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セカンドライフはゆっくりと  作者:
第一章 異世界生活のはじまり
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ゴーレムと天界



 家の内部の確認を終えたマコトは二階のバルコニーから平原を見渡す。どこまでも続く平原や遠くに見える山々、赤土が剥き出しになっている荒野や近くの森林などが目に入る。近くには川も流れ光を乱反射させ美しく、ここからの風景はもうひとつの絵画のように思えワクワクとした気持ちを抑えながら異世界生活のはじまりに心を躍らせていた。


「拠点が完成したら畑作りと種と植えて、ああ、お供選びもまだだったっけ……神々を呼び出すのは天界に迷惑が掛かるからなしにしても、農作業を手伝ってくれる人材は欲しいよな。手先が器用で力持ちで……」


 ステータスウィンドを開きお供召喚の項目をタップするマコト。先ほど見た神々の項目は飛ばしURウルトラレアのページへ進むと過去の英雄という項目が目に入る。


「過去の英雄……どう考えても神になっているか、もうなくなった人だろ。このページも飛ばした方がいいな」


 サッと目を通し剣王や剣聖に魔道閣下などのこの世界で伝説とされる英雄のページを飛ばし、今月のセールというページに辿り着く。


「今月のセール? セールってことは安く少ない魔力で召喚できるのか」


 ページを捲った先には創造神ルミナスと書かれたページがあり先ほどと同じことが書かれている。


「………………神をセール品にして良いとは思えないのですが……」


 素早くページを進めると神以外にもセール品はあるようでSSRスーパースペシャルレアスマートゴーレムやLRレジェンドレア邪神にSRスーパーレア死霊使いなどがあり思わず叫ぶマコト。


「邪神って! 安売りせずに封印だろ! 項目に入れるなよ!」


 バルコニーから大声でツッコミを入れつつも目に入ったスマートゴーレムSSRの項目をタップする。




 スマートゴーレムSSR

 錬金の神トリスが作りだしたゴーレムの一体。ゴーレムのなかでもスマートな体系で手先が器用。錬金術のサポートも可能。別売りの強化パーツも販売中。

 必要魔力量 500MP

 セール品につき半額の250MPにて販売中



「手先が器用なのはいいな。ゴーレムが相手なら喧嘩することもないだろうし、錬金術のサポートができる知能があるのなら畑仕事もできるよね。別売りのパーツも気になるな……よし、決めた!」


 スマートゴーレム購入の項目をタップすると体から魔力が抜け軽い気怠さを覚え、画面を確認すると召喚可能という文字が浮かび上がりそこをタップするマコト。タップすると足元のバルコニーに魔法陣が浮かび上がりそこから迫上がるように出現するスマートゴーレム。

 スマートゴーレムは二メートルほどの身長でスマートと名前に付くようにやせ型であり、関節部には球体関節が使われ、手も成人男性と変わらないサイズに見える。基本的にはスマートなのだが顔には赤いラインが横に入っているような瞳で、その視線がマコトと合うと片膝を付いて頭を下げる。


「これから畑を作るので手伝ってもらえますか?」


 顔を上げたスマートゴーレムは立ち上がり一度頷くと視線を外へと向けそのままダイブし、呆気に取られるマコト。恐る恐るバルコニーから下を見ると玄関先で腰まで埋まっているスマートゴーレムの姿に、召喚選択を間違えたかもと苦笑いを浮かべるのであった。





 天界では創造神ルミナスが立体的な映像を見つめ複雑そうな表情を浮かべている。その横では天使長が眉間に皺を寄せて目を細め、闘神ナックルはゲラゲラと笑い肩を揺らしている。


「トリスが作ったゴーレムなんか選ぶからああなるんだよ。効率を重視して飛び降りたんだろうが足場の確認ぐらいしろよな」


「まったくです。あのような石人形にマコトさまの従者が務まるとは思えません」


「そんな小さなことよりもお母さんである私を呼ばないのが天界の事を思ってと……まだ十歳という若さで自分ではなく他人に気を使える素晴らしいヒューマンに育ち、うぇ~ん、立派に育ってるよ~」


 まだ送り出し半日も過ぎていないのだが涙を流し感動する創造神ルミナス。その横ではスマートゴーレムに不満を抱いていた天使長も薄っすらと涙を浮かべ、ゲラゲラ笑っていた闘神ナックルも思う所があるのか拳を固める。


