知識眠る街〜記憶の書庫”Memories Archive"〜
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
散策を初めて数十分。どこを歩けどいつものように不審なものは見当たらず、手詰まりになってきていた。
「むぅ。何にもないね。」
「ほんとですね…疲れちゃいましたよ…」
「それは体力がなさすぎない?」
「そうですかね…?」
とはいえ。いったん休憩を挟まねば新たな案が生まれようはずもない。
『「北風さん。私の小麦粉を返してよ。」そういうと北風は困ったように答えました。「困ったな。小麦粉はない。だから、代わりにこのテーブルかけをやろう」』
現れたのは紅茶と三段のケーキスタンドにきれいに並べられたクッキー、スコーン、それにマカロン。
「すっご。的確にちょうどいいの出してくるよね。」
「ほんとですね…。休憩にもよさそうです」
そういいながら三人は結衣が持ってきたレジャーシートに腰を下ろす。
「結衣って適当に見えてすっごい準備いいですよね。」
「そう?ならよかったかも?」
そういって三人が小さなティーパーティーをたしなんでいると、ふと聞き覚えのある声が聞こえた気がした。
「こっちだよ。こっちこっち。」
皆が唐突に会話をやめる。どうやら自分だけの空耳ではなかったらしい。
「なにか…」
「聞こえました…よね?」
「うん。聞こえた。なんだろう。」
さっと立ち上がれば、茶会セットは片付けられレジャーシートはありすがたたみ、少年は佩いた刀を払う。
しかし、どこを見渡せど怪しい影はない。だが三人が同時に勘違いをするなどあり得るはずもない。
「聞こえた方ってこっち…だよね。」
「そうですね…。確かこっちの方です。」
『「北風さん。テーブルかけは返すから、粉を返してよ」北風は言いました。「困ったな。では杖をやろう。」』
結衣は杖を握り、少年は刀を握り、ありすは本を取り出す。
そうして向かった先にはあたりの古びた雰囲気とは幾分かけ離れたピカピカの本屋があった。
真っ白な床、誇り一つない蛍光灯。そしてすべて高さも、装丁も完全に一致した本がみっしりと詰められた本棚。何か違うことを上げるとすればそれは、本の題名と本の分厚さが違うくらいだろうか?
「やっときた。おそい。」
「誰…?」
「誰でもあって誰でもない。」
「は?」
その聲とともに後ろのドアがなくなる。
「なっ!?」
「私は敵ではない。警戒しないでいい。」
「いやいや。むりでしょ。現に閉じ込められてるし。」
「その現状は否定しない。だが、必要な措置。」
「さっきから何を言ってるんですか…?」
その瞬間。本棚が動き先ほどまで狭かった空間が円筒型に広がっていく。空中にも本棚が浮かび、魔法物のアニメで見るような大図書館になってしまった。
「えぇ…?」
「何が…」
「こちらへいらっしゃい。」
その聲に導かれるままに足を運べば、そこにあったのは穴のある本棚。すべての棚に本がみっしり詰められたこの空間の中で唯一不完全なその一点。
「ここに貴方と貴女の本を差し込んではいただけませんか。」
そういって指定されたのは結衣と少年だった。
「何で私たちだけ…?」
「別に奪い取ろうというわけでは御座いません。ただ貴女がたの本だけ不完全なのですよ。それではあの怪物には太刀打ちできません。」
「本当に何を言ってるんですか…?」
「もしかして何もわかっていないのですか?」
その本当に困惑したような声に結衣が若干言葉に詰まった。
「貴女方は今もこうやって所々にある神々が住む空間を異常としてこの世界から廃しています。しかし、その異常こそが正常な空間なのです。ほら、見なさい?」
聲に言われるとおりに上を向けば青空が広がっていた。
「時の動かない空間。それこそが異界なのです。あれはその空間を全世界に広げました。いくら何でも神々の住む空間は侵食できなかったようですけれど。」
「あれっていうのは…?」
「まさか…」
「その通りです。あなた方をここに送り込んだその存在です。」
信じられない。校長がそんなことを?
「何か証拠は?ないの?」
「そ、そうです。信じられませんよ突然そんな話!」
「そうですね。では、実例を出しましょう。あなた方がつい先日であった英霊。彼らのところの時間は夜でしたね?」
「うん。ありすが月について一句詠んでたね。」
「では、皆さまがいつもお帰りになるあの世界。あそこの時間が変ったところをご覧になったことはありますか?」
「…っ。」
「今歩いてきたあの空間も。時間が変ったことはありましたか?」
「まさか…。そんな…」
「皆様が戦って成しえるのはあの空間による世界の統一です。」
「そんな…。いままでがんばったのは無意味…?」
「いえ、無意味ではありませんよ。いずれにせよ、あなた方が“討伐”した者たちは危険な存在でしたから。そして、何よりあなた方は経験を得ました。それだけは何もしていない物には得難いものです。」
「では…私たちはこれから何をするべきなのでしょう。」
「もうお判りでしょう。彼の物を討伐し、この世界をあなたたちの物へと取り戻すのです。」
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