支配の国のアリス
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
悪夢のおかげで、時間的には深夜に起きてしまった少年はもう一度目を伏せ布団に潜り込む。眠気も合わさり、すぐに眠りへと落ちる。
結局どれだけ疲れていようともいつもの時間に目は覚める。体の疲れは取り切れていないが、眠気は完全になくなってしまった。疲れをとるためにもう一度眠りに落ちようと5分ほど格闘してみるが、どう頑張っても無理そうなのであきらめて体を起こす。
顔を洗い、髭を剃り、歯を磨き…異変に気が付く。ありすの声がしない。いつもならおはようといってくれるはずなのに。単に疲れて眠っているだけなのだろうか。
「ありす~?おこしにこないのぉ~?」
後ろから眠たげな結衣の声がする。毎朝やっていると思っていたが案外楽しんでいたのかもしれない。準備を終えて教室に戻ってみるがありすはいない。どこかにすっ飛んでいるかもしれないとあたりを見回してみたが、ありすの姿はない。目を強制的に覚ましたらしい結衣も捜索に参加する。
「ありす~!朝ご飯にするから起きといで~?」
いくら呼びかけようともどこからも現れない。気が付けば校長室の前にまで来ている。一応の確認もかねて入ってみる。
「「失礼します」」
「おやおはようございます。今日は早いですね。ありすさんを置いてきてしまったのでしょうか?」
「それが…朝起きたらありすがいなくなってたんだよ!!」
「はい?どこかへ散歩へ出たとかそういうことではなく?」
「うん。どこにもいないし私も起こさず一人でどこかに行くとかないよ」
少年は長く一緒にいたわけではないが、ありすとそこそこの期間を一緒に過ごしたからわかる。少なくとも何の書置きも残さず消滅するような人間ではない。
「なるほど…少しお待ちくださいね」
校長は棚の一つから水盆のようなものを持ち出すと本をかざす。
「…おや?おかしいですね。ありすさんの箱はここの高校にあります。この水盆の弱点として、本の所在が分からないのは痛手ですが、あなたたちほど異界の恐ろしさを知っている人が箱を忘れていなくなるなど考えにくいです」
「だよねぇ…調査を後回しにして探してきてもいい?」
「そうですね…いいでしょう。これ以上協力者が欠けるのは痛手ですから」
「ありがと校長先生!いってきま~す!」
「できるだけ早めに見つけてあげてくださいね。」
「もっちろん!ほらいくよ~!」
軽く校長に頭を下げ結衣に引っ張られるままに教室に戻る。少し申し訳ないと思いながらありすの布団をひっくり返せばころりと銀色の小さな箱が転がり落ちる。やはり持って行ってはいないようだ。だが逆に本はない。本だけ持っていくというのもおかしな話だ。その証拠にいつも使っているリュックは教室の端に几帳面にまとめられている。
「ほんとにどこに行っちゃったんだろ。」
結衣の困惑に合わせるように昨夜の夢を思い出す。あれはいったい何だったんだろうか。真実だったのか。それとも本当にただの悪夢だったのか。
「どしたん?行くよ~?」
思考の海から引っ張り出された少年は急いで手荷物をまとめて結衣についていく。
「探すって言ってみたはいいけどさ。どこにいこっか。」
確かに。焦って完全にそこの思考が抜けていた。とりあえず、ありすの出身地の町でも再度探索してみようと提案する。
「確かに。あそこは蜘蛛もいないしね。もしかしたらホームシックにかかっちゃった説もある。」
ナチュラルに忘れていたが、もう軽く一週間は家に帰っていない。よく思い返してみれば人生で最も長く感じた一週間であったかもしれない。本当にいろいろあった。そしてこれからもいろいろあるのだろう。
「よし。いこう!」
結衣の声に連れられうろ覚えの住所を唱えれば何とか目的の場所に出ることができた。
「お~いありす~!いないの~?」
前回はこの町出身のありすについていけばいいだけだったが、今回はそういうわけにもいかない。しらみつぶしにいろいろなところを探索せねばならないと考えるとかなり気が滅入る。だがそんな愚痴をこぼしているわけにもいかない。
10分ほど探索したところで人影を見つける。急いで追ってみれば見覚えのある背格好であった。だが何かがおかしい。しかしそんなことお構いなしに結衣は声をかけた。
「あ!ありすやっぱいたじゃん!ほら、みんな心配してるし帰るよ?」
「Ph’nglui mglw’nafh」
「なんて?」
「Eihort, the Thing in the Labyrinth」
振り向いた目には一転の光もなく。曇っている。握りしめた本は見覚えのない真っ黒な本。
見える題名は『The story of Alice, who was controlled, abandoned her thoughts, and foolishly ruled by God.(支配の国のアリス)』
心が告げる。これはありすではない。ありすであってそうではない歪み切った何かであると。
「wgah’nagl fhtagn」
奇妙な、唸るような、せき込むような奇妙な音でしゃべったありすは唐突に本を開く。結衣も完全に異変に気が付いたらしい。じりじりと後ずさりしている。
『決して終わることのない夢を見せてあげましょう。この世界とはすべて同じ。あべこべの世界など幻想。支配される絶望と快楽を貴方達にも享受させて差し上げましょう。ほら、考える事を辞める等簡単な事でしょう?』
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