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心への触れ方

注:ここから本章の終わりまで、刺激が少し強めです。苦手な方はご注意ください!

 「どうした、ひどくせっかちなのだな。お前らしくもない」


 わたしは、そう言おうとした。が、言葉を言い切る前に、わたしの口先は塞がれていた。男のどこか切実な様子が、口唇にかかる吐息の熱から伝わった。


 呂氏は言った。


 「今日はお前の心に触れたいのだ。決して忘れられないような本心に」


 わたしは、ついにこの瞬間が訪れたのだと理解した。互いに意識しつつも、踏み越えなかった一線に触れるときが来たのだ。秘密など明かしてしまえば、大したものではない。秘密にするから、あれこれと想像をして大事になるのだ。わたしの隠しごとなどは、その最たる例ではないか。


 わたしは言った。


 「話してやろうか? わたしの秘密を。おそらく失望させるものだぞ」


 呂氏は、再び口付けをして言った。


 「ならば、尚更話す必要はない。お前が言葉にしてしまえば、わたしも話さなければならなくなる。わたしには、それが出来ない」


 「なら、どうするというのだ。お前は"本心に触れたい"と言った。それはかなわないことになるぞ」


 「分かっているのだろう? 本心に触れる方法は、言葉だけではない」


 呂氏は、わたしを押し倒すと、ありきたりな台詞をささやいた。心のどこかで、わたしはこのようになることを知っていたのだろう。きっと気付かないようにしていただけなのだ。


 男は、わたしのほころぶ髪に口付けをした。それから、額へ、首筋へと、順番に愛の挨拶をした。わたしは、この親切な人物の頬を撫で、片方の手は、背の後ろへとまわすと、軽く身を引き寄せた。やはり良い顔、良い身体だと思った。寂しさは、時として悪くないものだ。寂しさは、皮相で、陳腐な美しさにも、どこか陰影を与える。


 わたしの手は、男の喉首の張りを伝って、肩肌にかかる着物をはだけさせた。鎖骨まわりをなぞり、行き先をその奥へと滑らせた。呂氏は、再び口唇の上に覆い重なると言った。


 「わたしには、隠しごとばかりがある。どうか許してほしい」


 わたしは、肯首した。

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