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4.ある男の話(ガロン視点)

休みなので連続で投稿しております。

読んでいただけて感謝。

リリーシスがお茶会に行った翌日、ガロンは信じられない話を聞いた。


ガロンは王都の騎士団団長を務めていて、その相棒の副団長がジェイクという平民の男だった。

このジェイクという男は社交的で交友関係が広く、寡黙で世間に疎いガロンをたくさんフォローしてくれていた。

ガロンとも10年来の友人であり、気心知れた仲だった。

戦うとそこそこ強いのだが、ガロンと違って頭を使って戦うタイプで見目麗しい優男である。


他に誰も居ないタイミングを見計らってジェイクは口を開く。

「団長お話があります。友人として話をしたいのでタメ口にしてもよろしいでしょうか?」

「どんな用件だ?構わない。崩せ」

特に気を悪くした様子もなくガロンも話に応じる。



「とりあえずの確認だけど、夫婦仲上手くいってる?」

「もちろんだ。上手くいってるに決まっている」


「じゃあ僕の聞いた話は別の奥方の話か?それともお前が全く気付いてないかだ。先日ある茶会でそこに集まった婦人達が愛人の話で盛り上がったそうだ。

君の奥方が愛人に興味があり、愛人やらワンナイトやらを求める夜会の情報の詳細を婦人達を聞かせたらしいと俺もある婦人の愛人だからその話を聞いたんだが…

違うか?」


「そんな馬鹿な!リリーシスに限ってそんなはずは…」


「本当に関係は良好なんだな?付け入る隙もない程に?心当たりも無く、結婚生活も上手くいっていて、君はいつも情熱的に愛を囁き、奥方はそれに応えて夜も睦まじいんだな?」


「………たぶん?いや、俺は変わらず気持ちを抱いているし、リリーシスだって微笑んで見つめてくれるぞ」


「お前、淑女の微笑みは信用しちゃだめだ。で、気持ち伝えてるのか?君は奥方の前じゃ粗野な言葉遣いを隠すために寡黙になりがちだし、もう新婚で浮かれて熱々って訳じゃないよね?結婚して子どももいれば()()()()()だけじゃ伝わらないこともあるよ?」


「…してないし…言ってない」

「何を?!」

「閨だ。子どもが産まれてからしてない…でもそんな言葉無くても伝わるだろ?態度とか雰囲気とか」


「お前馬鹿か!伝わるわけねーだろ!不満に思うに決まってる。奥方は綺麗だしまずいぞ」


「まずいって何が?リリーシスに限ってそんな…まさか無いよな?」


「知らねぇわ!お前が奥方に愛人居てもいいなら何も言わん。ってか、よく奥方我慢したな。普通レスになったら1年くらいで皆愛人作るぞ」


「そうなのか?!知らん!そんな事は

知らんぞ」



「お前確認しろ。夜会に行かれる前に奥方に。そんな気があっておかしくないどころか当然だわ!この唐変木!今からでもいい、縋れ」


「なんて言えばいいんだ?『君は俺との結婚生活に不満があるから愛人を作る気でいるのか?』なんて情けなくて聞けない」


「そんな事言ってないで早く聞け!手遅れになっても知らないぞ。急いで帰れ!駆け足!」




…そんなやりとりがあり翌日。




また団長室でジェイクと2人。

ガロンは壁際に追い詰められていた。



「おい、それで首尾よく聞けたんだろうな?」


「い、いや…聞こうとは思ったぞ。思ったんだが…

どう切り出したらいいか分からず…庭の花がきれいだなって話になった…」


「お前は…!」


ドカッ…!!


「おい、まだ危機感ねぇのか?ヘタレか?馬鹿なのか?馬鹿だよな。奥方が行く夜会いつか知ってるか?今日だよ。お前が王宮のパーティーの護衛だから夜不在だからな」


ジェイクに股の間に足を、顔の横に手を突かれ、ガロンは目線を逸らし横を向く。

まさに()()()だ。

パラパラと落ちる壁の一部がジェイクの苛立ちを物語っていた。


『これが世間で言う壁ドン、そして足ドンかぁ…』

などと現実逃避しつつガロンは何とか言葉を絞り出そうとする。


「あ、あのさ……………ジェイク…

俺はどうしたらいい?」


「目、逸らしてんじゃねぇぞ。知らんわ!脳筋!世の夫婦関係良好な男は皆努力してんの。

言葉も態度も奥さんに好きだから一緒に居てくださいって乞い願うわけ。愛人とか恋人にも言葉を尽くして、エッチで表現すんのさ。それなのにお前既婚者だろ?胡座かいてるんじゃねぇ。いい夫婦関係は永遠じゃねぇ。家族としていても夫婦じゃなくなるぞ」


グイッと強く顎を掴まれ、横に向けた顔を正面に向けられて、正論をぶつけられ、ガロンのメンタルはガリガリに削られていた。


確かに、ジェイクの言葉は剣を振っただけ剣技に磨きがかかるのと同じ様に至極当然の事だとガロンは納得した。


反論の余地はない。


ガロンはかつて仕事でどんな危機的状況に追い詰められても、ここまでダメージを受けた事はなかった。


ややこしい事を考えるのがガロンは本当に不得手で、リリーシスやジェイクに頼り切ったまま生きてきたのだ。


「ジェイク、情けない事に自分でもうどうしたらいいか分からないんだ。

助けてくれ。」


ガロンは眉をへにょりと下げ、

普段の屈強さ精悍さなど微塵もなく半泣き状態でジェイクを見つめた。






特に人払いをしていなかった為、報告の為にドアを開けたガロンの部下は信じられないものを見てしまった。


壁に追い詰められ、潤んだ瞳を向ける団長と壁に囲い込み団長の顎を捕らえた副団長の姿を。


『あれが世間で言う()()()()()()かぁ…』


そしてそっとドアを閉めて、疲れた目を押さえ休憩を取りに行った先に、偶然出会った城の女官である妻に我慢できず団長室で見た出来事を話してしまい、女官ネットワークに乗って『騎士団長と副団長ができていて意外にも副団長が()()である』と瞬く間に広まってしまったのは余談である。

BLも好きなのでちょっと出ちゃいました。



今更見直していてファンタジーのジャンルに入れてしまっていた事に気付きました。

ハイファンタジー?ローファンタジー?何だろ?と思って押してしまったようです。

失礼しました。

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