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セカンドライフはゆっくりと  作者:
第三章 マコトの影響と近隣住民
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西の都ドラオールでの報告



 サイガ帝国にある西の都ドラオールでは公爵家と冒険者ギルドのトップを交え調査隊の報告が行われていた。普段は貴族や商人を招き晩餐会が行われる気品ある一室に集められたものたちは着慣れない服装を纏い、現公爵家当主とその夫人の前で口を開く。


「光の柱の正体は神々の召喚であり、その地にはマコトと名乗る少年が居を構えておりました。マコトさまは創造神ルミナスさまに体を新たに作られた異世界のものであり、これは神子さまと認定して良いかと思います。それに加え、死の平原の呪いは龍神さまと魔法神サクリーンさまにより解呪されました。炎は長ければ数ヶ月残るそうです」


 代表してリンセンが報告し、ポカンと口を開けて固まる侯爵のドライラロ・フォン・ドラオール。それと同じ表情で固まるのは息子のドラードロ。この街の冒険者ギルド長も同じように口を開け固まり、正気なのは報告をしたものたちと侯爵夫人であるリンカ・フォン・ムラサメ・ドラオール。

 現侯爵であるドライラロに嫁ぎ子を残した東方の姫で、数日前までは王都におりサイガ王国の王妃や宰相の妻と食事会に参加していたが急ぎ帰宅してこの場に参加している。


「それはご苦労であったな。して、あれは龍神さまであったと?」


 固まっている他のものたちの代わりに口を開くリンカ。


「はい、それは間違いないかと……実際に分体である神龍さまと触れ合いましたので」


「触れ合っただと!? それはどのようなものだったのだ?」


「それは私たち姉妹や雷光の約束のものたちに傭兵ギルドのものたちも皆で撫でさせていただきました」


「竜の鱗をはじめて触りましたが何とも言えぬ触り心地と質感を感じました。サイズもこれぐらいで思っていたよりも可愛らしい声で鳴き、カラアゲと呼ばれる料理を好んでおりました」


 セピアとセルラからの説明を聞きながら羨ましそうな瞳を向ける。


「やはり私が行くべきだったな……呪いが解けたのなら次は私にもチャンスがあるな!」


「チャンスがあるではありません!」


「そうでござるよ。実際に傭兵ギルドのキララとアムドラが命を落としたでござる。ラプトルの集団に加えワイバーンが共闘する危険な地、どんな強者だとて次の瞬間には命を落とすような場所ござる!」


 傍に仕えるメイド長とアズキからの言葉に口を尖らせ、命を落とした二名は何とも居心地の悪さを感じていた。


「キララとアムドラの話では死した瞬間の記憶は失っており、禁忌とされてきたリザレクションなる復活魔法は魔法神サクリーンさまが作られた魔法であると……実際にこの目で使用されるのを見ましたが、マコトさまのように膨大な魔力がなければ実現不可能だと雷光の約束のレモーラが申しておりました」


「最大出力で長い時間魔力を流しておりました。もし、使用するにも複数の宮廷魔導士クラスが協力すれば可能かもしれません。ですが、現実的には厳しいかと」


「ほう、その根拠は?」


「禁忌とされているだけあって実際に見ても魔法陣に靄が掛かっており解読不可能でした。可能性があるとすれば聖王国に残る資料を分析するか、マコトさまに直接教わるか……ただ、あの地にもう一度宮廷魔導士を引き連れ戻るのは御遠慮したいです」


