第五十五話:夜の訪れ。そして、
『――ふぎぃぃぃ……! 貴様マジで一生赦さんからな貴様……ッ!』
京都を散策した日の夜更け。
俺と九尾と真緒は、夜街の甘味処でおやつをつついていた。
京都名物だという冷やしぜんざいだ。白く冷たいモチモチな餅団子は、寝る前の空いた小腹に気持ちよく滑り込んでいく。
「反省してるよ九尾。ほら、お前もあーん」
『ふんっ!』
奪い取るように餅団子を丸飲む九尾。『やけ食いだぁ!』とはぐはぐ食べる様子に、真緒が「可愛いなぁ」と微笑んだ。同意見ですね。
「ほらほら九尾さん。どうして怒ってるのかは知らないけど、急いで食べると喉に引っかかっちゃうよ? 身体が小さいんだから」
『ふんっ、心配ないわ。どうやらこの肉体、皮膚がずいぶんと伸縮するようでな』
そう得意げに言う九尾に俺も頷く。
「ああ、たしかによく伸びたな。お腹がボコッてなってたし」
『って貴様は黙ってろォオオーーッ!?』
ぜんざいの黒豆を投げつけられてしまった。いたい。
『チッ……溜まっているなら、そっちの真緒に手を出せばよかったものを』
おん? いやいや何を言ってるんだ九尾は。
「真緒は大切な友達だ。俺が魅力的な異性と見てるのはお前だけだぞ、九尾」
『って我はオスだーーーっ!!!』
赤面しながら俺の顔面を黒豆まみれにしてくる九尾と、「あー……二人ってもしかして……!?」と俺たちの幸せを察してくれる真緒。大好きな二人に囲まれて俺は生きてて楽しいよ。
「うっ、なぜか脳が痛む……! シオンと九尾さん、元々想い合ってたしいつゴールインしてもおかしくなかったのに……ッ!」
『いや我は想ってないわッ!? コイツからのめちゃくちゃ激しい一方通行だ!』
「下半身的な意味でも……?」
『って貴様も下品なヤツだな真緒ッ!?』
二人も仲良さそうで何よりだ。
「……平和だな」
京都の地へと飛ばされた俺だが、なんだかんだで上手くやれている。
ご飯は美味しいし、この地の建物は立派で見てて飽きないし、店の人たちは俺たちが色街の女衒だと表向き名乗ると“立派な職業についてはりますわ”と褒めてくれてお茶漬けくれるし。
俺はすっかり好きになったぞ、京都。何よりこの地には仲間たちの笑顔もあるからな。すごく守りたい場所だと思うよ。
「明日もこんな感じで、平和に楽しく過ごせたらいいな……」
なんて。故郷の村にいた頃には、とても言う余裕のなかった言葉を口ずさんだ――その時。
「――みんなッ、逃げろォオーーーーッ!」
ふいに響く女児の絶叫。
それが長谷川さん(36歳妻子持ち)のものだと認識した瞬間、
「なに、が――ッ!?」
目の前が、『血の爆風』で埋め尽くされた――。
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