瞳に映る燈火は誰が為に
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
そうだ。決心など揺るがしてはならない。ありすを救うのだ。
目の前が明るくなった。そこには化け物がいる。もう、意思を曲げている場合ではないのだ。もう一度しっかりと刀を握りこむ。そして一気に斬りかかる。
化け物は少年に向けて何度もあの精神を蝕む、頭の中にあきらめろ、あきらめろと何度だってぶつけてくるような。そんな声を放つ。
しかし、もう少年の意思は曲げることは敵わない。何度呪詛のような声に精神が蝕まれようと、意思を曲げることはしないのだ。
凜はありすに細心の注意を払い続けていた。先ほどの一幕の間に、ありすは体を起こして状況把握に努めているようだ。
そして、ありすが少女に意識を向けた瞬間。目の色が変わる。先ほどまで、地面に横たわてぼーっとしていたのがウソのようだ。そして、一気に体を起こし少女に飛びつこうとする。
「お待ちなさいっ!何をしようというのですか!」
本を手放し、抑え込みに飛び込んだ。
「黙っていろ!」
「いいえ!そのようなわけにはいきませんわ!」
「あの詠唱などさせるものか!早くどけ!」
二人はぐちゃぐちゃに揉みあう。決して前で戦う彼らのような流麗な動きではない。しかし、どれだけ泥臭くとも、彼らの妨害をこの化け物の信奉者のような奴にさせるわけにはいかないのだ。
ふと、凜の頭に案が浮かぶ。この信奉者の正気を取り戻させたら彼らは非常に有利になるのではないか。あの化け物の仲間を一人でも削ることができるのではないだろうか。
決心をする。きっと少年の成し遂げられなかったそれを自分ならかなえられる。もう後戻りはできない。やることがあるのならば止まっているわけにはいかないのだ。
暴力沙汰などこれまで全くなかった細い腕に、精いっぱいの力を込めて。ありすを地面に突き倒し、腹の底から少年たちに伝える。
「少しだけ身体強化が切れますわよ!!!!!」
その掛け声が彼らに届いたのかはわからない。だが、もう時間はない。じわじわと化け物はこちらに迫ってきている。少女の詠唱も終わりそうにない。
「貴女が、二度と邪魔できないようにしてあげますわ。」
本を手に取る。そして地面に胸ポケットからマッチを取り出す。そう。此れは賭けだ。何かを失っても何も起こらないかもしれない。
「それでも!!!!!!!!」
本を開く。
『少女は一本マッチを取り出して――「シュッ!」と、こすると、マッチがメラメラもえだしました! あたたかくて、明るくて、小さなロウソクみたいに少女の手の中でもえるのです。本当にふしぎな火でした。まるで、大きな鉄のだるまストーブの前にいるみたいでした、いえ、本当にいたのです。』
詠唱と同時に力を込めてマッチを地面でこする。
炎が立ち上ると同時に目の前が真っ暗になった凜の意識はふっと落ちる。
その光は、もう一度明るく煌めいた。命の輝きを持ったその炎は、邪悪な化け物の支配を些か払う。だがしかし、その光は邪悪な者の意思をすべて取り払うには不十分だった。
「あれは…何でしょうか?」
心を雁字搦めに縛られ、もはや自身の意思を出すことすらままならないありすの心に一筋の光が現れた。それは決して邪悪なものではない。ありすを、ありす自身を照らすその光に向けてありすは動き出す。縛られた自身を少しずつ。動かした。
「あと少し…で…」
手を伸ばす。必死でその光の元へ。じりじりと。
その時。指先に何かが触れる。
少女は絶えず詠唱を続ける。しかし、そんな少女の後ろ。少女を喚び出し、支える本に誰かが触れた。ハッとして振り返ればそれはありすだった。妨害されては、かの神を退散させることはできない。急いで妨害しようとするが、一手遅い。もはやこれまで。戦いを挑んだのが間違いであった。少女にはこれ以上何かできようはずもない。
だが。予想外のことが起きる。本は眩い光を放った。
それは二人を照らす光。凜の光が照らし出したもう一手。悪しき神を祓うは我々だ。とでも言わんばかりの光だった。本の周りにまとわりついた邪神の意思は光に包まれ消え去っていく。
そしてありすの心を縛っていた鎖は光に包まれるのと同時に崩れ去っていく。体の中にあった何か重いものも何事もなかったようにさっと消え去る。
それは少女とて例外ではない。少女を縛っていたそれはまったく別のものに塗り替わる。今日まではずっと召喚物だった。だが今、それは終わりを告げる。
二人を解き放ったその本は自然とありすの手に収まる。その本は真っ白で清廉潔白。だがそれゆえに力強さを持っていた。
『Alice and her 52 friends who carry everyone to freedom(解放の国のアリス)』
そう名前を変えたその本はありすへ何をすべきかと指し示すようだった。
「状況はわかりませんけど…みんなが戦ってるなら私もっ!!」
少女の隣をありすが走り抜けていく。それで自分のすべきことを思い出したのか少女は焦って中断していた詠唱を再開した。
身体強化が切れてから約一分。少年たちは不利な戦いを強いられていた。強化ありきの攻撃で傷しか入らないのにそれすらもなくなったら何かダメージが入るわけもなかった。
だが、諦めはしないし攻撃をやめもしない。化け物は些かずつまた進み始める。
しかし、これ以上はどうしようもないと思いかけていた少年たちは後ろから思わぬ声をかけられる。
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