第2話:再始動
翌日、ギルド管理協会に再びアレンが訪れた。
女性事務員が座る、ギルド案内窓口に向かう。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「ギルド設立の手続きを完了したいんすけど。」
「かしこまりました。お名前うかがってもよろしいでしょうか?」
「アレン・ペルセウスっす。」
「少々お待ちください…はい。アレン様ですね、確認完了いたしました。ではこちらの書類に必要事項を記入してまたこちらにお声がけください。」
「了解っす。」
必要な書類を受け取り、記入するために机とペンのある場所に向かい、座って書き始めた。
名前、年齢など書きこんでいく。ギルド名の記入の場所で筆が止まる。
「ギルド名か…正直なんでもいいんだけどなあ。インパクトがあったほうが映えるか…?」
そんなことを呟きながら、考え込んでいると
「オウ、兄ちゃん!ギルド名で悩んでんのか!」
スキンヘッドの見るからに堅気じゃない男が話しかけてきた。
「あー、オッサンなんかインパクトのある名前思いつかねえか?」
「ふむ、俺は30代だからまだオッサンではないのだが、迷える若者にアドバイスをくれてやろう!」
男がふん!と胸を張る。
「なんで上から目線なんだよ…まあいいか」
アレンがあきれる。
「いいか小僧、ギルド名ってのはこれから戦乱のこの時代を成り上がるための重要なカギになる!おい、まず信頼あるギルドを維持するうえでの重要な二つの要素はなんだ?」
「資金と人員だな。」
「そのとおり!そう、まずはその二つを維持しなければならない!人と金を集めるうえでこのギルド名てのは第一印象として扱われるのだ!シンプルかつ業務内容が判別できる名前であれば人も金も自然と集まる。例えば商業系ギルドの代表格、『ブラック・マーケット』!!!代表者である“総統”ブラック・ロージアンテの名前と、市場に関するマーケットという単語からできる非常にお手本のような名前だな。これなら一目で大体何系のギルドかがわかる。」
「あー、あのギルドか。」
「小僧、おまえはどんなギルドを作るんだ?」
「世界中を旅する旅団だな。世界最強を目指すんだよ。」
「ほう、旅団か!だとしたらシンプルに名前と旅団の組み合わせでいいんじゃないか?ほかの単語でもいいぞ。旅団の代表的なのは『グリフォン旅団』、あとは『シバルツ・トラベラーズ』だな。」
アレンは二秒ほど考えた後、
「…そうだな、するなら前者寄りにするか。」
と答えを出した。
「ふむ、小僧の名は?」
「アレン」
「アレン旅団か。悪くないだろう!シンプルかつ明確!俺好みのギルド名だ。」
「いや、名前は入れたくないな。なんか嫌だわ。」
「そうか?まあいい、これからの己の人生に関わることが、小僧が自身が最後は決めるべきだ。」
「おう、オッサンありがとな。」
「礼はいいさ、困っている人間を放ってはおけない性分でな!おせっかいを焼いたまでさ。」
「またいつか会おうぜ」
「小僧が世界最強を目指すなら、いずれ俺を頼ることになるだろう!いつでも来るがいいさ、ここで『ヴェルジン印刷』を探せば俺に会える。…おっと、名乗り忘れてたな。俺はヴェルジン・タイガー。広告屋さ。」
ヴェルジン印刷はこの国では知らない人間がいないほど巨大な政府直属の特殊ギルドである。
「なるほどな、だからか。やけに据わってる奴だと思ったよ。」
アレンが納得したようにうなずく。それをみてヴェルジンが高らかに笑う。
「ふははは!そうだろう!!!俺も小僧のような骨のあるやつは久々に会ったぜ。達者でな、未来の最強よ。ウチの広告に載る日を待っているぞ。」
そう言ってヴェルジンは去っていった。
「はは、あのオッサン、怒ったらやばそうだな。そんでえーと、名前どうすっかな。怒る…か、よし。」
そして記入していく。『レイジ旅団』
「こんなもんでいいよ、ノリだな名前なんて。」
他の項目も記入し、再び窓口にもっていくためにその場を後にする。
「…久々に聞いたな、あの名前。」
アレンは窓口に向かいながら、過去のことを思い出していた…
〈キャラクター紹介②〉
ヴェルジン・タイガー
・31歳 ・188cm ・好物:鶏肉
・豆知識:広告業の前は先生しようとしてた。だから教えるのも上手い。
〈世界観設定紹介①〉
ギルド
・現在で例えるなら、会社のようなもの。上から執行ギルド、上位ギルド、下位ギルド。そしてヴェルジン印刷のような政府に直接仕事をもらう特殊ギルドがある。特殊ギルドを除くすべてのギルドにおいて、最も上に立つギルドが出たとき、そのギルドの中からこの国をまとめる“魔法王”と“王下執政”(内閣のようなもの)が選ばれる。