表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/81

観灯会の日

 観灯会は、十五日の昼から賑わいを見せた。異国の姿をした楽団が街頭を行き、彼らの音色に合わせて、胡旋舞や花舞が披露される。酒肆に卸された葡萄酒を口にするのは、何年ぶりのことだったか。わたしは酒杯を片手に城内を歩き、見物した。


 年末には、殺気ばしる忙しさがあった大通りも、今日には、正月遊びに人びとが興じていた。綱引きに大笑いをし、青竹に火を着けて鳴らした。馬よりも駱駝に乗る軽商人の数が目についた。安史の乱以前の大唐帝国の繁栄が、ここに出現しているかのように思われた。


 わたしは歩き疲れると、馴染みの茶屋で、正月の団子汁を頼んだ。餅の中の餡を、ずいぶん甘くしてもらった。わたしは、それを平らげると、酒と人とに酔いながら、茶屋の席に居座った。卓子に肘をついて、体格の良い女が、大きな態度で座っているのだから、店の売上には迷惑だったかも知れない。それに文句を言わないのが、この店と主人の良いところだ。


 わたしは、半ば眠りかけていたのだと思う。主人が、わたしに話しかけていた。


 「北里の方は、見に行かれたか?」


 わたしは、数日前の呂氏に姿を見られて以来、あの辺りに近づくのを、どことなく避けていた。


 「今年もかなり華やかにやっているそうだ」 と主人は続けた。

 「どこの見世が、いちばんの灯籠を出せるのか、自然と勝負になっている。大きさだったり、数だったり、いずれも意地を出しているのだ。南面の街並なら見られたか?」


 わたしは、自分の見聞きしたことを話した。寺院の周りには、いくつかの灯籠が並べられていたこと、人びとが酒宴に興じていたこと、綱渡りをして見せる軽業師が見物料を集めていたこと、偸盗や私娼の類いが少なくなかったことなどだ。


 わたしは言った。


 「わたしは、あの場所が愉快で好きだ。人の性質も素直だ。しかし、財産や地位のある人間が近づくべき場所ではないな。特に今日のところは」


 主人は、「そうか」 と答えた。何にも是非を決しない態度が、わたしにとって居心地が良かった。


 日が落ちてきて、灯火の着きはじめる頃合いになった。わたしは、代金を多めに置いて、席を立った。


 「楽しんで」 と主人は言った。


 観灯会の日は、これからが本番なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