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GateFragments  作者: 悠蛹
第2巻 Calamity Gate―厄災の門―

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15/27

Calamity Gate 第3章後編【門】

◇❖●


「こっちよ!」

 マザー・ウスラが、子供たちを避難させるため、孤児院の扉を開き叫ぶ。

 子供たちは不安な表情を浮かべながらも、ウスラについて外へ出る。

 鳴り響く警報――

 アリシアとシル、二人の制御装置に通信が入る。

『全構成員!最大厄災の発生を確認!』

『至急現場へ急行せよ!』

 アリシア、シアリス、シルの三人が孤児となった"大厄災"、その規模をはるかに凌駕する巨大な門が、都市を呑み込もうとしている。

 既に多くの犠牲者が出ている。

 シルはダミーにしていたキューブを呼び戻し、三人は門へと急ぐ。


***


 門周辺には、大量の変異体と孤児が発生していた。

 構成員の中には、厄災に耐えきれず変異体となる者もいる。

 増え続ける変異体に構成員は押され、倒れていく。


 三人が門の前へ辿り着く。

 シアリスがアリシアを呼ぶ。

「私がみんなを保護するから、機関に加勢して変異体をお願い」

 アリシアは心配そうにシアリスを見る。

「大丈夫」

 シアリスはアリシアへ向き直り、ニカっと笑う。

「お姉ちゃんに任せて!」

 シアリスは力強くアリシアへ答え、厄災孤児の救助へ向かう。

「アリシア!」

「門の拡大は止まったみたいだけど、大量の変異体が発生してる。構成員の処理が追いついてないどころか、構成員すら変異し始めてるよ!」

 シルの報告にアリシアは頷き、目を閉じる。

〈お姉ちゃんに任せて!〉

 先ほどのシアリスの言葉を反芻する。

 そして、かつての思い出を振り返る。


〈大好き!ずっと私のお姉ちゃんでいてね!〉

 二人の誕生日、あの時両手で掴んだ姉の手。

 再会した孤児院で掴んだ、シアリスの手。

〈機関の嘘、実験、変異。孤独な闘い〉

〈それでも〉

〈それでもお姉ちゃんは、私のお姉ちゃんのままでいてくれた…!〉


「シル」

 アリシアが声をかける。

「動けない構成員たちのキューブをハッキングできる?」

 アリシアの口にした言葉に、シルは驚く。

「え?!」


 アリシアは続ける。

「門の出現で倒壊した建物の粒子も、操作できる?」

 シルが戸惑う。

「そんなに大量のキューブをハッキングしてどうするの?操作できるリソースの許容量を超えてるよ!」

 アリシアはシルを見つめる。

「私はもう大丈夫だから」

 彼女はもう、焦燥に囚われてはいない。

「シル、私を信じて」


「わかった…!」

 シルは自らのキューブを分割し、広域に拡散させハッキングを行う。


〈〈操作権限をアリシアへ移行〉〉


●●●


 シアリスは触手を伸ばし、孤児たちを門から、そして変異した家族から遠ざけていく。

〈これじゃあ間に合わない!〉

〈けど、諦めはしない!〉

 シアリスは思い出す。

 実験の最中見た、過去の夢を。

 アリシアの言葉、行動を。

〈お姉ちゃんが私のお姉ちゃんで嬉しい〉

 シアリスの手をつかんだ、彼女の小さな両手を。

 変異した手を変わらず掴んだ、成長した彼女の両手と、そのぬくもりを。

 シアリスは閉じていた目を開ける。

〈思い出せ!〉

 耐久試験の最中、暴走したあの時の感覚を。

〈制御しろ!〉

 シアリスは肉体を増幅させていく。

 触手が増え、腕や足、体を自由に変形させる。

 蜘蛛の巣のように、桃色の肉体を門の周辺全体に張り巡らせる。

〈いける…!〉

 シアリスは同時に複数の子供たちを引き離していく。


「うわぁ!」

 構成員、彼らもまた大量の変異体に押され、殺されそうになっている。

 シアリスは一瞬の躊躇の後、子供たちと同じように、構成員たちも変異体から引き離し保護していく。


◇◇◇


 アリシアの頭部に付けられた一対の制御装置、その中央が強い水色の光を放つ。

「――!」

 アリシアの全身を粒子が包み込む。

 倒れた構成員のキューブ、倒壊した建物に含まれた粒子が舞い上がり、一帯に黒い霧が立ち込める。

