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怪奇の夜明け  作者: 望月響
旅の始まりはいつも家の前から。
7/50

北風が運んできたもの

目が覚める。あたりの暗さはさして変わらず寝たときと同じ明るさだ。正直時間感覚はぐちゃぐちゃになってしまっている。布団なしで寝たせいで全身も痛い。少し肩や首を動かせばゴリゴリいう始末だ。ある程度のけだるさと疲れは取れた。だが、まだ万全とはいえない。結衣とありすはまだぐっすり寝ている。アリスは椅子を並べた激堅不安定ベッドだがよく寝れているのだろうか。


「ん…ぁ…あれ…もうあさですかぁ…?」

 

やっぱり眠りは浅かったようだ、少年が動き出したちょっとした音に反応して目覚めてしまった。その反面机に突っ伏して寝ている結衣はまったく目覚める様子はない。ぐっすりだ。もはやいつもこれで寝ているのではなかろうか。

 

「あ…おはよ…ございます…」

 

おはよう。と一言返し洗面所に向かう。顔を洗ったり歯を磨いたり。髪をととのえて…そんなルーティンをこなし教室に戻ればさすがの結衣も目覚めていた

 

「おはよ~さん。よく寝れた?」

 

首を横に振る。そのまま聞き返してみると…

 

「もちろん!私はぐっすりだよ。家でもちょいちょいこーやって寝落ちするから慣れちゃった」

 

やっぱりいつもこれで寝ているじゃないか。心の中で一人突っ込みを入れながら、一つ気づいてしまう。おなかがすいた。お菓子はそんなにないから腹を満たすには不十分だしどうしようか。

 

「あれ?どうしました?すごい困った顔してますよ?」

 

食料の話をするとありすは大丈夫!と満面の笑みで答えてくれる。

 

「食事くらいもーまんたい!ってやつです!」

「ありす…それ通じるの?死語じゃない?」

「え、通じませんか!?通じますよね!?」

 

こっちを見て必死で訴えてくる。そんなありすを見ていると昨日の恐ろしい怪異の恐怖など忘れて少し笑えて来た。

 

「さて、場がいい感じに和んだところで?朝ごはんにしよっか。」

 

結衣は本を開き、そして…


『「北風さん。私の小麦粉を返してよ。」そういうと北風は困ったように答えました。「困ったな。小麦粉はない。だから、代わりにこのテーブルかけをやろう」』

 

そう読み終わると本が光り・・・・結衣の手にはテーブルかけが握られている。

 

「よーし。ちょっと机くっつけるね?」

 

そういうと席を4つほどくっつけ広いテーブルにして上からテーブルかけをかけた。そして一言。

 

「テーブルかけよ、3人分の朝食を出しておくれ」

 

そういうと途端に机の上には3人分の朝食が並べられた。


「これでOK!」

 

これは予想してなかった。まさかこんなことまでできるとは。少年は驚きを隠せずにいた。正直傷の治療や鏡の中の世界くらいなら納得できたがここまで何でもできるとなると、この本はチートではなかろうか。

 

「とまぁこれでご飯には困らないね。」

 

淡々と結衣は言い、席に着き先に食べ始める。


「さっすが結衣です!やっぱその本いいですよねぇ…」 

「まぁ正直ここ屈指で便利な能力だとは思うよ。」

 

ありすも食べ始めたので少年もあわてて席に着き、二人と一緒に食べ始める。味はおいしく量もちょうどいいと素晴らしいものだ。

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

よく眠…れたとは言えないが休み、おいしいご飯を食べた三人はまた校門まで歩く。

 

「次はどっちに行く?」

「じゃあ私の方にしましょうか!」

「おけ~。」

 

アリスの教えてくれた住所に従い読み上げ一歩を踏み出す。光に包まれ…


次に目を開けたときには知らない場所にいた。なるほど。こういう感情かと納得する。たしかに一歩踏み出すとまったく知らない景色というのはかなり新鮮な、体験したことがないような気持ちになる。

 

「さ、いきましょうか!」

 

ありすはスタスタと歩き始める。


「わ~っ!はやいはやい!」

「あれ?そうですか?」


確かにありすの歩みは早い。普通に歩くだけだと単純に小走りになりそうだ。これがナチュラルだなんて言われた日にはビックリする。

 

「でもふつうの登校するときとかこんな感じだよ?」

 

びっくりすることになったようだ。マジか。

 

「ありすが速いのは知ってたけどここまでとはね。疲れちゃうからちっと遅くして…」

 

辛そうな結衣が頼んでいる。少年も「自分もこのペースでずっとはつらい」と伝える。

 

「そうですか…では仕方ありませんね。」

 

割といい感じのペースに落ち着いたようだ。

 

「このくらいですか?」

「うん、ありがとありす。」

「いえいえ。ちょっと自分の家の近くをみんなと一緒に歩くのは楽しくて、じつはいささか早足になってしまいました…」

 

ありすも楽しいと思っていたようで安心する。自分だけ勝手に楽しんでいるのはなんか空しかったから。


「ま、あのよくわからない生物も捕まえましたしここでは何も起きませんね!」

「なぁんでそうすぐフラグになること言うかなぁ・・・・」

 

ごもっともだ。皆と一緒に歩くのは楽しいがみんなと一緒に危険に飛び込みたいわけじゃない。これでほんとに何か起こったらまた面倒くさい。


それはそうと、二人と一緒の散歩は続く。割と駅近なありすの家の近くには有名なファストフードチェーンや眼鏡屋、大きな商店街、サブカルグッズの店から高級ブランド品、ゲームセンターまで入っている大きな建物まである。

マジで何でもある。というのはもしかしてこういうところのことを言うのだろうか。

 

「いいとこですよね~」

 

その一言を否定する要素がどこにもない。ここに住めれば一生ここで暮らしても飽きることはないだろう。というか住みたい。

 

「おぉ…おぉ…!!」

 

結衣はもはや見回りとか調査とかの元の目的をすっ飛ばしてこの場所を本気で楽しんでいるようだ。それも悪いことじゃない。ずっと気を詰めていたら壊れてしまう。

 

その時、カサ。音がした。我を忘れていた結衣もハッとした様子で戻ってくる。カサカサ。少なくともただの服が擦れる音とかじゃない。何かが歩いているような。そんな音だ。

 

姿は見えない。だが増えている。確実に。あたりからの音がさらに増える。

 

カサ、カサカサカサ、カサカサカサカサカサ…

 

何がいるというのか。何が迫ってきているのか。まだ少年たちには知る由もない。

彼らがどこに踏み入ってしまったのか。と。

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