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セカンドライフはゆっくりと  作者:
第一章 異世界生活のはじまり
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迷子の聖騎士隊



 男は膝を付いたまま顔を上げ半透明な球状の結界を挟み、視界に捉えたプラチナブロンドの少年を見つめる。


 神々が動いたのならこの悪辣な呪いも消え失せるのかもしれないが、まだ幼き子供に過酷な試練を与え……


「あの、僕は神さまではないので拝まないで下さい」


 その言葉に「ふふ」と小さく息を漏らしながらも月明かりに反射する神々しいプラチナブロンドに眼球を失ったが視認できる目を輝かせる。他の者たちも同じなのかドクロに浮かぶ赤い瞳を輝かせる。


「その場では危険ですので結界の中にお入り下さい。敵意や悪意があると結界の外へ弾かれますので注意して下さいね」


 手招きしながら口にする神だろう子供の言葉に立ち上がった男は皆を促すように視線を送り目の前の半透明な膜のような結界に触れる。水に手を入れるような感覚のあとには教会の大聖堂を思わせるような神聖な空気に懐かしさを覚え、あとに続き入って来るスケルトンたちもどこか表情を緩めたような安堵した雰囲気で胸を撫で下ろす。


≪アンデットとなった我々なのに、このような神域へ招いてくれたことを感謝する!≫


「神域? 結界なだけで、ゆっくりして下さい。えっと、僕はマコトです」


≪自分は第三聖騎士独立部隊の隊長であるオールペンである。今から約三百年前に同盟国であるピースランドを救うべく派兵した聖騎士だ。このものたちは私の部下で……本来なら五百名の戦士たちだったが、いまでは二十名ほどにまで減り……≫


 部下であるスケルトンたちへ視線を向けるオールペン。自身がアンデットになっても自我を持ち活動している事にマコトは感心する。


「オールペンさんは凄いですね。アンデットになっても自我を保ち、部下と共に行動を共にして……」


≪禁忌の源に辿り着き破壊できればと考えているが、いつまでもピスタル王国の首都に辿り着けないでいるのだ……三百年も迷子をしているよ≫


「三百年もですか!?」


≪ああ、どうやら認識阻害の魔術も込められているのか目的地に辿り着けないのだ。我が隊の魔導士であるカノンがいうには、どこかに核となるものがあり認識阻害の魔法を強化していると≫


≪ですが、これも推測です。三百年も迷いながら同じアンデットを討伐していますが……≫


 オールペンが近くのリッチを紹介し、脳内に流れる声は女性のような優し気な雰囲気を感じるマコト。


「もしかしたら知っているかもしれないので聞いてみますね」


≪おお、本当か!≫


≪助かります!≫


 胸を反らし喜びを表すオールペンと両手を合わせるリッチ。他のスケルトンたちも盛り上がっているが念話が贈られてくることはなく、念話が使えるのはこの二人だけなのだろう。

 マコトはステータス画面を起動し通話可能な神から知っている可能性の高そうな名前をタップし通話し、その間にもスマートゴーレムのロイヤはまだ警戒しているのかブラッドソードを鞘に収めてはいない。


「もしもし、サクリーンさまですか? お久しぶりです。えっ、まだ一日ぶりだろうって? あはは、そうですね。それよりも聞きたい事があって……はい、見ていたのですか? 母さんも見ていたと……

それでオールペンさんたちが辿りつくにはどうしたら、はい、全体で動くのではなく部隊を二つに編成して間隔を開けて線を引きながら歩く? 認識阻害がある場所は自然と方向を誘導され先を行く隊が不自然に曲がったらその場所が認識阻害の魔術が掛かっていると……

 なるほど、後ろの隊は認識阻害のエリアではないから先を行く隊の異変に気が付け、声を掛ければわかるという事ですね! 凄いです!」


 マコトの声を聴きながらオールペンとカノンは二人で頷きカノンが部下たちに説明し、マコトは魔法神サクリーンからのアドバイスを聞きながらニャンコホームをタップし、真実の眼鏡なるアイテムを検索し購入する。


