Calamity Gate 第2章後編【真実と意思】
第2章前編のあとがきに、シアリスのイラストを載せています!
序章のアリシアのイラストと合わせて見てみてくださいね!
◇◇◇
特異体との遭遇から、アリシアはほとんど休息をとらずに、人手の足りない任務へ積極的に参加する。
だが、特異体はまるでアリシアを避けるように目撃が減っている。
「もう一度、何か…彼女にもう一度会えば…分かる気がする」
アリシアの表情は以前よりも暗い。
精神状態は悪化し、キューブ操作に影響が出ている。
「アリシア、少し休んだほうがいいよ」
シルはアリシアを気遣うが、アリシアは特異体を追うことに執着し、シルの提案を受け入れない。
〈アリシアのお姉さん、シアリスさんを見つければ…!〉
シルは、アリシアの姉であるシアリスを探す決意を固める。
❖ ❖ ❖
機関は何かを隠している。
シルは遭遇した特異体の行動の理由、そしてアリシアの姉であるシアリスの情報が、機関から何ら提供されないことについて疑問を持った。
〈ダメってわかってるけど〉
シルはアリシアのため…いや、アリシアを想う自分自身のために、機関の上層部にのみ権限が与えられているデータベースへアクセスした。
〈…どういうこと?〉
データベースには、シアリスに関する情報はほとんど残されていなかった。
確認できたのは、過去の大厄災によってアリシア、そしてシアリスが保護されたこと。
アリシアは検査によって耐性があることが判明し、構成員として教育すること。
シアリスは、門からもたらされる厄災に対して"適応"があることが判明した。そしてシアリスは、研究区画内、クエイン博士の管轄する部門へと移送されていた。
そこから先の記録は、クエイン博士のエリアに保存されているとのこと。
〈おかしい…〉
アリシアの話によると、シアリスは検査によって耐性が低く、民間の孤児院へ預けられたという話だった。
〈研究区画…クエイン博士…〉
続けてシルは、特異体に関する情報を探った。
特異体は、数年前、機関研究区画襲撃事件の際に初めて現れた。
研究区画内、特にクエイン博士の管轄するエリアに甚大な被害をもたらした。
〈研究区画へ入れれば、特異体のこと、そしてシアリスさんのことが更に分かるはず〉
***
機関―研究区画―クエイン博士の管轄エリア―
区画内はほとんど人がおらず、キーカードや網膜認証、コード入力などいくつものセキュリティーチェックが施されていた。
機関研究区画襲撃事件から、クエイン博士の人嫌いも相まって、彼の管轄エリア内はほとんど機械警備による無人エリアと化していた。
シルは自らのキューブに仕込んだハッキング能力で、セキュリティーを突破していく。
シルはエリア内のアーカイブ保管室に侵入した。
クエイン博士の研究内容は、厄災のエネルギーを人体へ使用し、医療や人類そのものの進化を模索するというものだった。
シルはアーカイブ保管室に並ぶデータベースとキューブを接続し、ファイルの記述を読む。
門に関する推察――
『門の先は別の空間に繋がっている。
あの先は、こことはまるで違う世界が広がっていると予想される。
門の発生頻度と規模は拡大するばかりだ。厄災への適応こそ、人類生存の道であり、人間の進化の可能性である』
シルは特異体に関するファイルを発見する。
『被検体ナンバー315(個体名:シアリス)
門への"適応"を確認。研究区画、クエイン博士管轄エリアへ移送――被検体として使用する。
変異体の組織や、門周囲に発生した鉱物、植物などを人体へ取り込み厄災のエネルギーが体内へ及ぼす影響の――』
ファイルにはクエイン博士のメモが書かれていた。
『315番の"適応"能力は、これまでの被検体の中で最も高い。
ほとんどが、人間と異なる形状へ変異してもまだ、あれは人としての形状を保っている。
また、サンプルとして爪や皮膚の一部を採取した際、瞬時に再生した。
この再生は、門のエネルギーが体内で循環していることによる作用だろうか。
観察後、追加のサンプル採取も兼ねて再生能力の及ぶ範囲や、再生の限界値を測る試験を行う予定』
ファイルを読む速度が上がる。
「…!見つけた…!」
***
〈辛い事実でも、隠すべきじゃない…〉
シルはアリシアへ、研究区画で知り得た情報を共有する。
「機関は、お姉さんがどこかの孤児院に潜伏しているのではないかと推測してるみたい」
「連れ去った子供たちは、きっと無事だよ」
話を区切り、シルはアリシアの様子を窺う。
彼女は俯いたまま話を聞いていた。
「お姉ちゃんを見つけなきゃ…!」
アリシアは目に涙を浮かべながら、話す。
「機関の嘘…実験…許せない…!絶対に許さない!」
「気付かなかった…考えもしなかった自分に腹が立つ…!」
シルも同じ想いでいた。
「……けど!」
アリシアは前を向く。
「まずはお姉ちゃんを見つける!」
「それが私にとって一番大事なことだから…!」
〈ああ…アリシアは強い、本当に強い〉
シルはアリシアの隣に座り、肩を抱く。
アリシアは暫く、シルへ体重を預けていた。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!
ようやくアリシアとシルが読者の視点まで追いつきましたね…
この双子は私の中でも初期のオリジナルキャラクターで、思い入れもあるので、当初の設定のまま、丁寧に物語を紡ぎたいと思います。




