第四十三話:愛すべき仲間たち
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――左遷宣告を受けた、その日の夕刻。
「なんで……どうして……っ!」
妖魔伏滅機関地上部・東京城の門前にて、俺はへこんでいた。
あの緑髪の人(平っていうらしい)が言った通り、俺は事務の人からマジで出ていくように言われた。
――おかしいだろうが、こんなの!!!
「なぁ九尾、俺は何か悪いことをしたか……?」
肩にちょこんと乗った相棒に問いかける。
ああ九尾、俺の九尾。見た目は手のひらサイズの三歳女児だが、俺がこの世で何より信頼してる存在だ。お前なら、左遷理由がわかるんじゃないか……!?
そう問うと、九尾は『誰が三歳女児だ』と怒りながら溜め息を吐いた。
『そりゃ貴様、組織の長の土御門とやらを怒らせたからじゃないか?』
は!? 俺が、土御門さんを怒らせた!?
そりゃあ一体どういうことだってばよ!?
「待て待て。俺はむしろ土御門さんに向かって、『アナタを傷付けるような悪は斬ってやる』って良いこと言った後だぞ……!」
それでどうして不興を買うんだよ!? むしろ感動すべき言葉だったろ!
『あぁーアレな……。思い返すにたぶん、土御門は殺害宣言だと思ってしまったっぽいぞ?』
「なん、だと……ッ!?」
なんだそりゃ……どうしてそんな解釈になるッ!?
『ほれ貴様、“仲間を傷付けるような悪は斬る”と言っていただろ?』
「あぁそうだ」
仲間っていうのは、九尾や真緒や清明さん、それからもちろん土御門さんのことだな。悪っていうのはそんな彼らに害を為す連中のことだ。
『考えてみろ。土御門からしたら、貴様は仲間じゃないだろ』
「俺にとっては愛する友だが……?」
『貴様のキモい主観は関係ないわ! ヤツから見ての話だ! ――それで結果的に、土御門は自分のことを、言葉の後者にあった“悪”だと思ってしまったんじゃないか?』
「なんだとぉぉぉ……!?」
おいおいおいおいおい待て待て待て待て!?
どうして自分を悪だと思う!? 土御門さんってば良い人じゃないか! お歴々がたを守るぞってやる気になってたじゃないか!
なんでそんな優しい人が、自分を『悪』だと捉えるんだ!?
何も心当たりなんてないはずなのに! 何も心当たりなんてないはずなのに!
ハッ――これは、まさか!
「そうか……そこまで土御門さんは、追い詰められていたということか!?」
『えっ』
「心無い者たちに悪人だと噂されたせいで、自分のことを悪人だと思い込んでしまっているんだなッ!?」
『えぇーなんでそうなるー……?』
そうかそうかそういうことだったのか。それで俺の言葉を誤解しちゃったと。
うぅ……なんて可哀想な土御門おじいちゃん……!
――俺はこの瞬間、『憐れみ』の感情を取り戻したのだった。
「よし、もう一度会いにいくぞ。会って強く抱き締めて、“アナタは悪人なんかじゃない。守るべき俺の仲間なんだ”と言ってやるんだ!」
『ってやめろやめろやめろっ!? もっと話がこじれるっ! もう少し人間とまともに話せるようになってからにしろ!』
「話せるぞ!? 日本語使えるぞッ!?」
『そうだけどそうじゃない! 貴様はズレているというのだっ!』
むむむむ……よくわからんが九尾がそう言うならそうかもしれない。
はぁ仕方ない。ここは一旦時間を置くとするか。
なんか緑髪の平さんって人に、門前で待つよう言われてるしなぁ。へこむー……。
『ま、まぁ元気出せシオン……。ほれ、これからは我がヒトとの話し方を教えてやるから。な?』
「お母さん……?」
『って誰が母だッ!? 我は雄ギツネだーッ!』
ちっちゃい手を上げて叫んできた。かわいい。
そんな九尾さんの白い髪を撫で梳かしながら、しばらく待っていると……。
「――おい、あの人って京都の特等陰陽師の――」
「――今回の方針転換で、清明様と喧嘩別れしたらしいぞ――」
「――土御門統括に無理言って、京都に戻るとか――」
ふいに、門前を行き来していた陰陽師の者たちがざわつきだした。
彼らが視線を向ける先、東京城の内門のほうを俺も見る。
するとそこには、数時間前に話しかけてきた緑髪の男・平さんがいて、さらに――、
「おーいシオンー!」
「……よォ」
彼に続き、真緒と蘆屋までやってきた。
ってどういうことだこれ???
「やぁやぁシオンの坊ちゃん。急に呼び出して悪かったねェ」
煙管を吸いながら微笑みかけてくる平さん。相変わらず俺に好意的っぽい雰囲気だ。
ふむ……ここは俺も一旦、なんか吸って心を落ち着けるか。
そうだ、九尾吸おう。
『な、なんだぁっ!?』
俺は九尾をむんずと掴むと、白いワンピースドレスに包まれたフワフワお腹の部分に鼻を当てた。そして、
「スーッ、スーーーーーッ……!」
『ってンギャアアアアア!? なに吸ってんだ貴様ァーーーッ!?』
おぉぉう。甘くてまろやかで、前に食堂で飲んだ“ホットミルク”なる飲み物みたいな香りだ。これはクセになるかもしれないな……!
よし、毎日すお。俺にも『趣味』が出来たぞやったね。
「――へぇぇぇ……あの“白面の妖狐”、大妖魔・九尾と仲良しってのはホントなのかい。こりゃ土御門の旦那も持て余す人材だわ」
なにやら関心してくる平さん。おお、俺と九尾の仲良しっぷりがわかるとは見る目があるじゃないか。
「その通り、俺と九尾は仲良しです」
『仲良くないわッッッ!』
「こう言ってますが照れ隠しですよ」
『ちがうぅうーーー!!!』
短い手足をばたつかせる九尾さん。はいはい、また後でたくさん仲良ししようね。永遠に。
『コイツこわいよぉおおおおーーー……!』
「それで平さん、なぜ俺は呼び出されたので? あと、真緒たちがいるのは?」
「あぁ。坊ちゃんについては、今日から京都支部で預かることになったんだよ。で、あっしと一緒にさっそく京都行きってことだ」
「なるほど……」
俺、マジで左遷されちゃうんだな。何も悪いことしてないのに、社会っていうのは難しいねー……。
「んで、今回京都に戻るにあたって、戦力増強のために何人か借り受けれることになってねェ。それであっしらについていきたいと言ってくれたのが、こいつらなワケよ」
真緒と蘆屋のほうを顎で指す。
ほほう、つまり二人とも一緒に来てくれるわけだな。そりゃ嬉しいぜ。
「シオンとは親友だからね、どこにだってついていくよ!」
おふおふ。相変わらず真緒は優しいなぁ。今度は真緒も吸ってみるか。
「フンッ、オレぁテメェをいつかボコすと決めてるからな。勝手にどっか行くんじゃねえよ」
……そして相変わらず俺のことが嫌いな蘆屋。京都までついてくるとかどんだけ俺をボコりたいんだ……。
「あと11万1600秒。明日の零時ごろだぞ、蘆屋」
「って何の話だよッ!?」
左遷されると聞いて不安だったが、九尾と真緒とついでに蘆屋がついてきてくれるとなったら安心だ。
ホッと胸を撫で下ろす俺に、平さんが「仲いいねェ」と笑いかけてきた。
「ちなみにこの二人だけじゃないぜェ? 他にも同行を願う子らがいてねェ」
彼がそう言った瞬間、俺の前に三人の人物が現れた。
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