激走れ‼ メロス‼~と~てもカオスな走れメロスの続編~
テンションだけで書くと、こうなるよって見本ですね(笑)
メロスは激走した。
山賊を跳ね飛ばし、水上すらも突っ走り、止めに入ったフィロストラトスも追いつけぬほどの速度で走る。走る。
数年前、なんやかんやでディオニス王とも友情を結んだメロス。
その友が、今まさに、窮地に追いやられていた。
暴君として恐れられたディオニス王は改心し、民想いの名君へと変わった。
身銭を削り、質素倹約に努め、消費税も5%に下げた結果、経済は循環し、社会福祉も充実化。人々の生活も潤い始めた。
しかし、突如、平和は乱された。
発展を遂げた我が国に、軍を差し向け、侵略を始めたのだ。
メロスも、親友であるセリヌンティウスも義勇兵として参加を決意するも、ディオニス王はそれを拒否。
「お主たちはお主たちの生活がある。メロスよ。妹に子供が生まれたばかりであろう。支えてやれ。セリヌンティウス、フィオストラスをいい加減、一丁前に育ててやれ。血なまぐさい争いごとは、私のような暴君の仕事だ」
そう言って、ディオニス王は騎士たちと共に戦いを始めた。
なにがあっても友の暮らすこの国を守り抜く。
心に誓った王は、戦場へと向かう。
メロスは遠き戦場で、民を守らんとする王の無事を祈っていた。
しかし、その祈りは実ることはなかった。
『王の軍勢、敗北す』
その知らせが国中に知れ渡るまで、時間はかからなかった。
メロスの住むド田舎の村にも、その日中に届くほどだった。
メロスは激しく後悔した。やはり自身も義勇兵として参加すべきだったのだと。
しかし、すぐに後悔してる暇などないと思いなおし、戦場へと駆け出した。
ディオニス王よ、待っていてくれ。
今、あなたの友であるメロスが行くぞ。
そうしているうちに、戦場が見えてきた。
「なんだ、あいつは?」
「止まれ! 今より捕らえたディオニス王の処刑を行うのだ‼」
兵士たちがメロスの行く手を阻むも、メロスは臆することなくスピードを上げた。
「メロス疾走斬‼」
「ぐあああああああああああ⁉」
歯の奥に加速装置でも仕込んでいたのか。
高速から亜音速へ。ギアをシフトチェンジし、兵隊たちを蹴散らした。
数年前、メロスはセリヌンティウスを救出した後、彼を不安にさせた後悔から修行を積み、新たな力に目覚めたのだ。
亜音速で動くメロスの手刀により切り裂かれる敵兵たち。
さらに、メロスの攻撃は続く。
「メロス空破弾ッ‼」
「ぎゃあああああ⁉」
速度をさらに上げ遷音速へ至った、メロスの体当たりにより吹き飛ぶ敵兵たち。
なに? 生身で遷音速になったら死ぬ? そんなものは知らない。
メロスに政治は分からない。ついでに科学もわからない。
「メロス疾風怒涛不可思議舞踏‼」
「うわぁぁぁぁぁ!?」
「ち、力が抜けるぅ……」
さらに凄まじい速さで奇妙な踊りを踊ることで、敵兵たちは戦意を喪失した。
その様子、SAN値は削れ、MPを吸い尽くされるほど。
昔、この踊りを妹の結婚式で披露した際には、村のほぼ全員が意識混濁。
「次やったら殺ス」と実の妹から釘を刺されたが、友のピンチだ。致し方なし。
ちなみにその際の妹の視線は冷たかった。氷点下……いや、絶対零度だった。
肉親に向けるものではなかった。兄の威厳をかなぐり捨てて土下座して謝ったほどだ。
それはさておき、敵兵を退け、ようやくディオニス王を発見した。しかし……
「でぃ、ディオニス王!?」
「メロスか……来るなと、言っただろうに……」
セリヌンティウスの時は間に合った。だから今回も。
それが思い上がりだったと言うのか?