「マコトの希望通りにヒューマンがいない地に転移させたが……いま思えばもっと鍛えてやれば良かったな」


「あの地は多くの狂暴な魔物に加え、戦争で大量のヒューマンが非業の死を迎えた呪われた地です。その地を浄化する使命を負っているのですから仕方がない……とはいえ、マコトは強い子に育っています。信じて待つのも親としての務めです」


「うぐ……うん、そうだよね……そうだよね……マーくんはやればできる子だものね……」


 涙を拭いながら口を開く創造神ルミナス。


「ほらほら、辛気臭い顔するなよ。あいつは頑張ってるだろうが、お前がそんな顔してると知ったら悲しむからな」


「それに書類も溜まっております。そちらの確認もしていただかなくてはなりません」


「そ、そこは天使長が代わりに……」


 闘神ナックルに励まされ、天使長からは仕事の話を振られ違った意味で涙が頬を伝い流れるが天使長は笑顔でデスクに積まれた書類を指差す。


「作業が滞ると他で問題が発生します。マコトさまの行動が気になるのは理解できますが、先ほども申しましたが信じることも必要です」


 そう口にする天使長だが腕を引き下半身が埋まったスマートゴーレムの脱出を手伝うマコトを見続けている。


「信じる……そうですね! マー君は私の息子だもの! やればできますね!」


 両手を合わせて微笑みを浮かべる創造神ルミナス。頬を伝う涙を拭い仕事をすべくディスクへと向かい書類と戦うことを決意する。


「仕入れが終わったのにゃ~マコトはどうにゃ? 頑張っているかにゃ?」


 部屋のドアが勢い良く開き猫耳の少女が現れ片手を上げて元気に挨拶をし、それに対して怪訝そうな瞳を向ける闘神ナックルと天使長。


「カワセミさま、ドアはノックし入室の許可を取ってから入るものです」


「そうだぞ。お前のそういう行動でマコトの前世は終わったんだからな。反省してないのかよ……」


 天使長からは一般的な常識を、闘神ナックルからはマコトがこの世界へ転生するきっかけを口にされ苦笑いを浮かべるカワセミ。


「そ、それは反省しているのにゃ。ノックも気を付けるのにゃ……で、マコトはどうにゃ? 結界は? 家は建てたのにゃ? 畑は作ったかにゃ?」


 また怒られないよう速足で二人の元に向かい部屋の中央にある立体映像へと向かう。


「ゴーレムを召喚したのにゃ? もっと精霊や英雄を召喚するのかと思ってたのにゃ」


「精霊はわかるが英雄は召喚しないだろ」


「マコトさまは人間関係に疲れていましたので同じ人型の英雄などは私も召喚しないと思います。それよりも口のまわりに付いていますよ」


 天使長の言葉に慌てて口を拭うカワセミ。手には先ほど食べていたかつお節と青のりが付着し苦笑いを浮かべ、天使長が手を翳すと光が降り注ぎ胸元に付いていたソースの汚れが綺麗にサッパリと消え失せる。


「またあの星で美味いものを食って来たのかよ……」


「ち、違うのにゃ! 味見をしただけなのにゃ! マコトが購入するだろう商品の仕入れに行っていたのにゃ!」


「ですが、美味しいものは食べてきたのですね?」


 天使長の問いにだらしない顔へと変化させ先ほど食べた海鮮のお好み焼きを思い出すカワセミ。カワセミはこの世界の商業を司る神であり、異世界へ商品の仕入れに行くことができる稀有な能力を持っている。


「でもでも、本当に味見なのにゃ。お土産も買ってきたのにゃ」


 肩に掛けているバッグから日本酒といろいろな味のタコ焼きを取り出すとまだ熱々なのか湯気が上がり笑みを浮かべる闘神ナックルと天使長。手を止めデスクから羨ましそうに見つめる創造神ルミナス。


「ルミナスさま、熱々のうちに頂きましょう。仕事中ですのでお酒はダメですが、お茶用意をしてまいります」


「うん! みんなで食べよう!」


 天界ではマコトのリアルタイム映像を見ながら皆でタコ焼きを口にするのであった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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