似つかわしくない言葉
呂氏の身体は、少しだらしがなく、締まりがなかった。怠けるのが習慣づいている人物の腕の柔らかさだ。それでも、姿態の一つひとつにある種の優雅さと正確さがあって、武芸に着いて得たところがあるのが感じられた。仰向けに寝そべるわたしに、男は愛をささやいて、その際、身体を手で支えながら苦しいような様子は見せなかった。
わたしは目の前の首筋に吸い付いて舌を出すと、男はくすぐったそうに身を引いた。呂氏は、微笑と甘さの入り混じる声をあげると、指のひらでわたしの内腿をなぞり始めた。ちょっとした復讐のつもりのようだ。
わたしは自分の足が、弱点だと感じたことはなかった。これまで何人かの男を膝の上で寝かしつけてやったことがあるが、その折にもくすぐったさを感じることはなかった。女の身体というのは、どうしてこんなにも心境に左右されるのだろうか。わたしは初めての居座りの悪い快楽を味わっていた。
呂氏は、今日を早い時間に訪れるように指定した。わたしは、その理由を悟った。男はこれまで以上に丁寧に、それもじれったいくらいにわたしを悦ばせるための行為をした。
わたしが身を震わせ、息が詰まりそうなほど苦しくなったとき、呂氏はこちらの顔を覗き込んだ。それから息の上がる女の頭を撫で、額に口付けをすると、呂氏は優しく微笑んだ。
「普段は謹厳な様子のお前が、こんなにも正体を失うさまを見せるとは。わたしを好いているのだな?」
とんだ自惚れだ、とわたしは思った。なんの恥じらいもなく、そのような言葉を口に出来るくらいに、呂氏は自らの存在を特別なものだと信じていられるのだろうか。わたしは美貌と身分の全てを具えているような、目の前の男を実に嫌な人物だと思った。
呂氏は言葉を継いだ。
「いや、違うな。好いているのは、わたしの方だ。どうかお前の心を全て見せてくれないか? いつになっても、わたしが忘れてしまわないように」
わたしは、男の言葉の裏にある意味を理解しようと努めた。わたしはどんな自分を見せれば良いのだろうか。正直な思いを口にすれば、二人の関係がただ苦しいものになるだろうことは分かっていた。
わたしは言った。
「わたし達にそのような言葉は似つかわしくないだろう」
その通りだ、と言わんばかりに、呂氏は表情を作ってから、自らの口唇をわたしに重ねて塞いだ。