そこには瀕死の状態のディオニス王がいた。
「何者かは知らぬが、遅かったな。貴様らの王は、このザマだ」
そう言ってディオニス王を投げ捨て、敵国の王――ボウクンデスはその様子をあざ笑う。
「すまない、負けてしまった……私がふがいないばかりに、この国は……」
「否! 負けてはおらぬ‼ 私が来るまでの時間を稼いでくれたのだ‼」
そう言って、倒れたディオニス王を安全な場所に一瞬でつれていく。
そして、再度、ボウクンデスの前に立ちはだかると……
「貴様、許るさぁぁぁぁぁん‼」
メロスは激怒した。いや、激昂と言った方が正しいかもしれない。
その怒りは凄まじく、メロスの怒気により大気は震え、大地はひび割れ、髪の毛が黄金に輝き、逆立った。
伝説の超メロスの誕生である。
「よくもディオニス王を……死をもって償えい‼」
瞬間、メロスの姿は掻き消え、気がつけばボウクンデスの顔面にストレートを決めていた。
ボウクンデスは仁王立ちのまま数百メートル先まで吹き飛ぶも、大したダメージにならなかったようで「ふむ……いいパンチだ」と余裕であった。
「だが、その程度では我は倒せん。喰らえい‼」
「ぬぅぅぅぅぅ!?」
ボウクンデスの右手が帯電し、スパーク。そのまま、電流を帯びた拳がメロスを襲う。
「き、貴様‼ まさか……」
「そう。我の気は雷属性。風属性の貴様とは相性最悪である!」
なんとボウクンデスは雷属性であった。
これは不味い。
メロスは接近戦を避け、距離をとる。
ここはスピードで翻弄し、隙をつく。それしかない。
「今ここで封印を解く‼ 奥義・メロス疾走形態‼」
メロスの氣が膨れ上がったと思うや否や、メロスの衣服は耐えきれず飛び散り、一糸まとわぬ姿となる。
かつて、セリヌンティウスを救う際に走り続けた際に習得した形態だ。
去年の忘年会でもやったが、妹からは大不評。
「次やったら兄妹の縁切るから」と絶対零度の視線を向けて断言したのが昨日のことのように思い出せる。なにかに目覚めそうになったほどだ。
「この形態になった俺は、羞恥心を失う代わりにスピードが1.2倍になる‼ 最早、貴様に勝ち目はない‼」
「メロス・疾走輪舞‼」と叫びボウクンデスの周囲を残像が出るほどのスピードで走り回る。
SAN値がゴリゴリ削られる光景である。股間の【メロス】もプラプラしてる。
「ボウクンデス‼ これで、終わりだ‼」
ボウクンデスの周囲360度から一斉に飛び蹴りを放つメロス。
しかし、その程度は想定の範囲内だ。
右手に雷を収束させ、地面にたたきつけると放電。
それにより、メロスの残像は掻き消え、本体も電撃の餌食となる。
「ぐあああああ⁉」
「雷の速度は光とほぼ同じ。所詮、音速程度でしか動けん貴様は我には勝てぬのだ‼」
「ぐぬぅ……」
感電し、痙攣するメロスにトドメを刺そうとするボウクンデス。
万事休す。その時であった。
「死ねぇ‼」
ボウクンデスの手刀がメロスを貫く!
