プロローグ The worst and best party
西暦 22xx年 ◯月◯日 某所
ピンポーン
チャイムが鳴ると、焼きチーズを食べるのをやめ、玄関に向かう。
「はーい、なんでしょう?」
「お届け物です。本人確認を」
「分かりました」
配達員は私の首に機械を当て、本人確認を終わらせる。
荷物を受け取った私は、焼きチーズを食べながら中身を開けた。
「よく当たったよ、ほんと」
中には新作ゲームThe worst and best partyがダウンロードされた最新のVRゲーム機が入っていた。
抽選の当たる確率は0.1%とかなり低いが、私はそれを当てた幸運な女である。羨ましかろう。
「最高なことが起きてくれればいいのにな」
The worst and best partyはリアリティがすごく、β版では現実と遜色ないほどであったという。
ただ、悪い意味でも現実と遜色なく、痛みや血、内臓までもが作られているらしい。
まあそんなことはどうだっていい。分かってて抽選に応募したのだから。
ベットにダイブし、早速起動する。
視界が白く染まる。
「The worst and best party起動」
視界が変わり、宇宙のような空間に私一人が佇んでいた。
そして、どこからともなく声がした。
『ナビAI、Ms.Zと申します。早速ですが、プレイヤーネームをお決めください。』
機械的な音声ではなく、人としての温かみのある声だった。The worst and best partyはここまでリアルなのか、生きているように見える。
ちなみに、プレイヤーネームは、「冬夏」にした。私の本名が、四季 秋子だからである。春がない?どうったっていいでしょ。
『では、キャラクターメイクを開始します』
「髪を白髪にして、目は赤と青のオッドアイで」
『了解しました。他のーー』
「次」
『了解しました』
自分で言うのもなんだが、私は割と美人だ。
足はすらっとし、それなりに痩せている。胸はきいたら殺す。
『では次に、設定の説明及び、編集を行います』
「長い?」
「3時間程かかりますが、簡略化しますか?』
「お願い」
内容は大きく分けて4つ
・世界観設定
・ステータス
・スキル
・神典
1つ目、世界観設定
神様が間違えて魔物を作っちゃって、気づいた時には魔物を司る邪神まで出てきた。
そしてついに、地上には手が回らなくなってしまった。
そこで神様達は話し合った結果、異世界の人々を意識だけを召喚し、偽の魂と肉体に入れて戦わせると言う方法。
消すことはできなくとも、減らせるであろうと言う考えだそうだ。つまり私たちは神様の尻拭いをすることになる。
2つ目、ステータス
職業…その職業の職業スキルが使用可能になる、ステータスに補正が入る、初期から関係するスキルを獲得できる
HP…体力
MP…魔力総量
物理…身体的攻撃能力
魔質…魔力の質
物防…物理的ダメージ軽減(1以下にはならない)
魔防…魔力的ダメージ軽減(1以下にはならない)
俊敏…行動の速度
器用…遠距離攻撃の命中率及び、生産スキルの成功率上昇
3つ目、スキル
基本スキル…誰でも獲得することができるスキル
武器スキル…その武器の補正及び、技法の使用が可能なスキル
魔力スキル…魔力のみのスキル
生産スキル…使用することで、スキルに合ったものを作ることができるスキル
職業スキル…その職業でしか手に入れられないスキル
信仰スキル…信仰する神によって違うスキル
固有スキル…ゲーム内で1人しか得られないスキル
4つ目、神典
見た目は真っ白な本だが、神を信仰すると中にその神が記され、その神によって見た目が変化する。
この本に信仰する神が記されていると、加護を得ることができる。最大3柱まで。
固有スキルとかめっちゃ強そうだね。
ステ+スキル+加護で戦う感じかな。
『それでは、ステータス、スキル、神典の編集を開始して下さい』
どうやら初期のステータスは合計で100ポイント振れるようだ。ただ全ステータスに1ずつ振ってあるので、実際は92ポイントだ。MPとHPは1ポイントで10増えるっぽい。
「できた」
PN 冬夏 LV1
職業 なし
HP 10/10
MP 10/10
物理 31
魔質 31
物防 2
魔防 2
俊敏 31
器用 1
紙装甲の回避アタッカー、攻撃は最大の防御編成だ!最悪、防具で補ったらいい。
職業 なし が気になる?だって、固有スキルがあれば固有職業もあると言う寸法よ!
それまで私は無職の縛りプレイだ。
スキルも決まったぞ。
基本スキル
怪力…パッシブ、物理1.1倍(小数点切り捨て、以降省略)
濃魔…パッシブ、魔質1.1倍
快速…パッシブ、敏捷1.1倍
MP上昇…パッシブ、MP1.1倍
魔力スキル
身体強化・魔…物理、物防、敏捷を魔質の二割上昇させる(秒間使用MP5)
これを計算すると
PN 冬夏 LV1
職業 なし
HP 10/10
MP 11/11
物理 34
魔質 34
物防 2
魔防 2
俊敏 34
器用 1
なかなかいい具合だ
『では次に、神典をーー』
「無信仰で」
『…よろしいのですか?』
「固有スキルがあれば固有職業もある。なら、固有信仰は……変か、じゃあ一人しか信仰できない神もいるんじゃないかと」
『…分かりました。これにて設定は終了いたします。それでは、楽しんで下さい』
視界が暗転した。
焼きチーズ…グラタンの上のアレ