泥濘の者を統べる王
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
エスカレーターを上り切った先。霧を突っ切れば、
そこは、今までとは全く景色だった。周辺はまったくもって何もなく、コンクリートうちっぱなしの壁と床、天井が広がるばかりである。
「なに…?ここ。」
「ここがあなたたちの目指す地。あなたたちが探す人がいる場所。」
「でもあたりには何もありませんわよ?」
「そうおもうなら、前に3歩進んでみて?」
少年が凜の前から退くと、凜は足を踏み出す。
一歩、二歩…
三歩目を踏み出そうとしたとき。
「いたっ!?」
壁にぶつかったかのように何もない場所でよろめく。
「これは…」
凜は何かを確認するかのように両手を伸ばす。どうやら、凜の目の前に壁のようなものがあるようだ。伸ばした腕が不意に空中で何かに触れたのか、パントマイムのようになっている。
「見えない迷宮。あの神らしい。いやらしい手法。」
「これでは進めませんわよ?」
「だね…凜の本使ったら見えないかな?」
「だいじょうぶ。私がついてる。」
『どやっ!』っと漫画ならば擬音が付くような表情を浮かべた少女は三人を手招きする。
「こっちおいで?」
恐る恐る。見えない壁にぶつからないかと思いながらも歩を進めると、少女の通った道だけは何もなく歩くことができる。
「すっご。どうやったの?」
「いまはおしえない。なんだとおもう?かんがえてみてね。」
「気になること言ってくれますわね…」
30分ほど、なぜ少女がこの迷宮を案内できるのかを話のタネにしつつ歩き回っただろうか。不意に少女が足を止める。
「ついた。ここでおしまい。」
「はい!?先ほどと全く景色が変わっていませんわよ!?」
声こそ上げないが結衣も怪訝そうな顔をしている。だが考えていることは一緒だ。さっきまで歩いていた場所と全く以って違いがない。
「ううん。ここには今までと違って壁がない。これは『平凡な見せかけ』。わたしには無駄。」
何やら意味のわからないことを言いながら、少女が不意に一歩を踏み出しまっすぐ突っ込む。それは人間には不可能な速度。まして少女には出来るはずのない動きだった。其の上、少女の身体は途中で速度を落としたり、少し角度を変えたりしながら何かを見えているかの如く目指し続ける。
「お遊びは…ここまでっ!」
少女がこぶしを繰り出した。先ほどまでの速度、そして繰り出すこぶしの速度が加算されたそれは、敵がいれば回避不能の一撃として虚空を切る。だが…
「きゃっ!?」
聞き覚えのある声があたりへ響く。そして声と同時に少年たちの視界に移ったそれは見覚えのある制服、髪、そしてあの禍々しい本。
「ありす…!」
開かれた禍々しい本からは、脈々と波打つ黒い液体が地面に流れ出ている。だが、それはあの時のように地面に広がっているわけではなく、まっすぐと何かに流れている。その流れをたどって目をやれば…
「はい。こたえあわせ。これがほんとのわたしだよ。」
少女は少し悲しい笑みを浮かべる。
しかし少しののち、その笑みの表情はゆっくりと崩れて溶けはじめた。そうして数秒。そこにあったのはドロドロした立体的なコールタールと表現するのが正しそうな何かだ。
「ふぅん…まぁ…うん。」
「なんというか、想像よりましですわね?」
「こわがらないの?」
コールタールのようなものから先ほどの少女と変わらない声がする。世の一般的な感覚からすれば奇妙で不気味で忌避されるようなものなのだろう。だが。
「そりゃ…デカい蜘蛛とか、全身がドロドロに腐ったゾンビとかよりよっぽどましだし」
「何よりさっきまでの姿を知っていますからね。」
その通り。もっと気持ち悪いもの、怖いものなど見飽きている。この程度のもので怖がるほど、精神が弱いわけでもない。
「私をこわがらない人。初めて。」
ふっと姿を少女に戻したそれは不思議そうな顔をしている。
「怖がりはしませんけれど、わたくしはこちらの方が好きですわね。」
少女の頭をなでながら凜が言う。
「えへへ…」
うれしかったのか、ほほを緩ませ笑う。なんというか、初めて表情が動くところを見たが破壊力がやばい。ここの顔面偏差値はなぜこんなにも高いのか。末恐ろしいものである。
「さてと…本題の方を何とかしなきゃね。」
皆の視線はもう一度ありすに集まった。
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