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怪奇の夜明け  作者: 望月響
旅の始まりはいつも家の前から。
21/51

校長一人、普通の高校生三人。ほんとに?

読みに来てくださりありがとうございます。短い駄文ですが楽しんでいってくれると嬉しいです!

 水面は沸き立つ。またあの大量の半魚人が現れた。ありすと結衣は本を開き、少年は本に金色の箱をかざす。今回も大太刀だ。だが扱いは前回よりも手馴れている。


 トランプ兵たちはまたクイーンの号令で突撃をはじめる。前回の化け物との戦闘で散ったトランプ兵たちも皆そろっていた。


 結衣の杖さばきも熟達してきている。もしこれが鱗のないただの人間が相手だったのなら物の数秒で撲殺されているのに違いない。得意の身体能力でちょろちょろ動きながらありとあらゆる方向から打撃を加えている。

 少年の戦い方も実戦仕込みの剣術ではあるものの隙のないものになっていた。常に相手を見据え隙の大きな攻撃は振らずに相手の動きを見て立ち回っている。突き、払い、斬り。ありとあらゆる攻撃法を取っている。これでただの高校生だなどと言おう者がいるならそれはおそらく中世の騎士か何かの剣術が当たり前の世界線から来た者なのだろう。


 その三人の戦いぶりを後ろから鑑賞する最大戦力の学校長はゆるりと本を開いていた。


 『天つ神の諸の命以て詔はく伊邪那(いざな)()(みこと) 伊邪那(いざな)()(みこと)二柱の神是の多陀(ただ)()幣流之(えるの)国理修し固め成せと賜ひ天沼矛を賜り(しかるに)(こと)()(たまふ)(なり)


 荘厳な光とともに校長の手には天沼鉾が握られている。三人が戦っていない範囲から出た半魚人を切り払い、薙ぎ、すべて刈り取っていく。ありすの前線はおかげで広がることなく防御は硬いままだ。何者も通ることはできない。


 四人は目にもとまらぬ速さですべての半魚人をなぎ倒す。これが終われば出てくるのはわかっている。

 水は再び沸き立ち、周辺の木々はざわめく。人の心を握り潰すような重圧感があたりを包む。前回を知る三人は焦る。重圧感が前回とは段違いだ。もはやここで絶対に殺してやるという強い意志を感じるような重圧がある。


「まずいかもしれませんね…」

「うん。こわい。前回のように隙をつくとはいけなさそう」


 これを倒すすべを校長は持っているのだろうか。10mはあるこの巨大な怪物を。前回はヘルメス・トリスメギストスの毒塵での撃退であった。だが校長は今回これを撃破しに来ている。もはやなぎ倒されることがわかっているトランプ兵を回収したありすも同じ不安を感じているのだろう。校長の方を見ている。


 「おや?お二人ともどうかされましたか?」

 「いえ、本当にあれを倒せるのか…と」

 「その点はご心配なく。私だけでもなんとか行けるはずですが、ありすさんがいれば勝利に関しては心配する点はありません」


ありすは首をかしげている。少年もはたから聞いていた結衣も同じようだ。


「私は本の能力を大方全て調べてから渡しています。急に危ないものを渡してもあれですからね。」


少年の『死神の名付け親』など確かに題名から見れば危ないものの最たる例だろう。


 「ありすさんの『鏡の国のアリス』は鏡の中に入れる代わりに入った鏡からしか出れない弱点を持ちます」

 「まさか!校長せんせー…まじですか?」

 「え?結衣はわかったんですか?私まだわかっていないんですけど…」

 「弱点を生かすのは戦術の基本です。弱点は総じてその裏側の面も持ちます。入った鏡からしか出れないのではなく、入った鏡からならどこからでも出られるのです。」

 「…!校長先生?本当にやるんですか?」

 「肉薄するのには最善の策ですからね」


 簡単に言えば鏡に入ってから鏡をぶん投げればどこからでも攻撃できるということだ。確かに近くに近づくことさえできれば校長の鉾は必中になり、あの怪物の撃破は容易になるだろう。だが、あまりに合理的すぎる。最短での撃破に対して貪欲すぎるのだ。


 この人…感覚が壊れてる。特に恐怖とかその辺の感覚が。少年は心の底からそう感じる。合理的すぎて手段のリスクと目的のリターンの関係が完全に破綻している。


 「さぁ。やりましょう。」

 「校長先生…ちょっとうきうきしてない?」

 「まさか。そんなことはありませんよ?ちょっとやったことのない作戦に気分が高揚しているだけで。」

 「うきうきしているじゃないですか…」

 「ふふっ。そうかもしれませんね。さぁ。やりましょう。彼の者を退散させるときです。」

 「「「はいっ!!」」」

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