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ある生きる道

 呂氏の手が、内腿を伝って、その奥に進むのを感じた。指先がその付け根まで達したとき、思いがけない声がわたしの喉首の奥から発された。


 わたしは自身の陰部が、他人の手によって淫靡な音をたてるときほど、気恥かしく、妙な申し訳なさを感じることはないと思った。目の前の男だけには聴かせたくないわたしの心の声は、吸い付くような音が代わりとなって、周囲に響いているのだ。


 わたしは耐えられなくなって、素肌の男の胸元に顔をうずめた。二度と顔を合わせることなどできないような心持ちがする。


 呂氏はわたしの足を広げさせて、自らの下腹部を重ねて当てた。呂氏はわたしの肩を掴んで、顔をのぞいた。わたしの表情がどのようなものだったか、もはや推測することしかできない。おそらくは無理やりに真面目な顔を作っていたのが、奇妙な印象を与えることになっていたのだろう。呂氏は、小さく笑うと、幼子を宥めるような言葉をささやいた。呂氏は、自身の着物の裾をたくし上げた。


 全てが真っ白になってしまいそうな感覚が全身を駆け周った。呼吸が止まって、身も心も蕩けて、羞恥や悲しみなど忘れるほどに、わたしは茫然とした。。呂氏は、震えるわたしの身体を柔らかく抱いて、落ち着くまでじっと動かなかった。男のこのような優しさが、わたしの擦れ切った心を慰め、また悲しくもさせるのだ。


 「お前は寂しかったのだな」 と呂氏は言った。

 「分かるさ、わたしも同じなのだから」


 わたしは、呂氏が以前話していたのを思い出した。曰く、わたしは政治というのものが好きではない、と。政治の世界では、あらかじめ座れる椅子の数は決まっており、その場所を争って、意見を衝突させ、他人を蹴落とし、満足しなければ、生きて行けない。勝っても負けても、とてもまともな人間では居られない。誰かを愛する行為のように、身も心も一つになることはできないのだ。


 わたし達は、戦乱という最も政治らしい出来事によって運命を決定付けられた。そのとき、わたしはなぜ自分が性愛を書くことに執着するのか、その理由を悟った。世間に対する復讐などという題逸れたものではない。もっと皮肉で、卑屈な、嫌味な態度なのだ。


 目の前で、話をした男は、どのような意見を持っているのだろうか。わたしは気にはなったが、ついに訊ねることはしなかった。

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