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GateFragments  作者: 悠蛹
第0巻 願いの器―永遠の少女―

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22/27

願いの器 第3章前編【星】

Angelblood完結記念コンテスト開催!

2025.12.15〜2026.01.31


Xのポストにて詳細をご確認ください。

悠蛹(@snghrk2414)

 ラヴィラドとの取引は成立し、彼は約束通り、ナイカーの研究に対して惜しみなく私財を投じた。

 同時に、ラヴィラドの私兵――リラエムは、周辺諸国の動向を調査し、各国がテセラの存在をどう認知しているのかを共有した。


 そんな折、ラヴィラドが召致した機械工――ガルトと、彼と共に仕事をする職人たちが教団へ合流した。

 彼が到着して最初に見せた仕事は、すぐさまその卓越した技術力を証明することとなる。


 ガルトは、教団の武力の象徴である騎士カヴォルへ、一振りの大剣を贈る。

 それはガルト自身の背丈すら超える大きさで、鞘や柄には、教団の権威を示す豪奢な金の装飾が施されている。しかし、それはただの飾りではない。実戦においての武器としても扱いやすいよう、一切妥協のない完成度を誇っている。

 カヴォルがその剣を静かに見つめていると、ガルトは自慢の蓄えられたあごひげを撫でながら、無愛想に言い放った。

「カヴォル様。あなたが持つ武器は、ただ使いやすいだけじゃダメなんだ。あなたはこの教団の中で『力の象徴』であり続けなきゃいけない。その存在そのものが教団の抑止力にならなければ」

 カヴォルが、ゆっくりと鞘から剣を引き抜く。研ぎ澄まされた刃、そのあまりの美しさと迫力は、金色の装飾すら凌駕する。


***


 教団が組織として拡大するにつれ、守護者たちのテセラと過ごす時間は削られていった。

 サウラは、日々増え続ける信者たちの管理や活動を執り行いながら、テセラを脅威から守るための有志を募った。

 カヴォルとマレーナが有志の管理と育成を担った。

 カヴォルは武術を、マレーナは医術を彼らに共有した。


 警備だけでテセラを孤立させないため、昼間は多忙な彼女たちの代わりにガルトやナイカー、そしてリラエムが交代で付き添うことになった。

 これまで暗い作業場にこもり切りで、鉄や油といった無機物としか対話してこなかったガルトにとって、幼い少女と向き合う時間は戸惑いの連続であった。

 初めてガルトが自己紹介をした時、テセラは彼の言葉よりも、その外見に興味を示した。

「すごいわ!……ずっと機械を触っていると、手も機械みたいに硬くなっちゃうんだ」

 テセラは興味深そうに、ガルトの蓄えられたひげや、硬い手のひらを小さな両手で包み込みながら、彼を覗き込んだ。

 ガルトが照れ隠しに小難しい機械の理論を語っても、テセラはすぐにつまらなそうな顔をするだけだった。彼は苦笑し、次第に自分から語るのをやめ、彼女の聞き手に徹することにした。

 ある日――ガルトは作業中に出た端材を使い、手慰みに作った小さな贈り物をテセラに贈った。

「わあ……! すごく綺麗な星ね。ありがとう、ガルト!」

 ガルトとしては人形のつもりで作ったものであったが、彼女の声と喜ぶ様子に、訂正する気は失せてしまった。


***


 リラエムがテセラの護衛として付き添うことになった初日、テセラは彼女へ積極的に語りかけた。

「リラエム、聞いて!」

 リラエムは周囲の気配を殺し、警戒の目を外に向けたままだったが、テセラはその隣を楽しそうに歩きながら、大切な人たちのことを一つひとつ語った。

 カヴォルが命を救ってくれたこと。その時に「騎士の誓い」を立てて、それからずっと一番近くで守ってくれていること。

 マレーナとの関係についても、彼女は隠すことなく口にした。

「マレーナはね、本当のお母さんじゃないの。……でも、わたしにとっては、マレーナが世界でたった一人のお母さん。恥ずかしいから、お母さん、て呼べないの」

 サウラが語ってくれる様々な伝承、物語。

「サウラのお話はどれも素敵だけど、わたしは『雨』のお話が一番お気に入りなの。……雨はいつか止んで、みんなが笑ってるこうけいだけが残ってる。すっごくすてきなお話!」

 テセラはリラエムへ、記憶を辿るようにその物語をそらんじて見せた。

 話題は尽きない。ナイカーのつけている香水がとてもいい匂いであること。いつか自分も大きくなったら、あんな風にお化粧をしてみたいということ。

 そして、少しだけ声を潜めてこう続けた。

「カヴォルやサウラからはね、ラヴィラドさんには気を許してはいけませんって言われているの。……でも、わたしはラヴィラドさんとも仲良くなりたいな」

 そう言って、ガルトから贈られたばかりの、金属の端材で作られたお星様をリラエムに見せて、テセラは誇らしげに笑った。

 リラエムは、ただ静かにテセラの言葉に耳を傾けていた。


「わたしはね、リラエムとも仲良くなりたいの」

 立ち止まったテセラが、真っ直ぐにリラエムを見上げる。

 その金色の瞳は、濁りのない純粋な光を宿して、リラエムの黒く美しい瞳に映っていた。


***


その日の夜、テセラとリラエムはマレーナと合流した。

 マレーナの姿を見つけるなり、駆け寄り、彼女へ飛び込む。

「マレーナ!」

 親子の様子を、リラエムは扉のそばで静かに見守っていた。

 マレーナは愛おしそうにテセラを抱きしめた後、リラエムの方を向き、礼を言った。

「リラエムさん、今日はこの子を守ってくれて、本当にありがとうございました」

 リラエムは何も答えず、ただ静かに礼を返すと、部屋を出ようとする。その時、テセラが背中に向かって声をかけた。

「リラエム、おやすみ!」

 リラエムの足がわずかに止まり、彼女は一瞬だけ、肩越しにテセラを振り返る。

 そして彼女は何も言わず、静かに部屋を後にした。


 テセラは部屋の窓から、輝く星々を見つめながら、眠りについた。

読んでくれてありがとうございます!

あけましておめでとうございます。


願いの器も、とうとう第三章です。


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