第四十九話:京都の姫君
――色街の地下。そこに広がっていたのは、東京本部と同じ青空の平原と大屋敷だった。
いや……それにしても寸分たがわな過ぎるな。なんだこれ、まるで東京本部に戻ってきたみたいだ。
「平安の大陰陽師・安倍晴明ってのはすごいねェ。意味の分からない空間を作り出す技術だけじゃァなく、“物体をそのまま複製する”っつー力もあったらしい。『陰陽魚』もソレで山ほど生産したんだと」
「へ~~~」
聞けば聞くほどすごいなぁ、清明さんのご先祖様。
清明さん自身も謎の札とかよく開発してくるし、そういう才能って血筋で伝わるのかなぁ。
じゃあ、俺の『斬殺の才能』も……?
「さぁ、それじゃあ行こうか坊やたち」
平さんが先を促す。大屋敷のほうを顎で指し、少し嫌そうな顔でこう言った。
「京都の支部長サマが、たぶんカンカンでお待ちだよ」
◆ ◇ ◆
――大屋敷の内装も、ほとんど東京本部と同じものだった。
違っているのは調度品や飾りつけくらいか。
わりと簡素だった本部とは違い、京都支部は色々派手だ。
なんか鹿の置物があったり、小さな木彫りの神社仏閣の小物があったり、派手派手な帯やら着物やらがそこらに飾りとして引っ掛けてあったりで、ちょっと騒がしい感じになっている。
「色々と猥雑なのは支部長の趣味でねェ。栄えある京都の支部らしく、華やかさを意識したとのことだ」
「なるほど。まぁ見てて楽しくは思うな」
あちこち見まわしてて暇しない感じだ。こう、目にうるさい感じ?
そう告げると、平さんは苦笑しながら「そりァよかった」と言った。
「支部長サマのセンスはちょいと飛んでるからねェ、気に入ってくれるヤツがいて何よりだ。――というわけで、ココがその御仁のお部屋だよ」
支部長室、とクソデカイ看板の掛けられた部屋に辿り着く。頭に落ちてきたら死にそうなデカさだ。
俺と平さん以外の者が『バッカじゃねーの……』と呟いた。
「……それだけ支部長サマは役職に誇り持ってるってコトだよ。んじゃ――支部長、失礼しやすぜ~」
そう言って平さんが扉を開けた――その時、
「遅いのじゃァァアアーーーッ!!!」
ちっちゃい人影が、彼の腹に飛び蹴りをかました――!
「ってげふぅううっ!?」
呻き声を出しながら吹き飛ぶ平さん。
そんな彼にフンッと鼻を鳴らしながら、なんか小さくて変わった子供が俺たちの前に立った。
「フン、貴様らが東京からの使者でおじゃるか」
やたらクソ長い下駄をカランッと鳴らした、変な口調のおかっぱの女児。
彼女は長谷川さんよりもない胸を張り、俺たちに堂々と名乗り上げる。
「妾こそは京都支部が長ッ、近衛麻呂麻呂なるぞォーーッ! よきにはからえええええええええええええ!!!」
「お~」
なんかよくしてみたいなこと言ってたので、頭を撫でたら「ってなにすんじゃボケ!?」と脛を蹴られた。なんだこいつぅ?




