第四十八話:古き都
「ここが京都の街か……!」
ついに辿り着いた地、京都。
そこはまさに都と呼ぶにふさわしい場所だった。
古ぼけつつも立派な屋敷が立ち並び、東京ほど人はいないものの活気も十分あった。
「どうだいシオンの坊ちゃん、あっしの縄張りはいいところだろう?」
得意げな顔をする平さん。道ゆく若い男たちや派手な着物の女性たち(舞妓さんと言うらしい)に気さくに挨拶されているあたり、どうやら街の人気者みたいだ。
俺たちは平さんに続いて京都の街を進んでいった。
「明治維新で敗戦の地にされちまったが、それでもみんなめげずに生きてるさ。上品さと猥雑さが混ざった街の空気に、昔ながらの神社仏閣の荘厳さ、そして夜のエロティックさはマジで魅力十分だぜ」
「夜のえろてぃっくさ?」
わからない単語があったので気にしてみると、真緒がすごい勢いで肩を掴んできて「シオンはそういうの知っちゃダメ!」と訴えてきた。
おぉう。親友がそう言うなら気にしないぜ。
「平特等もッ、シオンにそういうの教えないでよ!?」
「おっと失礼。恋人的には都合の悪い話だったねェ」
「って恋人じゃなぁぁぁあいッ!」
古い都に叫び声を響かせる真緒。
今日も俺の親友は元気いっぱいで何よりだ。
◆ ◇ ◆
「さぁついた。ここが京都支部だ」
そして。みんなで『生八つ橋』という柔らか甘味を楽しみながら歩いていると、ふいに平さんが立ち止まった。
ふむふむここが京都支部……って、
「どれが京都支部だ?」
俺たちの前に広がっているのは、“木の柵の中にお姉さんたちがいる店”が立ち並んだ謎の商店通りだ。
そこに辿り着いた瞬間、真緒たちの顔がなぜか真っ赤になった。
「って、ちょっと平特等! そういうのはシオンに見せるなって言ったよねぇ!?」
「あっ、あかん、中腰になってまう……!」
「こんなところに連れてくンなよッ!? 不純だ不純ッ! 目が汚れるっっっ!」
騒ぐ真緒さんに妙におとなしくなる立花神に、あと逃げ出そうとする蘆屋(※平さんに首根っこ掴まれた)。
他のメンツもかなり微妙そうな反応をしていた。なんなんすかね?
「ここは色街。男と女が情を交わす場所さ。ンで、『八咫烏』の京都支部はここら一帯の地下にあんのよ」
妖魔の目撃情報がよく集まるんだぜ~? と得意げな顔をする平さん。
情を交わすとはどういうことか知らないが、とにかく便利な場所ということらしい。
「ついてきな坊ちゃんども。蘆屋家の若いのも逃げんなよ」
「はなせーッ!」
蘆屋を引きずる平さんに続き、店の一つに入っていく。
お化粧と女の人の香りが混ざった不思議な匂いだ。ソレを嗅ぎながら、店内にあった自動昇降機に乗り込むのだった。