 レモーラが不敬を覚悟にリンカの瞳を見つめ口にする。


「そうか……傭兵ギルドからも同じようなことを言われたからな。リンセンたちはどうなのだ?」


「自分は命令となれば拒否権はありません」


「私たちも同じです」


「マコトさまの料理や酒が楽しめるのであればまた行きたいぐらいです」


 リンセンは近衛兵として答え、セピアとセルラも前向きな回答に貴族の矜持があるのだろう。


「ですが、マコトさまは東方に興味があり、アズキ殿と親し気に話しておりましたな。アズキ殿が頼めばリザレクションの使い方を教わることも可能なのではないか?」


「わ、私でござるか……拙者は身体強化ぐらいしか使えないでござるから、」


「仲介役としてです。神官などならもしかしたら可能性があるかもしれん。マサキ殿も親しそうにしていたな」


「彼も東方出身でしたし、黒髪という共通点がありますが……もしかしたらこちらの世界に来る前のマコトさまは黒髪だったのかもしれませんね」


「おにぎりなどの米料理は東方で今も食べられているでござるが……」


 腕組みをしながら考えるアズキ。


「マコトさまに見初められれば妾ぐらいにはなれるかもしれんぞ?」


「なっ!? マコトさまはまだ十才です!」


 リンカの言葉に顔を赤くして語尾のござるを付け忘れるアズキ。


「そんなに若いのか……アズキなら剣の腕も立ち胸も大きく良妻になると思ったのだがな」


 顎に手を当て他の女性たちに視線を送るリンカ。胸の小さなレモーラだけは死んだような瞳で俯いているが、セピアとセルラは顔を上げ自分が選ばれないかと期待に満ちた表情を浮かべる。


「アズキ殿はマコトさまが東方へ向かう際に案内をすると約束をしていたな」


 リンセンが報告し忘れていた事を口にするとアズキはコクリと頷き皆の視線が集まり、フリーズしていた侯爵やその息子も視線を向ける。


「そういった約束は確かにしましたが、マコトさまは転移という魔法が使え、船を使わずに瞬時に長距離を移動できます。現に拙者らを国境内に送ってもらいました」


「それも報告書にあったが、我々で転移魔法を扱える可能性はないのか?」


「恐らくは不可能でしょう。転移の門を通る時には恐怖を覚えるほどの濃密な魔力を感じました。仮にできるとしたら宮廷魔導士をどれ程用意すればいいか……」


 リンセンの疑問に答えたのはレモーラであり、他のものたちも転移の門を抜ける際には強大な魔力の塊りだと瞬時に理解し恐怖しながら転移したのである。魔力をあまり感じる力がないものからしたら問題なく抜けることができるのだろうが、魔法使いであるレモーラやアイテムボックスの魔法が使えるマサキなどは顔色が悪くなる程で逆に魔力の才能がないリンセンやセピアとセルラは平然と通り抜けていた。


「もしも叶うのならマコトさまが帰るときにでも一緒に住んでいる場所へと送ってもらいたいものだな」


「お優しいマコトさまならそれも叶うかもしれませんが、あまり迷惑を掛けては……」


「そうだな……」


 椅子の背もたれに体を預け腕組みをしたまま天井を見つめるリンカ。


「おっ、そうだ! マコトさまが東方へ行く際は私もついでに里帰りをしよう! そうすれば故郷にも帰れるしマコトさまに東方を案内できるではないか!」


 グイッと体を起こして名案だと口にする。


「拙者が案内するよりもリンカさまの方が東方を案内できるでござる。ですが、マコトさまの目的は恐らく食料品でござるよ。東方で作られている醤油や味噌にみりんなどを購入したいと申して……もしかしたら海産物などを用意すれば喜ぶかもしれません……」


「それは私も喜ぶぞ! 内陸にあるこの地では新鮮な海のものが食べられないからな! たまには刺身が食べたいものだ!」


「刺身で思い出しましたがお土産に酒を頂いたでござる。他にも味噌や醤油なども」


「何っ! それは楽しみだな!」


 両手をテーブルに付け立ち上がるリンカ。アズキは失言をしたと思った時には遅く、既にリンカの中では味噌や醤油を使った料理と酒を楽しむ事しか考えておらず、顔を引き攣らせるアズキ。


「これは国王陛下や王妃も呼ばなければ後で嫌味をいわれそうだな……」


 リンカの呟きに顔色を真っ青に変えるアズキはこの後、強制的に王都まで一緒に付いて来たリンカと共に国王陛下と王妃の前に連れ出されるのであった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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