泣いていたんだから
少し進むと門が閉まり、部屋が明るくなった。
足元には鎖があちこちに転がっており、一歩歩くだけでジャラジャラとうるさくなる。
そして、中心には四肢に鎖が巻きつき、固定された少女が目を見開いてこちらを見ていた。
脳のほとんどをあたりの警戒に費やして問答を始める。
「なんで、ここに」
「なんでって言われても、封印解いて入って来ただけだけど」
彼女は首を横に振り、話を続ける。
「此処には、入口なんてものは存在しないの」
「は?じゃあさっきの門みたいなやつは?」
「アレの前にある廊下の方よ」
………
「たまたま迷い込むことは?」
「ありえないわね。絶対にありえない。此出入りするために必要な神力をもった存在なんて私を除いて創造神様か、あいつら二人くらいしか、、、そっか、あいつらはいないのよね」
声が明らかに落ちた、ヤバい、話題を変えよう。
「結局、創造神以外ない、と」
「…‥…ええそうね、ただあの方は一個体に執着することはないはずよ」
「私の方も接点がないと思うわ」
「情報が少なすぎるし、この話は終わりましょう。ところで貴女、名前は?」
「冬夏。そういう貴女は?」
「リメア・クリスよ」
「じゃあ、リメアさん一つ聞いていい?」
「何かしら?」
「なんでこんなところに封印されているの?」
彼女、リメアに害意というものが一切ない。どころか脳の出力を上げて稼働させている第六感(危機感知、擬似予知、ブレインダイブ、超直感、等)に悪に分類される感情が感知できないのだ。まぁ、反省しただけなのかもしれないし、悪意のない災害のようなものなのかもしれない。
彼女はキョトンとした顔でこちらを見つめた後、笑い始めた。
「あははははは、そうね!たしかにそう見えるわよね!」
「笑うようなところある?」
「ごめんなさいね、まさか私が封印されてると思われると思ってなくて……んふっ」
…………………帰るか
「あっちょ、ストップ、ストップ!お願い待って!またひとりにしないで!」
「じゃあ、余計なことはしないでくださいよ」
「わかったわよ」
ため息を吐きつつ、とある質問をする。
「あなたは何の神なんです?」
「よくぞ聞いてくれましたね!最高神たる3柱のうちの一人!賢ノ神 リメア・クリスよ!」
「ふーん」
「反応少なっ!?」
最高神ねぇ…封印されてる状態だからできるかわからないけど、信仰による加護はなかなか良さそうだ。
「ねぇ、もし貴女を信仰したら加護を受けられる?」
「えっ、信仰してくれるの!?」
「たかだか一人信徒が増えるくらいでしょう?最高神なんだから百万くらいはいるでしょ」
彼女の目が泳ぎはじめた。まさか、
「最高神なのに信徒が少ないの?」
「えっとですね、片手で数えられる程度にはいますよ 」
「嘘でしょ」
最高神なのに、少なすぎない?
「い、一応これには訳があるんですよ!」
「どんな訳?」
「…私の加護はスキルを使えなくする代わりに、魔力に関する能力を強化するんです」
「魔法使いには最高の加護じゃない」
「いいえ、魔法使いはスキルを使って魔法を使っているので、魔法が使えなくなってしまうんですよ。自力で発動させる為には最低でも10年はかかるんですから、やってられないんですよ」
なるほどね、この世界で生きて来たんだから、スキルが無い状態に慣れて無さすぎるというところね。
「信徒はどれくらいいるの?」
「5人よ」
「そう、良かったわね今から信徒が両手で数えられる程度になるわよ」
「えっ、それって…」
神典を取り出す。
「信仰:賢ノ神 リメア・クリス」
神典の形が変わっていく、装飾が豪華になり、様々な文字列によるアートができる。賢ノ神に相応しい装飾じゃ無いか。
「これからよろしくぅ!?」
彼女が勢いよく抱きついて来たって痛っ!?ボキッ、ってなった気がするけど我慢する、だって彼女は
「ひっぐ、ありが、ど、うぐ、どうがぁ」
泣いていたんだから




