刺し穿つは神の鉾にて
読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!
「こちらを」
校長は結衣にミニトマトより少し大きなくらいの金属球を手渡す。鏡面は鏡の如く輝いていて…
「お、察しがいいですね。こちらは銀で表面を包み銅メッキで加工したガラス球ですが、素材と製法自体は鏡とほぼ変わりません。おそらくこれでも入れるはずです。」
「なるほど…こんな手がありましたか…」
「ありすさんはちょっと一緒に飛んでもらうことになりますね。」
「何でですか!?」
「そりゃあ…ありすがいないと鏡の国は入れないし?」
「確かにそうじゃないですか…うう…」
「出るタイミングは感覚で何とかします。結衣さん。パチンコで限界まで引き絞って頭の横辺りを狙って撃っていただけますか?」
「りょかい!」
「ありすさんはちゃんと助けますからどうかご協力願えますか?」
「どうせ倒さないと帰れないですしやりますよ!!」
「ありがとうございます」
協力というかどう考えても強制だったろうという突っ込みは捨て置こう。と少年があきらめたところで二人は準備を始めている。結衣は本に箱をかざしパチンコを生み出す。
「鏡の国に入ってから5秒で撃ってくれますか?」
「え、あ、はい!」
少年は自分も何かやらねばとスマホでストップウォッチを起動し結衣の前に。
「ありすさんお願いします。」
「信じてますからね!!校長先生!!!ふぅ…。よし…
『鏡の世界についてみんな、教えてあげましょう。この世界と同じだけど皆あべこべ…さぁ。通るのなんて簡単でしょう?』」
二人は鏡の国に吸い込まれる。少年は最後の「う」の発音の瞬間にストップウォッチをスタート。
結衣は手に握った球をパチンコに噛ませ引き絞る。狙いを定め、ストップウォッチに5と見えた瞬間に手を放し、鏡の国を内包した弾は空中を飛翔する。
校長はありすの本を支えて秒数を刻む。5秒。
「今ですっ!!!」
発射から1.4秒。本は閉じられる。鏡の世界から放りだされてみれば、そこは確かに化け物の頭上だった。
化け物は飛んできた球体を払いのけようとする。だが、ぴたっと手が止まった。
「なんで…ってあぁなるほど!」
前回の粉を受けての反省という奴だろう。校長はそれも考えた上でこれを考えたのだろうか。それならとんだ策士である。完全に読み切った上での行動な気がするのが恐ろしい。
「おぉ…!」
思考にふけっていると結衣の手を握った校長が飛び出してきた。天沼鉾を握りしめ投擲の構えだ。空中からの投擲など軽いものでもかなり精度が悪くなるはずなのにそれをあの巨大鉾で狙っているのだ。的がでかいとはいえ一撃で仕留めねばならぬ現状。そんな賭けのような手に出ているのか。と少年は焦る。だが次の瞬間その焦りは驚愕へと変わる。
校長はいたって冷静だった。空中を飛翔しながら正確に化け物の首と肩の付け根を見据える。刺し穿つのは慣れている。鉾の投擲だって幾度とこなしてきた。慣れた作業であるのならば空中からだってさして変わるものでもない。握るは神器の鉾。狙いは正確。肩のあたりからまっすぐ突き抜けば急所をいくつか貫き通すことになる。
「ふぅ…はぁっ!!!!!」
剛腕が唸る。校長の腕は決して筋肉モリモリマッチョマンというわけではない。だが最適化されたその動きは重力加速と槍の重量をフルに生かし…回避不能の神速をもって化け物に突き刺さる。
校長の鉾の切れ味が非凡なのは知っていた。半魚人の鱗をものともせず何体も切り裂いたのだから。だが、あれは非凡では表せない。“異常”だ。校長の剛腕から放たれたその鉾は化け物の肩を突き通し、体の中心を穿ち、反対のわき腹から飛び出し地面に深々と突き刺さる。
人間の為せる技を超えている。あの技はきっとこの中のだれがどれだけ努力しようとも決して成し遂げられるものではない。
「はえぇ……」
結衣も驚きのあまり口がふさがらないようだ。
校長は槍が地面に刺さった音を聞いた瞬間に空中のありすを引っ張り肩に担ぎ上げ、もう片方の手を広げ戻れと念じる。鉾は空中を怪物をよけ光の如き速度で校長の手に戻った。その軌跡ははたから観測する少年には、突然光の筋が空中に走ったように見えただろう。
戻ってきた槍を着地寸前に地面に向かって投げつけ反動で岸方向に移動しつつ着地する。
「うぐっ!?」
肩に担いだありすがうめき声をあげる。いささか衝撃が強すぎたようだ。そっと地面に下ろす。
「あ…少し雑になってしまいましたね。失礼しました」
「けふっ…もうやりませんからね…」
「えぇ。多分やりません。」
「先生のことを信用ならないと思ったのはこれが初めてです…」
刺し穿たれた怪物は、数秒ぴたっと時が止まったように動きを止めていたがゆっくりと湖面に向けて倒れていく。湖面に怪物が触れたところから、水は霧に変わりあたりを包む。皆の周りを包んでいたそれの濃度を濃くしたようなそれは、皆の周りを包みついには手すらも見えないほどになった。
「お!これは!」
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