弱き獲物は力に屈せず
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
凜が本を握りしめ、口を開く。
『新しい月のランプがその光を土地じゅうにそそぎ、寝室や居間が光でいっぱいになると老いも若きもみんな喜びました。』
冷たい月の光が、辺りに降り注ぐ。
少年たちに満ち満ちるは希望、そして本の力。
結衣はもう一度杖を強く握りしめる。
少年も金の箱をかざして、刀を払った。
独りじゃない。みんなで戦える。背中には護るものもある。
なれば。
もはや、どうあがいてもこの世のものではない化け物に対して彼らは全力で立ち向かう。結衣が振る鈍重なハンマーの如き威力の杖も、少年の扱う、人間なら容易にばらばらにできるであろう大太刀も、化け物に対しては傷をつけるのが精いっぱいだ。
だが、攻撃は無駄ではない。ちょろちょろ足元を走り回るそこそこサイズのある虫がいたらうざったいだろう。化け物の歩みは些か遅くなる。
戦いはもう一つ。少年たちに本の能力を与えてしまえば、特に仕事のない凜のところでも起こっていた。目の前では無駄でしかないように見える攻撃を続ける少年たち。
「その退散とやらはまだですの!?」
凜は焦りからくる怒りを含んだ声を少女にぶつけてみる。だが、それも無駄でしかない。少女はゆっくりと首を縦に振り、詠唱を続ける。その声は先ほどまでのかわいらしい少女の声とはまったくもって違った。
低く、唸るようで、咳き込むように、不完全な幾つかの音節を同時に。そんな人間には不可能なものだ。聞いているとだんだん精神が蝕まれていくような、そんな感覚すらもする。
そんなことを考えていた時。
“ズドン”
地面が大きく揺れる。それに弾かれたかのように...
「ん…ぅ…?」
凜の後ろで一つ、凜にとっては聞き覚えのない声がする。ありすだ。彼らの友人だが今の凜にとっては他人であり、警戒すべき敵である。少女の一撃で気絶していたが目覚めさせられたようだ。さらに警戒を強めるしかない。
何度も、何度も斬りつけ、何度も殴打する。その攻撃はほとんど何の痛痒も与えなくとも、気を引くことには成功したらしい。化け物の歩みはさらに遅くなる。そして。
“ズドン”
地面が大きく揺れる。
「おっとと!あっぶな…」
化け物は少年たちについに反撃を開始した。無数に生えている足を使い、器用に少しずつ前に進みながら少年たちを押しつぶそうとしている。
されど、少年たちもその程度の片手間の攻撃に当たるほど戦闘慣れしていないわけではない。ひらりひらりと軽快な動きでその攻撃をかわしつつ、カウンターで一撃を返していく。このままなら自分たちに此の化け物を釘づけにしておくこともできるだろう。
声がした。唸るような声が。目の前にいる化け物の中から発されたような声が。
意識が揺らぐ。なぜ、皆のために戦う…?
自分はなぜここで刀を振るのか…?
もうわからない…。
この刀ももういらないか…。
もうやめよう。
少年は刀を…。
心の中に誰かが叫んだ。
「意思を曲げないで!!!!!!!!!!!!!」
それはやさしい。心の中に温かく染み渡るような…少女の声だった。
読んでくださりありがとうございました!
よければ忘れないうちに評価をお願いいたします…
してくださるとめっちゃ喜びます。
気に入っていただけてお時間があったらで構いませんので感想やブックマークもぜひお願いいたします!




