不確実な器
交情の始まりに際して、わたしは切なく思うことが、時おりある。
目の前にいる人物との関係は、今この瞬間が絶頂で、以後は互いの感情が冷めて行くだけではないか。これからの関係は、ただ馴れきり、退屈な間柄が続くに過ぎないのではないか。わたし達の身体は、あまりに大きな愛情と欲望とを満たしきるまでに十分なほど、おそらく丈夫で確実な器としては造られていないのだ。
そう思うとき、わたしは目の前にいる男に対して、多少の情をかけたことに気付かされている。
呂氏は、わたしの舌先を吸いながら、まずは衣服の上から、垂れ広がる胸を撫でた。花の上に泊まる胡蝶のように優しく、けれども渇きを癒そうとする切実さを感じた。いつの間にか息が詰まるほどに長い口接を、わたし達は交わした。
男は、わたしの胸の付け根から先の広がりまで、ほんの会釈くらいに優しく触れると、相手の身体の微細な反応に注意を払おうとする様子だった。それほどに熱心にならずとも、男の手管は優れたものだった。指先はわたしの急所をつまみ、手のひらで胸を包みこみながら、柔らかく捏ねるようにもむと、くすぐったさに身体はよじれていた。このようなとき、足の動きは何よりも雄弁だ。膝を曲げたり、伸ばしたり、身体は快楽の先端から逃れるために、足は定まらない場所を探した。その間も接吻は続いた。
少しずつ情欲の高まる二人の口先は、その都度音が高くなった。互いの耳を塞ぎあって、頭の中に吸い付く音を響かせた。
交情に不馴れな人物ほど、相手の口周りを舌で濡らしてしまいやすいものだ。わたし達はどちらも不馴れとは言えないのに、長い接吻を終えて見ると、唇は糸を引いて、湿り切っていた。
――二人はもう冷静ではないのだ。
男の目に宿る情欲の灯火と、そこに写るぼんやりした女の顔を見たとき、わたしはそう思った。この女は、こんなにも生きいきとした艶のある表情ができるのか。わたしは、初めてのわたしを知ることになった。




