1.はじまり
初めまして。
今まで読む専門でしたが、書いてみようと思い立って書き始めました。
よろしくお願いします。
よくある政略結婚だった。
貧乏な男爵家の三男でありながら、実力だけでのし上がっていったパイド・ガロン。
血筋と歴史だけの没落伯爵家のエリール・リリーシス。
地位とお金の需要と供給で成り立った政略結婚。
それが私たちの始まりだった。
ガロンは騎士らしく無骨で真面目で無口だった。
ちょっとその見えにくい、でも陽だまりの様な優しさに触れたら、家柄だけの少しお高とまった私も好きになるのに時間はかからなかった。
そう、彼は最初から優しかった。
そして幸せな結婚生活
…妊娠
…出産
…子育て
…以上!
めでたしめでたし!!
…おしまい。
ってなったら、私は今ここに居ない。
私は今、夜会パーティーに来ている。
ここは金持ちの平民から身分の高いお忍び貴族までが集う“いかがわしい”パーティーなのである。
ワンナイトでも愛人探しでも合意であればOKなディープなやつ。
ここに私は愛人を探しに来たのである!
結婚5 年目。
子供は結婚して1年程ででき、出産は魔法でパパっと!
…と言いたいがこの世界には魔法もなく、昔ながらな産み方で難産の末の男子を産んだ。
そこから乳母とか使用人は居たけれどバタバタと子育てしていたら、いつの間にかセックスレスになり数年…
で、今に至る。
私だって何とかしようと努力しなかった訳じゃない。
貴族的な表現でやんわりと閨に誘った。
「産後の肥立ちは悪くない。医者からもGOサインでたよ」
的な事を伝えてみたり、
→まだ体を労った方が良いだろうと遠慮される
ちょっと華やかで透けてる夜着をまとってみたり、
→今日は冷えるからな、と上着をかけられた
お酒でいい雰囲気にしてみようとしてみたり、
→酒に強くて夫は酔わず、自分だけベロベロになり就寝
媚薬盛ってみたり、
→ヒグマでも効くっていう強力なやつがなぜか効いてなかった
諸々。
…全部、鈍感な夫にスルーされたんだよね。
夫は軍人だからもちろん鍛えている。
見た目は黒髪短髪ブルーアイ。
筋肉盛々高身長。
言うなれば見目の整った熊。
だからか?
脳筋だからなのか?
リリーシスが誘っても気付いてない?わざと?ってくらい何もなく。
途中からはわざと気付かないふりをしてるのかもって疑うほど。
だから心が折れてしまった。
そんなに女として終わってるのかって。
もうそんな対象に自分はならないのかって。
少しずつの出来事でそれを突きつけられた気がして。
心がパキっと行った時、リリーシスは前世を思い出した。
日本人「ゆり」としての人生を。
ゆりには子供は2人、普通のサラリーマンの夫がいた。
いつの間にかセックスレスになって、何とかしなきゃって焦って、何度も話し合ったし、直接誘った事もあった。
でも最後に
「そんなにしたいの?性欲強すぎない?萎えるわ」
と言われてから、ショックで何も言えなくなった。
それから事故死して転生して、リリーシスになった。
で、前世思い出して思った。
「人生何があるか分からない。後悔しないように生きなきゃ」って。
貴族間の政略結婚が多いこの世界ではルールさえ守れば、男女問わず愛人は認められている。
・子供を作らないこと
・夫婦間で愛人がいることを秘密にしないこと(つまり相手に告知すること)
割とゆるい。
だから婦人達のお茶会でも話題になるくらいポピュラーな話で。
出会いの場と化している仮面夜会の情報をお友達に教えてもらったのである。
私はここで女として求められる事で自信を取り戻したかった。
まだ20代(後半だけど)
一児の母だけれど、女として愛されたかったから体型にも気をつけた。
育児の合間に運動や食事、美容のためになる事。片っ端やっていった。
乳母もいたし前世に比べれば自分の為に時間が使えるって素晴らしい。
ゆりの時は仕事もしてたし、旦那は協力的じゃなかったから。
見た目は割とぼろぼろで。
それがレスになった原因かもしれない。
…話が逸れたわ。
「前世の事は置いといて、今よ今。
私は何としてもここで愛人を見つけるのよ。」
仮面で隠した顔を俯かせて、小声で呟くリリーシスは一人華やかな会場の床を見つめている。
気合を入れて、背中が腰の辺りまでぱっくりと開いた真っ赤なドレス着たものの羞恥心が捨てきれず薄いチュールの羽織を羽織っている。
髪は緩く結い上げ、気品の中にも隙を感じさせる装いになっているはずだ。
『胸はさほど大きくないから背中で勝負と思ったのだけれど…
慣れないから恥ずかしいわ』
各々が談笑する中でソワソワと落ち着かず、バルコニーに出てきてしまった。
『やはりこのままではダメよ!
私は変わるのよ。もう後悔はしたくない』
己を奮い立たせ会場に向かおうと意気込んだリリーシス。
会場に戻るドアノブに手をかけ、力強く押したはずが、中から同時に開けた人がいて勢い余ってその人の胸に飛び込む形になってしまった。
勢いでなんとか1話…。
システムに戸惑いまくりです。
読んでいただけて本当に感謝です。