第四十二話:四条シオンの追放
初投稿です
「会いに行くぞっ、会いに行くぞ。土御門さんに会いに行くぞ……!」
バイクが舎弟になった後のこと。俺はふと、まだ土御門さんに会いに行ってないことを思い出した。
「会いに行ってお礼を言うぞ~……!」
ここ『八咫烏』にはお世話になっているからな。
連れられてきた日には色んな人とたくさんお喋りさせてくれて、ご飯をいっぱい食べさせてくれた。あの日は本当に嬉しかったってばよ。
そんな優しい組織の長なんだから、土御門さんもきっと優しい人に決まってるよねー九尾ー?
『うぅん、そもそも『八咫烏』が優しい組織かは微妙なとこだぞ。聞けば『天狗院』なる孤児院を運営し、そこの子供たちを鴉天狗などにしているそうだし……』
「立花神の出身場所だったか。就職斡旋してくれるのは親切では?」
『親切なわけあるか。鴉天狗は危険な仕事だ、巫装の力も持たぬ身で妖魔の調査を行わなければいけないんだからな。それゆえ殉職率も高いと聞く』
その穴埋めを行うための『天狗院』なのだろう、と九尾は語る。
『妖魔の我が語るのもなんだが、妖魔被害で親を亡くした子を集めているというのも都合がいいからだろうな。妖魔への復讐心を持っていたら、強要せずとも妖魔根絶を志してくれるからな』
「ふむふむなるほど……? じゃあ、土御門さんは優しくないのか? 俺、初日に好待遇してもらったが。ご飯いっぱい食べさせてもらったが」
『いやぁ……ぶっちゃけ初日の待遇は、貴様が妖魔かどうか調べただけだと思うぞ? 妖魔ってニンゲンの飯食うと吐くからな』
「むむむむむ……!?」
そんな……土御門さんは良い人じゃなかったのか?
「俺は、騙されていたのか……!?」
『いや貴様が勝手に思い込んだだけだろ。……まぁ、実際に会ってみて推し測ったらいいんじゃないか? 噂を聞く限りは十中八九悪人だがな』
「よし、会って確かめてみる」
果たして土御門さんは俺を騙していたのか。それを知るためにも、大屋敷の廊下をずんずん突き進み、やがて俺たちは『統括室』というところに辿り着いた。
やたら金細工が施された重厚な扉。この奥に、例のあの人がいるのだ。
「さぁ会うぞ。俺からの親愛を裏切ったなら、刺す」
『ってこわッッッッ!? わ、我ってばこんなヤツに愛されてるのかッ!?』
「九尾は俺を裏切らないよな……?」
『ひぃッ!?』
コクコクコクッと頷いてくれる九尾さん。よし、相思相愛みたいで何よりだ。モチモチほっぺに愛情のチュー。
『ひぁぁぁニンゲンこわぃぃぃ……!』
「安心しろ、お前のことは俺が守る」
『みゃぁぁぁぁ……!』
何やら震える九尾を抱き締める。永遠に放さないからね。
「さて、行くか」
愛のカタチを感じたところで、俺は扉に手を掛けた。
そうして土御門統括に会わんとした――その時、ふと部屋の中から声が響いた。
“じゃあ統括。若いのを何人か連れていっていいっすかねェ?”
“むっ、何を勝手なことを!”
何やらお願いしている男性の声と、それに怒るおじいちゃんの声。
ふむふむ。たしか統括は老人って話だし、後者のほうが土御門さんなのかな?
なんか怒ってるみたいだし怖い人なのかなぁ。刺すか?
“へへっ、別にいいでしょうが。関東近辺に特等を集めたンですから、ちょっとくらい引き抜いてもいいでしょ?”
嘲るような調子の男性。むむむ、なんかこれ、この男の人のほうが土御門さんを困らせてるみたいだぞ?
“つーわけで頷いてくださいよぉ”
“ふ、む……まぁたしかにそうさな。それに戦力を送ってやったほうが、京都のお歴々がたも喜んでくれるか”
お、土御門さんってば納得したようだぞ? ところで九尾、お歴々ってなんだ?
『んあぁ、偉いご老人とかそんな意味だな』
なっ――なんだとッ!?
つまり土御門さんは、自分がご老体でありながら、他の老人まで気遣っていると!?!?!?!?
うおおおおおおおおおおおお良い人確定ッッッ!!! 俺の眼に狂いはなかったァッッッ!!!
「土御門さんッ!」
こうなったら黙っていられない! 俺は九尾を抱えたまま勢いよく扉を開いた。
すると緑髪のお兄さん(頭にコケ生えてんのか?)と、やたらムキムキな爺さんが驚いた顔でこちらを見てきた。このご老人が土御門さんか。
「っ、おめぇさんは……」
「ぬぅッ!? おぬしは九尾憑きのバケモ――ッ」
何か言い切る前に、つかつかつかと近寄り、土御門さんの前に立った。
「なっ、なんじゃぁッ!?」
「土御門統括殿。俺は、アナタのことを、しっかりと見てますからね?」
「ッッッ!?」
なんというか、めちゃくちゃ悪人顔の爺さんだ。何も知らない状態で会ってたら(うわぁ絶対に悪そうなやつだ、近寄らんとこ)と思うところだった。
だがしかし。俺はアナタのことをわかっているさ。その極悪爺ヅラの裏には、とっても優しい心が秘められていることを……!
「なんだおぬしはっ!? 見ているとはどういう意味だッ!?」
「言葉通りの意味ですよ」
俺は噂に左右されない。ちゃんとその人自身を見て、どういう人間か判断するようにしているのだ。
そして、
「俺は、感謝すべき大切な人たちには、常に笑顔でいて欲しいと思っています。しかし――その笑顔を曇らせるような“悪”が存在するなら……」
「ッ!?」
腰の刃に手を添える。
――言葉通り、俺は土御門統括に笑顔でいて欲しいと思っていた。
こんな悪人ヅラになっちゃったのは、きっと彼の悪い噂を流すような悪いヤツがいるからだろう。それを気に病んでこんな顔になっちゃったんだ。
実際は俺にご飯を食べさせてくれて老人も大切に思う良い人なのに。
もしもそんな人をこれ以上傷付ける奴がいるなら……!
「その時は、斬ります。どうか覚えておいてくださいね?」
「むぅぅ……ッ!?」
“辛い時は言ってね、悪い奴から土御門さんを守るよ!”と俺は伝えたのだった。
よーしこれで元気出してくれるはずだろ。じゃ、言いたいことは言ったし帰ろっと。ばいばーい!
「では、これにて」
かくして俺は、“土御門さん絶対守るよ宣言”をしてきたのだった。
これで土御門さんからの好感度も爆上がりだな! ウヘヘヘヘッ!
そして、小一時間後。
さっき部屋にいた緑髪の人が、なんかやたら俺に好意的な眼差しでこう言ってきた。
「シオンの坊ちゃん。おめぇさん、京都に左遷な!」
えッッッッ!?!?!?!?!?!?
・ 殺 害 宣 言 し た か ら だ よ。
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