だが……
「なに⁉ これは、石像!?」
いつの間にか、メロスのいた位置にはメロスを模した石像があった。
「ふっ、どうやら間に合ったようだな」
「き、貴様は‼」
ふり返るとそこには、メロスを抱えている一人の男がいた。
「せ、セリヌンティウス……」
「今度は私が助けに来たぞ‼」
メロスの無二の親友、セリヌンティウスがそこにいた。
「来てくれたのか……」
「当たり前だ。ここからは私も戦おう!」
親友の窮地に馳せ参じたセリヌンティウスは、メロスをそっと降ろすと、臨戦態勢に入る。
「破ッ‼」と地面を殴りつけると、セリヌンティウスの周囲から、大量のゴーレムが出現。
物量でボウクンデスを圧倒し始める。
「くっ‼ 貴様、土属性か‼」
「そうだ‼ 石工で鍛えたこの力、しかと見よ‼」
雷属性を無効化する土属性の攻撃に、圧され始めるボウクンデス。
「俺もいるのを忘れるな‼」
「お、おのれぇぇぇぇぇ‼」
さらにゴーレムに紛れ、高速で攻撃するメロス。
ヒット&アウェイ。ゴーレムを囮に、盾に、隠れ蓑にし、攻め立てる。
「調子にのるなよ……‼」
この程度、電気信号でゴーレムとメロスを判別すれば、容易に攻略できる。
今の状況は互いに決定打を与えられない。そう、向こうも思い込んでいるはずだ。
それを利用し、片をつけてくれる。
ボウクンデスはそう考え、電気信号による探知を開始。
ゴーレムに隠れ、隙を伺う生体反応を発見する。
「そこだぁぁぁぁぁ‼」
ボウクンデスは渾身の一撃を込めてゴーレムごと隠れた“なにか”を攻撃した。
だが、それこそ、メロスとセリヌンティウスの罠であった。
「殺った‼ 走れメロス完……なにぃ!?」
「がは……」
そこにいたのはメロスでもセリヌンティウスでもない第三者――
「誰だ貴様!?」
「せ、セリヌンティウスの弟子のフィロストラトスです……」
意外すぎる囮に呆気に取られるボウクンデス。
その隙を、二人は見逃さなかった。
「いくぞ‼ セリヌンティウス‼」
「応っ‼」
セリヌンティウスの呼び出したゴーレムを発射台に、メロスは空高く舞い上がり、そのまま風力をコントロールし、急降下。
音速を超え、光速に至った必殺の一撃がボウクンデスに叩き込まれた。
「奥義・滅・消失弾‼」
『ぬあああああ⁉』
……フィオストラスごと。
隕石が直撃したかと思うほどの衝撃に、クレーターが出来上がり、巨大なキノコ雲が立ち上る。
土煙が晴れ、そこには満身創痍のメロスと、最早動くこともままならないボウクンデス。ついでに瀕死のフィオストラスの姿があった。
「な、なんで俺まで……」
「お前が昔、メロスの代わりに人質になった私がいない間、無断で! 納期7日で! 100体の石像の発注受けたからだよッ‼」
弟子の疑問に青筋立てて応えるセリヌンティウス。
あぁ、思い出したくない。思い出したくない。
ディオニス王を改心させ、メロスとの友情を再確認して、祝いでも上げようと帰ったら、知らないうちに無茶な納期で注文受けてた当時の衝撃は計り知れなかった。
友は裏切らなかったが、弟子には裏切られた事実に闇落ちしそうになった。
幸いにも「滞った業務を手伝う」とディオニス王が宮廷の彫刻家を連れてきてくれなかったら危なかった。それでも三徹したが。
そりゃ恨むわ。
「次やったら、今度はお前を磔にするからなっ‼」
「すみませんでしたー‼」
叫ぶ程度の元気を取り戻したフィオストラスはさておき、これで戦いは終わった。
しかし、光あるところに影があり。
いずれ第二・第三の暴君が現れるだろう。
走れ! メロス‼ 明日の未来のために‼
……それはそれとして、実はフィオストラス。またも、やらかしていた。
「3日で10000体の発注で誰がなに目的で発注したんだよ⁉」
「さーせん‼」
「これはもう一辺、シバく必要があるな」
「しゃあない。また宮廷彫刻家に頼むか」
「「ディオニス王‼」」
友のピンチに再度集結する漢たち。
頑張れメロス‼ タイムリミットは残り3日だ‼
今から友情パワーで乗り越えろ‼
ついでにセリヌンティウスよ、弟子は選べ‼
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むしろ、両方やってください!
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