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街中の狭間

 わたしは人波に揺れながら、梅玲の行方を見た。梅玲は、悲鳴に引きつる顔の間を、浮き沈みしながら、前へ進んだ。わたしは自身を取り巻く渦の中心を、少しでも彼女に近づけようと焦っていた。


 燃え上がる炎は、上気する風に乗って、自らの意志で、屋根から屋根へと飛び火した。捌け口を失いつつある群衆は、人の壁にぶつかった。


 「消火だ、消火だ! どいてくれ」 と叫ぶ兵士が、大勢で駆けて行った。


 わたしは、少しずつ自らの危険を感じ始めた。梅玲に追いつくためには、暴徒の一団の中に飛び込まなければならない。わたしの身体は、押し詰めた肩の間を抜けることができない。背後からうめき声が上がるたびに、誰かの手が身体に触れた。冬のべたつく汗が、肌と肌とで吸い付き合った。


 わたしは、何度も梅玲の名前を呼んだ。彼女が気付いている様子はない。炎に照らされた碧髪の結び目が、逆巻く風に揺れる花のように輝いていた。


 わたしは、強く背中を押されて、梅玲に追いついた。彼女は驚いた表情を見せた。間もなくわたし達は、急な勢いで小路の奥へ押し込まれた。群衆は、わたし達の抜けた隙間に、倒れるように流れ込んだ。


 飛び上がったわたしの身体は、背中の方まで自由と落ち着きを取り戻した。


 「靴沓を片方失くしてしまいました」 と梅玲は言った。

 「この様子なら、無事ではないでしょうね」


 街中の挟間から眺める景色は、血と煙に彩られた悲鳴と怒号、そして暴力と欲望そのものだった。人と人が敵視し合い、殴られ、蹴られ、斬られ、絞められていた。わたしは、胸の奥が苦しくなるようで、目眩と吐き気を感じた。


 梅玲は言った。


 「さあ、先に行きましょう。わたし達は、地獄を抜けたのですから」


 わたしは意識の定まらない世界の中で、梅玲の後に続いた。それは過去の狂乱から逃げるような歩みだった。

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