 霧の中で、水色の光が星のように煌めく。


 アリシアは大量の粒子と共に浮遊し、光を纏いながら高速で移動し、変異体をなぎ倒す。

 アリシアの桃色の髪が舞う。

 シルはアリシアの掌握するキューブへ接続し、変異体の位置をアリシアへ共有する。

 アリシアは戦闘を行いながら、同時に把握した変異体の核へ、星が降り注ぐようにエネルギーの銃弾を撃ち込む。


***


 三人の奮闘により、ほとんどの変異体の討伐と、構成員、子供たちの救助が終わる。


 門が収縮を始める――

 アリシア、シアリス、シル共に疲弊している。

 アリシアの制御下にあった粒子がキューブへ戻り、地面へ落下していく。

 シアリスの肉体もまた、収縮し元の人型へ戻っていく。


 全構成員に通達がある――

『門の収縮を確認!』

『次の命令を伝える』



『特殊危険変異個体を討伐せよ!』



 アリシア、シルはびくりと震える。

 助けられた構成員は戸惑っている。


『特異体を討伐せよ!!』

『これは"命令"だ』


 銃声――


 構成員の一人がシアリスを撃ち、一人、また一人と同調するように撃ち始める。

 限界を超えた肉体の酷使で、シアリスは逃げる間もない。


「やめろーーー!!!」

 シルは叫ぶ。

 その叫び声は、彼らの銃声によってかき消される。

 限界を超える粒子操作によって、アリシアはその光景をただ立ち尽くし、見ていることしかできない。

 シルが構成員を殴り倒すが、シアリスへ向けられた銃口はあまりにも多く、その音は止まない。


 シアリスの再生が遅くなっていく。

 機関上層部からの『撃ち続けろ』という命令が、通信装置から響き続ける。

 最大厄災の門は縮小し続け、人一人分ほどの大きさになっていた。


 銃撃が止み、シルはシアリスの方を向く。


 そこには、歪な菱形の核とわずかな肉片だけが浮いていた。


 アリシアは核に向かって走り出す。

「お姉ちゃん!」「お姉ちゃん!!」


 シルは怒りに震える。唇を噛み、その場から動けないでいた。

 シアリスの核が、閉じゆく門へと落ちていく。

 アリシアは核へ向かって走る。


 シアリスが、門の中へと消えた。

「お姉ちゃん!!!」

 

 シルはアリシアを追って走り出す。

 閉じていく門へ、アリシアは迷うことなく飛び込んだ。

「アリシア!」


 門は閉じた――


 消えた門の前で、シルは膝から崩れ落ちる。

 背後からは、構成員たちのうめき声と、歓声。


 シルは慟哭する。


「アリシア…」

 門の先には、何があるのかわからない。

 "先"があるのかもわからない。

「アリシアぁ…!」

 シアリスを助けられなかった後悔。

 構成員への、機関への怒り。

 アリシアを失ってしまった悲しみ。


 シアリスを追い、シルを置いて行ってしまったアリシアへの怒り。

 その怒りを持つ自分を嫌悪する。


❖ ❖ ❖


 しばらくして――

 シルは立ち上がった。

 彼女は泣き腫らした顔で前を向き、涙を拭う。


 シルは選択する。

「二人を見つけて、必ず助ける…!」


 シルはアリシア、シアリスを追う決意を固める。

 その瞳に赤く、強い光を湛えて。



――門に導かれ、三人の物語は続く。


『GateFragments』第2巻『Calamity Gate』

――完――

本当に、ありがとうございました…!


Calamity Gate 完!

どうだったでしょうか…

この終章、本当に好きです。

共闘シーンは、これまでの集大成。

三人の精神が完全に成熟し、圧倒的な全能感を与えます。


そして、単体でも成立するように書いたつもりのAngelbloodとは違う終わり。

もちろんCalamity Gateだけでも楽しめるようには書きましたが、シリーズものかどうか事前に知っているのとでは、ラストの気持ちが違います。


また次回…!!

もしよろしければ、ここまで読んでくださっただけでも感謝大爆発なのですけれど!感想や反応などいただけたら嬉しいです!


それでは、『願いの器』でお会いしましょう。

ありがとうございました。


挿絵(By みてみん)

Alicia


挿絵(By みてみん)

Cialice

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