凛と煌めく刀身は、命の灯火に照らされて。
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
いくら身体能力が上がろうとも人間には空中機動など不可能だ。もちろん特殊な能力やひもを伸ばして自身を引っ張って移動できる装置なんかが腰についてるなら話は別だが、結衣も少年も地面から一歩離れれば普通の人間だ。
「危ないっ!!!」
凛の叫びにはじかれるように結衣の動きが鈍る。半透明のゲル状の触手が結衣に向けて伸びている。
次の瞬間には結衣の杖を持つ手が触手に絡め捕られている。
「っ!!!」
一歩踏み込み渾身の一撃を結衣を食そうとしている触手に叩き込むが、やはり、浅い傷しか入らない。ゲル状の腕が持つ弾力が、少年の刀の威力を大幅にそいでいる。だが、あきらめるわけにもいかない。あの少女の言うことが本当ならここで攻撃をやめれば、結衣が死んでしまう。何度も。何度も。何度でも少年は触手に攻撃を叩き込む。
「ええ…仕方ありません…よね…。本当は使いたくありませんでした。此れは貴女の形見なのですから。でも…あなたが救ってくれたこの身体で、出会えた仲間を救えるなら。」
「どうしたの?」
少女の問いに凛は清々しい顔で応える。
「覚悟を決めたのですよ。ええ。覚悟をね。」
懐からもう一冊の本を取り出す。
「お二人とも…一瞬だけ。身体強化が切れますからお気をつけてくださいまし。」
身体強化をかけていた『The Moon(月)』を閉じもう一冊を開く。
そして結衣が触手を抜け出し、二人であの化け物を討伐する絵をしっかりと想像する。
口を開けば命を燃やす物語。蝋燭の如き命にもう一度激しく燃える火をつけて。
あの時、懐にしまったマッチの一本をこする。
『少女は一本マッチを取り出して――「シュッ!」と、こすると、マッチがメラメラもえだしました! あたたかくて、明るくて、小さなロウソクみたいに少女の手の中でもえるのです。本当にふしぎな火でした。まるで、大きな鉄のだるまストーブの前にいるみたいでした、いえ、本当にいたのです。』
何度刀を振り下ろせど身体強化の切れた体ではもう触手に傷を入れることすらかなわない。結衣を助けるすべはない。絶望とはこのようなことをいうのだろうか。
「あはは…無理しちゃいかんね…」
あきらめるな。と叫んでやりたいどころだがこの状況でどう希望を持てというのか。
だが、その時。絶望の淵の二人の後ろからあたたかな光が降り注ぐ。冷たい月の光ではない。寒い冬に炎に照らされるようなあの温かさ。光に照らされた瞬間。ふっと触手がまばゆい閃光に包まれたように緩む。結衣は解放され、もう一度二人の身体に力が満ち満ちる。たとえるなら外部から生命力といわれるようなそれを叩き込まれた気分だ。
もう一度敵を睨む。今この眩しそうにしている瞬間を逃す手はないのだ。一気に攻める。この好機を逃すまい。その覚悟を胸に集中を一気に高める。狙い、切り裂くは敵の中心。校長ほどの威力はなくともやれる。
鞘に太刀をおさめ息を吐く。長く、細く、途切れぬように。もう一度敵を見据え…。
地面を蹴る。神速を以って敵の懐に詰め寄るのだ。周りから少年を防ごうと迫る触手は結衣の杖がすべて払ってくれる。懸念点などない。
懐に入った。それは此の一撃にすべてを賭ける準備もできたことを意味する。
得た運動エネルギー、身体強化、そして結衣と凜の想いを載せて。抜刀。
“一閃”
煌めく刀身は外宇宙から来た化け物をこの世から叩き出すための光だ。照らされれば逃れること能わず。
化け物に当たった刀身は何の抵抗もなく化け物を切り裂く。さすれば周りから少年を殺さんと迫っていた触手の動きがピタッと止まる。
化け物は、ゆっくりと斬られたところから半分にされ地面に転がる。そしてあたりにはゆっくりと霧が立ち込め始める。
「ありがと…。助かったよ…凛ちゃ…」
今回の一番の功労者に目を向ければ、左目を瞑りそこから静かに血が流れている。
「だ…大丈夫!?」
「ええ…友人を失わず済んだのですから安いものですわ…。」
「あ、あ、ごめ…」
焦る結衣をよそに少年は自分の本を開く。自分の本の力なら凜の傷如きなんてことはない。
『「人は病で死ぬわけではない。寿命で死ぬんだ。君の死神はまだ足元にいる。だからまだ死ねないよ」そう死神は言った』
本は静かに光り、凜を包む。
「あら、痛みがなくなりましたわ。血も…止まったみたいですわね。ありがとうございます。」
だが、凜は左眼を開かない。
「どうした…の?凛ちゃん?直してもらったんだよね…?眼…」
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