願いの器 第2章後編【取引】
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悠蛹(@snghrk2414)
「では、具体的な話をしましょうか」
ラヴィラドが切り出した。
「素晴らしい力を見せてもらいました。
ぜひ皆さんに協力したい。
……だが、私は商売人でしてね。無償の取引はしない主義なのです」
「ええ、分かっております」
ナイカーが応じる。
「……ところで、私自身にその『永遠』を授けてもらうことはできないのかな?」
ラヴィラドの問いに、その場の空気の流れが止まる。
だが、ナイカーは動じずに答える。
***
――数刻前
「なるほど」
サウラはナイカーの予測に相槌を打つ。
「そのラヴィラドという男は、必ずテセラ様の力を自分に使うよう申し出てくるということね」
「おそらく、間違いありません」
ナイカーの肯定に、カヴォルが険しい表情で口を開いた。
「だが、敵か味方かも分からないような男に、テセラ様の力を使うのは危険すぎませんか?」
「私もカヴォルさんの意見に賛成よ」
マレーナも不安を口にする。
「もし彼に永遠を与えてしまったら、こちらに従う必要もなくなる。
取引そのものが成立しなくなるわ」
「ええ、ですからもし与えるにしても、相応の条件を付けなければなりません――」
***
しかし――
ラヴィラドは、ナイカーの言葉を待たずに首を振る。
「……いや、撤回しよう。
代わりに、テセラ様の力を研究する過程で生じた成果物は、すべて私にも共有することを約束してほしい」
意外な言葉に、サウラたちは目を見開いた。
ラヴィラドが自ら永遠を要求しなかったことで、その場に奇妙な沈黙が流れた。
カヴォルやサウラは、ラヴィラドが目の前の奇跡を盲目に求めない様子に警戒を強めつつも、最初の衝突が回避されたことに安堵し、彼を受け入れた。
「商売は情報が命だ。
その点、私は資金面以外でもあなた方に協力することができます」
ラヴィラドが顎をしゃくると、傍らに控えていた女性が音もなく一歩前へ出た。
「この"リラエム"は、私の私兵であり、密偵だ。
各国の情勢を把握し、最適な商売を成立させるために情報を集める専門家でしてね。
今後、周辺諸国や敵対勢力がテセラ様を狙って動き出した際、彼女は必ず役に立つでしょう」
「よろしくお願いします」
リラエムと紹介された女性は、一言挨拶すると、またラヴィラドの影と同化する。
「それから……ここへ来る途中に思ったのですがね。
ここは、あまりにも無防備だ。
サウラ殿、あなたの信仰管理者としての手腕は見事かもしれないが、秩序を無視した暴徒が攻め込んできた時、あるいはそれ以上に大きな存在がテセラ様を狙った時、彼女を守り切るだけの『武力』が必要だとは思いませんか?」
その言葉に、マレーナとカヴォルは苦い記憶を呼び起こしていた――。
サウラが作り上げた教団は、象徴としては盤石だが、これまでにも何度か暴走した信者たちの襲撃を受けていた。
そのたびにカヴォルが鎮圧に走り、負傷した信者や教団員をマレーナが治療してきた。
しかし、教義が広まるにつれ、暴徒の数は日に日に増しているのが現状だった。
「……否定はできないわ」
サウラが同意する。
「カヴォル様が表に出ている以上、テセラ様の力は疑いようがない。
けれど、その力が知れ渡るほど、秩序を保つための『抑止力』が必要になるのも事実よ」
「さすがサウラ殿、話が早い」
ラヴィラドは満足げに目を細め、唇の端を上げる。
「私の取引相手に、一流の機械工がいる。彼を雇って、こちらの武装を強化しようじゃありませんか」
ラヴィラドは鼻を鳴らし、続ける。
「……まあ、面白みのない男だが、腕だけは確かです」
ラヴィラドの提案により、機械工"ガルト"が教団へ召致された。
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第2章後編
今回は短くまとまりました。
次回第3章をよろしくお願いします!
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更新予定は来年です!
年末年始はAngelbloodの改稿作業を予定しております。




