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あの夏君は長袖を着ていた(仮)

作者: 夏川

7月29日


今日が夏のピークと言わんばかりに照り付けてくる太陽をしり目に


私は友人とブランコに座っている


私と隣の男の関係は前文でも紹介したように友人だ


ただ最近ものすごくその友人がそっけないように思えるのだ


確かに私は遅刻癖がありよく友人を怒らせていた


でもあれは|時計がおかしかったんだよと言い訳をしたこともあった


いつもの友人なら笑って許してくれていたはずなのに


何かひどいことをしたのかと聞こうにも、あの顔を見ると声が出なくなってしまう


ただ違和感だけだ累積していく感覚


私はただただそのしかるべき日が来ることが恐ろしくて仕方がないというべきだろうか


底知れぬ恐怖の片鱗にいつまでも触れられずにいる


左隣の君の顔はどことなく青白いそして何か悲しんでいるようにも思える


そしてこんなにも暑い日だというのに君は長袖を着ている


なぜ、君は毎日のようにこの公園に通っているのか


私はなぜ夏盛りに君は長袖を着ているのか


私は薄々気づいていた


蝉の声が聞こえる


君は素知らぬ顔でじっと地面を見つめている


蝉の声が聞こえる


蝉の声が聞こえる


私は薄々気づいていた


蝉の声が聞こえる


8月15日


夏も終わりに差し掛かっているらしい


相変わらず友人とは言葉を交わしてはいない


あれだけ泣いていたはずの蝉達も


ほとんど声が聞こえなくなってしまった


8月16日


昨日はかろうじて鳴いていたはずの蝉達が死んだ


友人は変わらず長袖を着ては悲しそうな顔をしている


長袖の君へ


「前みたいにもう何も知らないなんて言わないよ」


私は声を上げる


「前みたいに、言葉を選んだりなんてしない」


私は声を形にする


「だからもう大切なことはもう濁らせたりしない」


私は。。


私は震える声を君に飛ばす


「私のことを忘れないでなんてもう言わないから。。。」




空の青さも


言葉の大切さも


君と笑いあうだけの日常も




私は半袖を着ている


私は半袖を着ていた


もうずっとセミは鳴いていない


大切なものは未来や過去にはない


大切なものはあの夏にあったんだ




また変わらず夏が来る


蝉はもう鳴いていない


私はただ


隣に座る長袖の君を見ていた


















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