夢より目覚めて
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
「退散の呪文は成った。あなたの在るべき場所へと還りなさい。」
目の前の化け物は急に動きをぴたりと止める。少年たちは光に包まれたその範囲より外からその異様な光景を眺めていた。先ほどまであれほど暴れていた化け物が急に止まったのだ。
「なにがおこった…の…?」
「わかりません…。」
ここにいる誰もが、いや。少女以外がこの状況を理解できていないだろう。しかし不思議な光景はこれで終わらなかった。
地面に描かれたそれは、ゆっくりと更なる光を放ち始める。その光は清浄なる光。異常なこの世界を正常に戻す一手。光に包まれた化け物の身体は細かな光となってどこかへと“還って”行くようだった。
「きれい…」
「ですね…」
光る化け物の身体はゆっくりと薄れ、あたりは霧で包まれていく。それは、世界が正常へと戻っていく合図だった。
「本当に終わった…んだよね?」
「うん。おわった。もうおしまいだよ」
霧はさらに濃くなり、あたりが見えなくなっていく。それと一緒に皆の意識も薄れてきた。眠気に襲われるという方が正しい表現かもしれない。
「ん…あれ…ねむく…」
「わたくしも少し眠いですわ…」
結衣と凜が倒れこむ。続いてありすが倒れて、少年も眠気に勝てず意識を手放す。
「みんなありがと。ひさしぶりにたのしかったよ。またね。」
薄れゆく意識の中一つ。そんなつぶやきを聞いた気がした。
はっとして目を開ければ、どうやら道のど真ん中の様だ。何がどうなっているのかと、何とか意識を目覚めさせてしっかりとあたりを見回せば、先ほどまで探索していた古臭いビルはそこにはなく、レストラン併設の真新しい建物になっていた。
「ん…なにが…」
「ふわぁ…久しぶりにしっかり寝た気がしますわ」
「ですね…体が重いです…」
ふと凜を見ると、しっかりと目が合う。
「あれ…?凜ちゃん?」
「あら…これは…」
「凜ちゃ~~~~ん!!!」
「わぁ!落ち着いてくださいまし!?」
口ではそういうもののしっかりと結衣を抱きしめている。まんざらでもなさそうだ。少年も自然と笑みがこぼれる。そんなやり取りがひと段落したところでありすが頭を下げる。
「皆さん本当にご迷惑をおかけしました!」
そんなありすに結衣が優しく抱き着いた。
「大丈夫だよ…友達が困ったら助けるのは当然でしょ…?」
「そうですわよ。それにあなたがいなければわたくしもあそこで野垂れ死んでいましたもの」
少年も全く問題ないというように、にこっと笑う。
「本当に…みなさんやさしいですね…」
「そういえばあの子は…」
「いませんわね…きっと…あの子も解放されたのでしょう。」
「そうですね…きっとそうでしょう…」
「さ…!帰ろっ!」
にっこりと結衣が笑いながら立ち上がった。
「そうですわね!わたくしも疲れましたわ!」
「はいっ!…そういえば私この本で帰れるんですかね…?」
「わかんないけど…とりあえずやってみよう!」
「そうするしかありませんわ」
「ですよね…」
『Alice and her 52 friends who carry everyone to freedom(解放の国のアリス)』、
『The Moon(月)』
『The Boy and the North Wind(北風のくれたテーブルかけ)』
『Der Gevatter Tod(死神の名付け親)』
心配をよそに皆の本は一斉に暖かな光を放つ。それは懐かしき日々へ通じる光。ふっと光が収まれば、目の前にはあの高校があった。
「はぁ~…何とか帰ってこれましたわ…」
「帰ってこれちゃったね…過去一やばかった。」
「私的にはなんだかいつの間にかすべてが解決していた感じなんですけどね…」
「ありすはずるいもん。」
結衣がぷく~っと膨らんでいる。ふぐか何かなのかと突っ込もうと思ったが機嫌を損ねそうなのでやめておく。
「はぁ…とりあえずあったことを校長先生に…」
ふっと全員の顔が曇る。別に何かいやなことが起きたわけでもない。ただみんな緊張の糸が途切れたのだ。
「ちょっ…明日にしない…?いくらなんでも限界…」
「で…ですわね…わたくしも少々つらいです。」
少年もほぼうなだれるレベルで首を縦に振る。ひとまず異界は消えた。もはやこれから何か動くこともなかろう。みなで校舎に入れば足は勝手に階段を上がっていく。もはや何かやる気力すらもない。シャワーも明日でいいだろう。此の疲れでは入ったら死ぬ自身がある。
そうやって凜だけは二階のどこかへ去っていき、後の皆はいつもの部屋に向かう。
ありすは本を握って布団にくるまり、結衣は布団に入って早々寝息を立てだし、少年は何とか電気を消して布団に潜り込む。
もはや何かやれる気力は残っていない。今回の旅は疲れた。そんなことを思いながら目を伏せる。今度こそ少年は意識を手放した。
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