月の光に照らされて
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
結衣の一撃が開戦の号令となった。一体が結衣の打撃により吹っ飛ばされ出来た空間に少年はすかさず突っ込み刀を構える。左右と正面。それぞれ一体ずつ。
人型で動きも遅い。虫特有の素早さも、人間を余裕で切り裂く爪も、巨大すぎる触手も。何一つとしてない相手だ。なればこそ、負ける道理などどこにもない。
刀を鞘から引き抜き、まずは一体。首元への一閃。そのまま向きを変え、水のごとき流れをもってもう一体の腕を切り飛ばす。体のバランスを保っている片腕を落とされて体勢が崩れている間に首に一閃。もう一体へも流れは崩さず、首を断つ。そのまま結衣の吹き飛ばした一体へと目を向ける。一度刀を鞘に納めて…。
刹那。空間に光が走ったようにも見えた。少年の一度体勢を立て直してからの居合一閃。斬ってすぐに相手を見据えなおすが、その時には首が落ち始めている。
「すごい…。」
「いやぁ…いつ見ても圧巻だよねぇ…。一人だけ本なくても戦えてるもん。」
結衣とありすと供に、幾度となく死地を潜り抜けてきたからこその練度だ。何より結衣のヘイト取りがなければ突っ込めない。自分だけが賞賛されるのはなんだか申し訳なくなる。だが、二人と積み上げてきたものを褒められるのは素直にうれしい。
「いつもストイックだねぇ…。」
「あなた方と一緒なら…。ええ。口に出すのは恥ずかしいですが、わたくしも前に進めそうな気がしますわ。」
「ん。ならよかった。」
そんな声を邪魔するように音が響く。“ガシャン”。店の前に置かれていた吊り下げ式のラックが倒されている。この状況で人間なはずもない。案の定ゾンビが出てくる。
だが、巣をつつかれたゴキブリのごとくわらわらと這い出てくる。
「9、10…だめだ。すごい数が多い。」
「お二人とも。まだ体力は残っていらして?」
「いやまぁ残ってるけどさ。あの数相手に突っ込めは無理だよ?」
「大丈夫です。お二人とわたくしの力を合わせればあの数ごとき話になりませんわ。」
「力?あぁ。本ね。そんなに強力なの?」
「お二人次第でしたが、お二人相手なら心配いりませんよ。」
「どゆことぉ~?」
「まぁまぁ見ていなさい。わたくしの力を。そして体感しなさい!」
『新しい月のランプがその光を土地じゅうにそそぎ、寝室や居間が光でいっぱいになると老いも若きもみんな喜びました。小人たちは岩のほら穴から出てきて、小さな赤い上着を着た小妖精が草原でいくつもの輪になって踊りました。』
本が光り、周囲を冷たい光が包む。太陽のごとき明るさはないものの、夜に冷たく光る光だ。その光を受けた二人は自然と体が軽くなる。
「およよ?なにこれぇ?」
「どうやら本を持っているものに対する強化みたいなものらしいですわ。もともと本自体が不思議すぎて確定はできないのですけれど」
「ふぅん…。じゃあちょっとやってみようか。」
結衣の一言に乗せられるように少年は立ち上がる。次もこれまた厳しい戦いだが、どちらにせよ戦わなければ始まらない。手段はいつものように。死角からの奇襲と吶喊だ。
結衣は振りかぶって杖をゾンビに投げつける。直撃と同時にいつもの呪文を唱えようとするが…。
「杖よ杖!わるい……。えぇ…?」
杖がヘッドに直撃したゾンビの頭は消し飛んだ。まさかの展開だ。とりあえず流れを崩さないように少年も刀を払い吶喊する。だが、踏み込んだ一歩は人間のそれではなかった。
しっかりと地面をつかんだ神速の一歩は一気にゾンビ集団との距離を詰める。
想定外の速度に一瞬たじろぐが引けるわけでもない。諦めて速度に乗せて刀を振れば幾体かの胴体をまとめて切り裂く一撃となる。
「あららぁ…いつも一人だけ強さがやばいのに...。これは輪をかけて最強だねぇ…。」
正直体のどっかがぶっ壊れてもおかしくないほどの速度だ。だが、体力が切れる気配も靱帯やらなんやらが切れる気配もないのが不思議な話だ。
後ろから結衣が杖でワンショットワンキルをし続け、少年は何体も捌き続ける。いつしか大量にいたゾンビも数が尽きていた。
冷たい光が静かに収まれば、戦闘は終了だ。
「ん~!なんか体が重いかも?」
「さっきまで強化されていたからですわ。また少ししたら慣れましてよ。」
「おけ~!」
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