「真実の眼鏡は認識阻害などの幻術系を打ち破り見渡すことができるのですね。はい、購入できました。これを渡せばいいのですね……はい、破邪の腕輪ですか? はい、ありました。購入っと、これを使えば瘴気汚染で精神を守ることができるのですか……カノンさんに渡せば支配下にあるから全員を守ることができると……はい、わかりました。わかりましたけど、どうしてこんな危険な地に転移させたかだけ聞きたいのですがって、切れてる……」


 ニャンコホームから真実の眼鏡と破邪の腕輪を購入し、急に通話が切れやるせない気持ちを抑えながらスケルトンジェネラルであるオールペンに真実の眼鏡をリッチであるカノンに破邪の腕輪を渡そうとするマコト。二人は膝を付いて頭を下げながらそれを受け取る。


「あの、普通に受け取ってくれた方が……」


≪いまの会話からもマコトさまが神子さまであることは明白! 我らが今日まで聖騎士として活動できたのも神々の力あってのこと! 感謝致します!≫


≪魔法神サクリーンさまの名が出たときは驚きを通り越して心臓が止まるかと思いました……≫


≪心臓はもうないだろう。ガハハハ! カノンは神子さまの前でも普段通りで恐れ入る!≫


≪ちょっ!? それでは私が普段からドジだと神子さまに思われて! も、申し訳ありません! 神子さまの前なのに!≫


 深々と頭を下げるリッチのカノン。その横では身を起こし笑うオールペン。後ろでは膝を付いて頭を下げながらもカタカタと骨を鳴らす聖騎士たち。マコトも自然と笑みを浮かべる。


「えっと、いま渡した魔道具の効果をお教えますね。オールペンさんに渡した真実の眼鏡は認識阻害などの幻術を見破る効果があります。破邪の腕輪は瘴気から身を守る効果があって、ピスタルの街や城の中でも安全に動くことができるそうです。カノンさんが装備すれば支配下? の隊員さんたち全員に効果があるそうですよ」


 マコトの説明にオールペンは早速真実の眼鏡を装備し耳がなくてもずれ落ちない事に喜び、カノンは支配下という単語に身をビクリと震わせるが破邪の腕輪を抱き締めながら深々と頭を下げる。


「これでこの地を開放する糸口が見つかった! 三百年……死してさ迷い続けたが……神子さま、感謝致します!」


「………………本当にありがとうございます」


 立ち上がり敬礼するオールペンとカノン。後ろに控えている隊の者たちも同様に立ち上がり敬礼を取り、マコトも深々と頭を下げ、ロイヤもブラッドソードを鞘に収め完全に警戒を解いたのか頭を下げる。


「無理をしないで下さいね。生きて入れ、死んでいるかもしれませんが勝機があるときは他にもあるはずですから」


「うむ、瘴気対策を授かったからな! ガハハハハ!」


「隊長! 不謹慎です! 瘴気対策が出来ずに乗り込んでいたら私たちまで只々暴れるスケルトンになっていたんですからね! 神子さま、本当に感謝致します!」


 身を反らして笑い声を上げるオールペンを数度バシバシと叩くカノン。オールペンは笑い声を止めるとマコトと向き合う。


「では、我らは敵討ち。いや、未来のために戦って参ります!」


「神子さまはどうか心安らかに御過ごし下さい」


「はい、僕がこの地で皆さんの活躍を祈っています。どうか無理だけはせずに、頑張って下さい」


 その言葉を受け第三聖騎士独立部隊の者たちは頭を下げ結界の外へと向かい、手を振りながら別れるマコト。月明かりに照らされながら進む彼らが見えなくなるまで手を振り続けたマコトは大きな欠伸をしてロイヤと共に家に向かうのであった。







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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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