情事の果てに
わたし達の腰は、上下するたびに、淫靡な音を立てた。朝の妓楼は、長安にあるどの建物の裏よりも静かだ。散らかった室内には、わたし達の声と、一定の調子を打つ音だけが響いた。
わたし達は、向い合った姿勢のまま、何度も視線が会った。冷たい情熱が、目の中にあったと思う。わたし達は、冷静になるほどに、奇狂になることを求めた。互いの唾液をずいぶんと飲んで、渇きを感じた。
二人の情事は、このまま永遠に続くのではないか、とさえ思った。身体は意に反して、限界を迎えつつあることに、わたしは気付かないようにしていたのだろう。陰部は擦れて痛み、足腰は動きに耐えなくなった。
わたしは、相手の提案に従って、二人でこのままの姿勢で果てることにした。もしこの情事が、小説の出来事であったのなら、何か劇的な結末が与えられるはずだ。愛を叫び合ったり、身体が烈しい痙攣を起こしたり、わたしはそのような場面を何度も描いてきた。愛欲がどこまでも高まり続けることは、現実にはない。
わたし達の交情は、静かに消える別れに似たものとなった。男が果てたのは、吐息から感じられた。わたしは最後の快楽を味わうために、それから十回ほど腰を動かした。震えるわたしを、男はぼんやりした目で見つめて、力なく抱いた。そのまま、わたし達は口唇を重ね、倒れ込んだ。
互いの舌を吸い続けているうちに、萎んだ男の陰部が、わたしの中から押し出された。精液は奥の方で出されたらしく、しばらくの間は垂れて来ることがなかった。
呂氏は、湯にひたした紙を取った。わたしの口の周りを拭いて、濡れ切った足の付け根の方まで世話してくれた。わたし達は、一度口付けを交わした。わたしは、横に寝転んで、少し話をした。目が覚めたら、昼になっていた。小窓の隙間からこぼれる日差しは、日陰者の眼には刺すようにまぶしかった。
わたしの尻の下は、愛液でべたついていた。死体のように重い身体を持ち上げると、その場所を掃除した。この時間ほど、女にとって哀れなものは少ない。
「行くのか」 と男は小さな声で訊ねた。
「そうだ」 とわたしは答えた。
おそらく夕方から、呂氏は誰かと面会する約束があるに違いない。朝の時間を指定したのは、そうしたわけなのだろう。
男は言った。
「居ても良いのだぞ」
わたしは、それに同意しなかった。身支度をして、部屋を出ようとすると、背後から声がした。
「わたしは、お前を愛していたのだ。それだけは承知してくれ」
わたしは肯首した。




