優先しているように見えてしまう……〉

 マレーナの死後、テセラは聖女として信者の前へ姿を現すことをやめた。

 信者たちの不信を収めるのに、サウラは神経をすり減らしていた。


「これが、テセラ様を少女に戻す装置……」

「?」

 実験時に使用した装置の横に、もうひとつ装置がある。形状は似ているが、異質な空気を纏っている。


「――!」

 突如、サウラの背中に鋭い痛みがはしる。

 背後にナイカーが立っていた。

「ナイカー…様……」


 背中にじわりと熱が広がっていく。

 サウラの背中には、ナイカーの手によってコアに似た装置が突き刺されていた。

「その装置は、テセラ様と、その永遠を再構築するためのものですよ。これにより、テセラ様は自身の力と同化し、完全な永遠となる」

 ナイカーが淡々と装置の説明を始める。

「っな…に……?!」


「そして、今からサウラ様へ使用する装置は、その試作品です。ただし再構築は出来ず、分解までで止まってしまいますが」

 サウラへ差し込まれた装置が脈動するように光り始める。

「あなたはあの子をっ! ただ、みんなの幸せを願う少女を……最初から助けるつもりなんて、無かったのね……!」

 サウラがナイカーを睨みつけながら糾弾する。


「ええ、当然です」

 ナイカーが当たり前のように答える。


「永遠という真理が、あの少女の中に囚われているのですから」


 ナイカーが装置を起動すると、装置から光が溢れ、研究室内が照らし出される。

「っが…あ……!」


 溢れていた光は収束するように装置へ吸い込まれていく。同時に、サウラの顔に刻まれた黄金の証明が、光を失っていく。

「……」

 サウラが倒れ、装置は役目を終えたように崩れる。

「やはり、だめですね」

「しかし、さすがサウラ様。分解されても人としてのカタチは保っている」


 ナイカーはサウラのそばでしゃがみ込み、黄金の宿る左手で、そっと彼女の瞼を閉じた。


 ***


 リラエムとサウラ、教団の密偵と象徴の不在を感じ取ったのか、周辺諸国が最後の攻勢に出る。


 カヴォルが最終防衛戦で抑えているが、既に限界を迎え崩壊しつつある。

「カヴォル様のいる前線も、もう持たない……」

 ガルトは頭を抱える。

「ガルト様…… 装置を使いましょう。テセラ様から永遠を取り出せば、その力を利用できます。この状況を打開できるはずです……!」

 ガルトは俯きながらも、小さく頷く。

「テセラ様はあれから力を全く使わず、ただコアの完成を待っていた。もう時間も残されていない、テセラ様から取り出した永遠を使って形勢逆転するしかない」

「ええ、きっと上手くいきます」


 ガルトとナイカーは、テセラへの【Core《コア》】使用の提案を決断する。


 ***


 テセラの部屋へ、ガルトとナイカーが入る。


 ――少女は、不器用な機械工から贈られた星を、窓のそばで眺めていた。マレーナが赤い糸を通し、首から下げられるようにしたものだ。

 彼女は二人が視界に入っても、以前のように駆け寄ってくることはない。


「テセラ様、装置が完成いたしました」

 ガルトが【Core《コア》】を取り出す。


「サウラとカヴォルは?」

 テセラが抑揚なく問う。

「カヴォル様は今も前線で戦っておられます。サウラ様は……申し訳ありません、今日はまだ姿を見ておりません」

 ガルトが視線をナイカーへ向け、サウラの所在を問うが、ナイカーは首を振る。


 テセラはコアへ近づく。

「これで、テセラ様は永遠から解放され、取り出された力を使いこの戦争を終わらせられます」

 ナイカーが促すと、テセラは星を首から下げ、頷いた。


「二人とも、本当にありがとう……」


 テセラの言葉に、ガルトは頬を緩め、ナイカーの背中を軽く叩く。

 応えるように、ナイカーはガルトへ笑顔を返す。


 ――テセラの胸元へ装置を取り付ける。


「起動します」


「お願い」


 装置から光が溢れる。


「あ、うあ……!」


 テセラの四肢が硬直したように緊張し、口から呻きが漏れる。


「何かおかしい……!」


 瞬間、黄金の光がテセラ自身を包み込む。


 無機質な光は装置と同調し、歯車やネジ――まるで機械の部品のように組み上がっていく。


「ナイカー!どうやって止める?!」

 ガルトが振り向くと、ナイカーはよろよろと光へ近づく。

「おお……おお!」

 ナイカーは目を見開き、再構築の光景を観察する。

「これが……!これこそが!」

 永遠の力を持った少女。

 他者の痛みを想い、救いを求め、幸福を願った少女。


「テセラ・コア!!」


 人間の欲望に晒され、世界から醜い願いを向けられ続けた。



「永遠を与えしモノ――願いの器の完成だ!!!」



 ナイカーは感嘆の声をあげ、手を伸ばす。

「ふうぉおおお!!」

 指先がコアの光に触れた途端、彼の肉体は粒子のように崩壊し――消滅した。


「ナイカー!!」

 テセラ・コアは肥大化し続け、心臓の鼓動のように震え、その度に衝撃を発生させる。


 やがて、脈打つコアの周囲が揺れ、空間に亀裂が走る。

 無数の亀裂はやがて巨大な穴となり、教会を呑み込んでいく。


「ぐっ……!テセラ様ぁあ!!!」

 衝撃波に吹き飛ばされたガルトは、裂け目に落ちていく。伸ばした手は空を掴み、叫びはもはや誰にも届かない。

 その手で生み出した装置が、端材で作った粗末な贈り物を喜んだ少女を変えてしまった。

 永遠を振り撒き、世界を引き裂く厄災へと――。



「なんだ……これは…!」

 カヴォルを含めた、戦場のすべての人間が空を見上げる。

 天上には巨大な亀裂が走り、世界に空いた穴から雨が降る。

「うわぁあ!」

 やがて亀裂は地上との区別なく、無数の暗闇が世界を内側から沈め、人々がなす術なく闇へ溶けていく。

「ナイカー様は失敗したのか……?」

「テセラ様……」


〈「カヴォル!わたしの騎士様!」〉


 ――黄金の騎士もまた、足元に開いた世界の裂け目に呑まれていった。



 少女は、もう笑うことも、サウラの物語に想いを馳せることもない。


 少女は、もう怒ることも、母親の死に泣くこともできない。


 世界は崩壊し、色が失われた。


***


 ――門が生まれ、世界は繋がる。

   異なる世界、異なる旅人。

   世界にもたらされた永遠の断片。

   永遠を求める人間の欲望。

   すべては救済のために



 ――物語は始まった。




『GateFragments』第0巻『願いの器』完


ありがとうございます…ついに…ついに…

読んでくれてありがとうございます…

はあ…はあ…

いや、もうほんとに、感謝しかありません。


あ、でもここまで読んでくれた感想など、一言でもいただけたら嬉しいです。


次回!!!

GateFragments!

『記雨』でお会いしましょう!


ありがとうございました!

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